第2章 1話 異世界に飛ばされた哀れな青年
ここから主人公が変わり、第二章スタートします。ここからが本編開始という感じです。
この物語は、俺が支配者を倒す物語
そして、支配を知る物語
俺は、高校を卒業した。そして都内の大学に進学することができた。頭は、はっきり言って悪い。特に数学は中学生ぐらいからちんぷんかんぷんだ。
俺は今、新しく入ったサークルのみんなで飲み会をしている。サークルと言っても、特にこれといった活動はしているわけではない。ほとんど遊び呆けている位しかやっていることはないと言う。俺はサークルの親睦会という事で、都内の居酒屋に来た。代金は先輩たちが持つらしい。というか、先輩たちは只騒ぎたいだけみたいだが...
俺は一緒に入ったサークルメンバーと先輩たちで騒いでいた。かなりアガっている。
「なぁさくら君よぉ。あんたも飲めよ~」先輩は俺に酒を勧めて来ちゃった。
「何言ってんスか~先輩~。俺まだ未成年ッスよ~。それに、昔飲んだことあるんスけどね。俺、滅茶苦茶弱いんスよ~酒~」
俺は、受け流した。先輩はふらふらしている。相当酔ってきているみたいだ。
「なぁんだ。ハーフなのに弱いんかぁ。じゃあ仕方ねぇなぁ。さくら君の分は俺が飲むわぁ」先輩は酒瓶を一気飲みしている。ちょっと心配だが大丈夫そうだ。
俺の名前は、坂神レイノルド桜蘭だ。いつもは「サクラン」と飛ばれることが多い。俺の母はフランス人で父が日本人のハーフだ。ハーフってだけで、意外とモテることは多かった。個人的には、そこまでいい顔をしているとは思ったことはないが、周りが余りにも騒ぎ立てるものだから仕方なく合わせることもよくある。今日も大学に通い始めて、余りたっていないのにいきなりラブレターらしきものをもらった。今は彼女はいらないから、傷つかない程度に断っておいた。
俺は、先輩や同級生組とワイワイ騒いでいた。終電が近づいてきたので、解散することにした。先輩はベロンベロンになっている。酒を飲んでない組で、手分けして先輩たちを担いで駅に向かった。
「おぉ...さくら君。ありがとなぁ。どうだ、今日は楽しめたか?」
俺が担いでいる先輩が俺に細々と言った。ダウン寸前みたいだ。
「ハハハ、楽しかったッスよ~。これからの大学生活が楽しみっスね~」俺は適当にお世辞を言う。
「それは、良かったなぁ~。じゃあ『サクラン』って呼ばせてもらうぜ~」俺が今適当に考えたあだな~」先輩は俺に言った。
「最初っからそれでいいッスよ。高校もそのあだ名ッスからね~」俺は先輩を引っ張り駅まで送る。
俺は駅に着いた。みんなそれぞれの家の方面に向かう。
「後は、俺らがやるからサクランは帰ってもいいぞ。お前の家反対方面だもんなぁ。じゃあまた明日なぁ」
酒を飲まなかった先輩が、後を引き継いでくれた。俺は何とか終電に間に合い電車に乗った。
俺の家は、都心から少し離れている。とはいっても三十分もすればつける距離だが。俺は、そこで一人暮らしをしている。
俺は家について、鞄を下した。かなり疲れた。俺は適当にシャワーだけ浴びて、ベッドに倒れた。
「つかれた~」俺は、スマホの目覚ましだけ入れて寝た。
スマホのアラームで目が覚めた。意外と今日は目覚めが良いようだ。適当にテレビをつける。朝のニュース番組だ。つけていると言っても、何も音がしてないと嫌だからBGM程度にしか流していない。俺は、顔を洗った。
『二年前に謎の失踪を遂げた、三上 礼さんについてのニュースです。何の痕跡も残さず消えたこの不可解な事件についてですが、最近新たな情報が入りました。似たような事件がこの数日で他に二軒ほど発生していたとの事です。警察は、以前調査を続けており...』ありきたりなニュースだ。
「二年前のニュースなんて覚えてねぇよ。そんな事をまだ引っ掻き回してるなんて、警察もメディアも暇かよ」俺は独り言を言った。そういう俺も結構な暇人だがな。
俺は出かける準備をして出かけた。駅は歩いて行ける距離にあるから、歩いて行く。俺は電車に乗り、イヤホンから音楽を聴きながら数十分揺られる。とある駅で乗り換え、そこから大学の最寄り駅で降りる。歩いて徒歩五分程で大学に着いた。俺は大学の門を通ろうとしたとき。
「ズガーン!」
俺の頭に向けて、何かがクリーンヒットした。俺は振り返ると先輩がいた。
「よっ。昨日はサンキューな。でもよ、二日酔いがぁ...休めばよかったかなぁ?」先輩はまだちょっと駄目のようだ。
教室で講義を受ける。俺はたまに寝てしまう。気付いたら講義が終わってた。急いでノートに適当にメモを取る。
昼になった。俺は適当に大学内を歩いていた。時折女子の目線が刺さる気がする。俺は大学内の芝生の上に座った。空を見る。今日は快晴だ。俺はそこで寝転がろうとした。その時だった。
『ズガーン!!!』
俺の体は、いきなり吹き飛んだ。訳が分からない。人間が吹き飛ぶような現象は今までに体験したこともなかった。そして今になって気付いた。全身から血が流れている。俺はそれを見たのと強烈な痛みで気を失った。
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「俺は?」
俺は目を開けた。地面が冷たい。コンクリート?意識がはっきりしてくる。たくさんの顔が俺を見ている。
『ダダン!ダダンダダン!ダダンダダン!ダダンダダン!ダダンダダン!ダダン!』
いきなり、高架を走る耳が痛くなるような電車のデカい音を聞いて俺は跳ね起きた。
「あれ?どこだここは?」俺は周りを見渡した。知らない顔が驚いた顔で俺を見ている。
「なぁ兄ちゃん。大丈夫か?突然吹っ飛んでくんだ、びっくりしたぜ」
一人のおじさんぽい声が俺に聞いてきた。
「あぁ、すいませ~ん。俺は大丈ぶっ!」
全身に痛みが襲った。俺はまた倒れた。意識ははっきりしている。その時俺は気づいた。
「あの、ここってどこスか?俺確か大学にいたはずッスけど...ってかそれよりも救急車呼んでくれないッスか?ヤバそうッス」俺はまわりに助けを求めた。
「あっ、あぁ。救急車は通報してあるから、すぐ来ると思うが、大学だって?ここからかなりあるぞ?ってか兄ちゃんあそこの生徒かいな」
おじさんは、かなり感心しているようだった。
しばらく俺は倒れたまま、救急車を待った。しばらくしてサイレンが聞こえた。救急隊員のような女の人が降りてきて、俺を見た。かなり驚いた顔をされた。
「どうなっているの?全く怪我なんてしてないじゃない」
俺はその言葉で俺の体を見た。服には血がついていた。だが体から滲み出す血はきれいさっぱりなかった。気付くと痛みもないことに気付いた。
「あれ?どうなってんスカ?確かにさっきまで死にそうなほどだったのに...」俺は、訳が分からず混乱した。
「あなた一体何があったの?血まみれの服なのに怪我してないなんて...まさか人殺し!?」救急隊員は俺を睨んだ。俺は慌てて否定した。
「違うッスよ!俺もいきなり吹き飛んでいきなり全身血だらけになって、そしたらなんか治っててもう、訳分かんないっスよ~」俺は、不満をぶちまける。本当に訳が分からないんだ。どういうことだ?
「分かりましたから。とりあえず落ち着いて。えっと住所はどこでしたか?言えますか?」救急隊員が丁寧に聞いてくれた。俺は答えた。
「千葉県の○○市。○○○ー○○―○○に住んでます」この言葉で周りはぽかんとした。俺変なこと言ったっけなぁ。いや、言ってないな...
「えっと?どうしたんスか?みーんな固まって」俺は言った。救急隊員がハッとして口を開いた。
「えっと、ちば?どこそこ?えっと...それって地名か何かなの?どこにあるの?」救急隊員が苦笑いをしている。こいつはバカか。千葉だぞ。東京の隣だぞ。
「えっと。日本っスよ...東京の隣っスけど...」俺がこんな説明をしたら。周りは一瞬で固まった。
「今、二ホンって言った?」救急隊員が俺に言った。日本の何が変なんだ?訳が分からね。
「まさか...あなた、名前は」俺は答える。
「坂神 桜蘭ッス。フルネームだと坂神レイノルド桜蘭ッスけど...」
俺の言葉に救急隊員がしばらく考え込んだ。そして、俺に言った。
「分かったわ。ちょっと来てくれる? ごめんみんな、この人ちょっと連れてくから、先戻ってて~」救急車が戻っていった。
俺はその人に連れていかれた。どこへ向かうのかと思ったら、すぐそこにあった定食屋だった。
「いらっしゃい。おっ、シィズちゃん。男なんか連れちゃってさ、彼氏?」
ちょっと老けた店主がいきなり冗談を言った。
「ごめんね、今日はちょっと真面目な話。あなた、レイ国王と会ったことがあるのよねぇ。ちょっと詳しく聞かせてくれない?」救急隊員の人が店主に聞いた。
「どうかしたのか?その青年と何か関係でもあるのか?」店主は頭に?を浮かべていた。
「ええ。彼は二ホンから来たと言ったのよ。今日突然現れてね...」救急隊員の言葉で店主は固まった。
「二ホンだと?まさか?...」俺は訳が分からない。何を言ってんだ?こいつら。そろそろ帰りたいなぁ。
「兄ちゃんは、ミカミ レイという名前に聞き覚えはあるか?」店主は興奮気味で俺に聞いた。
「三上? いや知らないなぁ、ん?なんか聞き覚えのあるような...やっぱり覚えてないっス。で、その人がどうしたんスか?」俺は疑問に思ったので聞いた。
「そうか、兄ちゃん。よ~く聞いててくれ。ここはニホンじゃない。おそらく兄ちゃんの知っている場所はこの世界のどこに行ってもないはずだ。ここはアダムス連合王国と呼ばれる世界だ。そしてここはボーダーと呼ばれる場所。そして、この世界の王はミカミ レイと呼ばれる人物。兄ちゃんと同じニホンから来た人物だ」
俺は困惑していた。新手のドッキリか?だとしてもあんな怪我、あの痛みは本物だった。俺は本当に別の世界に来たのか?三上とか言う人は何か知っているのか?
「ちょっとまって、店長さん。今の話まとめると、この世界は俺の住んでた世界とは別で?俺の前に俺みたいに来た人がいて、それが今この国の王様になってるって事でいいんスか?」
俺は、とりあえず状況をまとめようとした。
「まぁ、簡潔に言えばそうなるな。だけど問題はここからなんだ」俺は息をのんだ。
「あいつがここに来る前に、一つの予言の書というのが出てきたんだ。そこにはニホンから来たものが世界を救うと書いてあった。それが今から二十年近く前の事だ。当時、この国はある別の国と戦争状態にあった。その国は見たこともないバケモノを使ってこの世界を襲っていた。俺たちは壁を作って侵入を防いでいた。そんなとき彼が現れた。彼が現れたのは、同じくこの町だった。彼はこの町にきた途端、この町の当時の区長の悪事を暴いた。彼は勇者と言われた。それからたった数日だ。たった数日でいきなり敵国の親玉の暗殺に成功したんだ。今まで、こっちから攻撃を仕掛けても、かすり傷一つつけられなかった相手にだ。彼は、一躍世界の英雄となった。この国は平和になったんだ。彼のおかげでこの国はさらに発展を遂げた。当時の王も彼を信用しきっていた、彼を側近と呼ぶほどだったからな...」俺はそこで、話に水を入れた。
「ちょっと待ってよ、当時の王って、今この国の王はその世界を救った人なんスよね?前に別の王様がいたんスカ?」俺の言葉に店主は頷いただけだった。
「そうだ、アレックス アダムス。この国の王だった男だ。一番の問題はここからだ。今から二年近く前の事だ。彼...ミカミは、いきなり王の娘の誕生パーティに乗り込んだ。そこでミカミは王を脅し、一気にこの国の主権を掌握した。その後だ。彼は『反逆者狩り』と称して、一日に一人ずつ人を処刑し始めた。全国放送でな...何の罪もない人を、ミカミは笑って殺していた」
彼が言うと店の中にあったテレビがいきなりついた。誰もつけてはいないのに。
「噂をすればだ...こいつがこの国の王、ミカミ レイ アダムスだ。ちと悲惨な映像になるけど、こいつはもう俺には助けられない、見ていることしかできない...」
店主は歯を食いしばっていた。俺はテレビを見た。
『今日は、この人だよ。名前は、フランソワ デイビッド。罪状はいつも通りだけど、彼は僕を殺そうと暗躍していた。王への反逆行為として今から彼を処刑します。最後に何か言っておくことはあるかい?』
俺は呼吸をするのも忘れかけている。十代そこそこにしか見えない子供が、笑いながら剣を鞘から抜いている。処刑されそうな人は叫んでいる。
『いつか貴様が痛い目を見ることになるんだ!殺せよ!俺の死が、いつか貴様を滅ぼしてやるからなぁ!』
剣が男を貫いた。男は口から血を吐いた。王と呼ばれる少年は笑顔を浮かべて、倒れこむ男を見下ろしていた。
『そんな叫ばなくても聞こえてるよ。じゃあねフランソワさん』
テレビが突然消えた。俺は固まっていた。
「あいつがミカミ。あいつは毎日のようにああやって殺している。テレビをジャックして、観れない者がいないように。あいつは、殺すことを楽しんでやがるんだ...!」店主は、机を叩いていた。
「ミカミ国王は、突然こんなことを始めたのよ。あまりにもひどすぎる...私は、人命を助ける仕事をしているからかな。王はなぜ人を殺すのを楽しんでいるの?理解できないよ」救急隊員が突然口を開いた。
「俺の国の人なのか?あれは...化け物みたいなやつじゃないっスか...こんな国があっていいんスか。俺は...許せないっス。あんな奴が国王なんて、認めたくないっスよ!」
俺は立ち上がった。笑いながら人を殺すような奴が王なんて、しかもそいつは俺のいた世界から来た人間なんて、俺の心は怒っていた。許さない!
『ガラッ!』店の扉がいきなり空いた。