第1章 最終話 この異世界より真実を込めて
僕が、中央地区で暮らし始めてから十八年がたった。何故か僕がゼロを倒して以降、バケモノの目撃情報すらなくなっていた。
この国は僕が来た影響からか、技術はさらに進歩した。特に、通信関係は僕のスマホを技術提供に使ったからか、一気に加速した。他の技術は、八十年代と言ったところだろう。順調にこの世界は成長を遂げていた。
「はぁ、あれからかなり時間がたったのに、元の世界に帰る方法はおろか、なんでこの世界に来たのか全く分からないなんて。どうしたもんかなぁ」
僕は自分の部屋から窓の外を眺めた。ここはかなりの高層マンションのほぼ最上階の一室だ。僕は外を見た。鉄道の路線もいっぱい出ている。最近SLを見ることが少なくなってきた。大体電車に変わってきている。この中央地区との近郊区間は地下にも様々な鉄道網が敷かれている。もはや迷路のようだ。僕は視線を鏡に向けた。僕はもう、三十八歳になるはずなのに、老けない。あの時と同じ、小学生の後半ぐらいの顔つきになっている。別の部屋から、グレイシアが出てきた。彼女はしっかりと成長している。彼女は今大学に通っている。相変わらず無表情であるが、友達はいるようだ。話す言葉も大分つっかえなくなってきた。
「じゃあ、行く」彼女は大学に向かった。
「あぁ、行ってらっしゃい」僕は見送る。
「気を付けてね~」
フォックスも僕と変わらない。のんきな性格で少々子供っぽい感じの狐だ。
「じゃあ、僕も行くから。留守番頼んだよ」僕も仕事に出かける。
「まかせといて~」フォックスは僕を見送った。
僕はいつものように電車に乗り、いつものように職場に行く。いつものように僕は、壊れた家電の修理をしにあちこち行く。たまに、バケモノの研究所から呼び出されることもあったが、今日はそれがない。僕はいつものように仕事を終えて買い物をして家に帰る。家では、グレイシアが先に帰っていた。フォックスと一緒に歌っている。今日は、僕が食事を作る当番だ。僕はバランスを考えて、偏りのないように作っている。彼女が作るときは、肉料理がメインになることが多いが。僕たちは一緒に食べる。食器は僕が洗う。僕の最近のいつもの光景だ。
次の日の朝になった、今日は全員休日だ。僕は朝ごはんの準備をしようとした。グレイシアは僕のしばらく後に起きるはずだが、今日はかなり早く起きていた。
「あれ?早いね。どこか行くとこでもあった?」僕は彼女に聞いた。が、彼女は僕をじーっと見続けた。
「えっと?どうしたの?...何かあった?」僕は、気圧されてきた。
「レイ」彼女が口を開いた。
「はっ、はい...」
「私」彼女はそこで止まる。
「はぁ」僕も止まった。
「結婚したい」彼女が爆弾を落とした。
「へ~」僕は、生返事をした。
「はい!?、え?いつの間に?えっと?」僕は訳が分からなかった。
「ん~?どうしたのぉ?」フォックスが僕の声で起きてきた。
「いや、いきなりグレイシアが結婚したいとかなんとか...」僕は適当に説明した。
「へ~。好きな人でもできたのぉ?で?だれと?」
フォックスは、ずかずかと突っ込む。グレイシアは人差し指をまっすぐ向けた。彼女の指は僕に向けられている。
「ん?その指は?もしかしてレイのあんちゃんを指さしてるわけじゃ...」フォックスが止まった。、彼女はコクッと頷いた。
「え?」僕が言う。
「へ?」フォックスも言う。
「えええええぇぇぇぇぇ!?」二人して驚いた。
「え?ちょっ?なんで? まてまてまて、僕は君の保護者だからね?」僕は、頑張って考えをまとめようとするが、纏まらない。
「ずっと、気になってた。最近知った。恋心って。分かった。レイが、好きだった」
彼女は無表情だが、顔が少し赤く見える。彼女の告白に僕は余計に混乱した。
「え~と?え~と?わかんないや~。アハハ」フォックスはダメだった。
「ごごっごめっ、ちょっと出かけるわわわわわ」
僕は呂律が回らない。急いで僕は朝食の準備もせず、飛び出した。
僕はとりあえず、図書館に向かうことにした。
(え~っと、困ったなぁ。グレイシアが僕にそう思ってたなんて。僕は今までそんなこと考えたこともなかったのに、保護者としてというか、妹ができたみたいな感覚だったからなぁ。それに、僕はずっと彼女いないまま生活してきてたんだ。いきなり好きだとか言われても。僕はどうしよう。僕は?グレイシアが?す...き?あああああぁぁぁ!ぎゃああああああ!)
僕は、図書館に向かう電車の中で、顔を真っ赤にしながら、動かず心は暴走していた。
僕は図書館に着いた。適当に本を眺める。後ろから僕を呼ぶ声が聞こえて、ビクッとして振り返る。本の貸し出しの人だ。因みにこの人は、アダムスビルヂングのエレベータの受付の女の人の娘らしい。
「レイさん。珍しいですねぇ。恋愛小説の棚なんて見てたことありましたっけ。あっもしかして、興味が出てくるようなことでも?」
僕は、顔が真っ赤になった。
「関係ないじゃないですかぁ!」僕は思わず叫んだ。
「ほほほほ。これ以上は突っ込みませよ。では、ごゆっくり~」
女の人は、早々に立ち去った。
「はぁ~~~。どうしたものかなぁ」
僕は、恋愛小説の棚を見た。見れば見るほどありきたりなタイトルばかりだ。役に立つ本はなさそうだ。だが僕は、ある本が目に留まった。
『この異世界より真実を込めて』
と書かれている。ありきたりと言えばありきたりなタイトルだ。だが僕はそれが気になった。僕はそれを手に取った。作者の名前を見ようとしたが見当たらない。ジッと見た。裏表紙にうっすらと作者の名前が見えた。僕は驚愕した。作者の名前は
『Nihil Adams』
と書かれていた。
「ニヒル アダムスだって?」
僕は最初のページをめくった。そこには『この本を読むときは、何もない草原で読むことをお勧めします。きっと驚くでしょう』と前書きがあった。
僕はこの本を借りた。そして電車で、近くの草原に向かった。僕は読み始めた。
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僕はすべて読み終わった。僕は家に戻った。
「ただいま」僕は、玄関を上がる。
「あっ、お帰り~」フォックスが出て来る。
「グレイシアは?」
僕は聞いた。「あっ、そこにいるよ~」フォックスは、グレイシアを連れてきた。
「返事は?」グレイシアが僕に聞いてきた。やはり顔が赤い。
「その前に、聞かせてくれるかな。グレイシア。君は僕を好きと言ってくれた。君は僕と一緒にどこまでもついてきてくれるかい?たとえ、
『僕が世界を征服するようなことをしても』ね」
僕は、少し笑い彼女に聞いた。彼女は、少し困惑した顔をしたが、彼女は頷いた。
「じゃあ答えは出た。結婚しようか、グレイシア」
僕は彼女をそっと抱きしめた。
「ロマンチックにはちょっと見えなかったよ~」フォックスは茶々を入れた。
「フォックス。君はどうだい?僕は世界を支配すると言ったら。君は、僕と一緒にいてくれるかい?」
僕はフォックスにも聞いた。
「ん?おいらはあんちゃんについて行くって決めたんだぁ。ニヒルおねぇちゃんみたいに急に消えてほしくないからねぇ」フォックスは答えた。
「そうか。ありがとう。じゃあ行こうか」僕は歩き出した。
「え?どこに?」フォックスが聞く。
「アダムスビルヂング」僕はそれだけ答えた。僕達は出かけた。剣と銃を持ち、そしてコートを着た。
僕達は建物に着いた。何食わぬ顔で昇る、そして、エレベータのホールに着く。
「すみません。アレックス国王に会いたいんですが」
僕は笑顔でエレベータの受付の人に言う。
「すいません。今日は、都合のある時間がないようで...」
僕は笑顔で剣を突き付けた。
「ごめんねぇ。今すぐじゃないといけないんだ。早く、鍵を出してくれるかな?」
僕の行動に、腰を抜かしてしまったようだ。仕方ない。自分で鍵を探そう。見つけた。鍵の付いた箱にそれは入っていた。僕はそれを切り裂いて開けた。中から出てきたのはマスターキーだ。
「ありがとう。フォックス、君はちょっと見ててくれるかな」僕は、見張りを頼んだ。
「よしっと。グレイシア。僕が昇ったらブレーカー落としてくれる?確かこの階に行けば変電室があるからさ」僕はエレベータで登った。彼女はある階で降りた。僕はさらに昇った。
「多分いるとすれば、最上階の五十階だね」
僕は最上階に着いた。護衛のような人が警戒して待ち構えていた。
「え?レイさん?何故ここに?」訳が分からない様子だ。
「この世界を乗っ取りに...」僕は剣を抜き、刀身を光らせた。
「何を言って!?」照明が落ちた。光り輝く刀身だけがあたりを照らしている。
「本気か?」
「本気だよ」僕は、護衛に向かって走った。
「行くぞ!」向こうも、様々な魔法を駆使してきた。だが、相手にならない。弱すぎる。
「ぐぅああああぁぁぁ!」「ぎゃああああ!」断末魔が広がる。
「うるさいなぁ、君たちはまだ使えそうだから殺してないのに、黙っててよね」
僕は廊下を歩きながら突き進んだ。警報装置が作動した。たくさんの護衛が出てくる。僕はなぎ倒す。仕方なく殺さない程度に。僕はあるドアの前に着いた。ロックされている。僕は、切り裂き開けた。
「あぁ、こんなとこにいたんですねぇ。陛下」
そこはパーティ会場だった。たくさんの人がテーブルに隠れている。
「レイ...君?どういう、事だ?」
王は何もかも理解していない。
「この世界を征服しにね」
僕は薄っすら笑った。護衛が飛び出す。僕は吹き飛ばす。
「今ここで逃げて、僕に世界を譲るなら、見逃してあげるよ」
僕は王に剣を突き付けた。電気が復旧してエレベータが動いている音が聞こえた。乗っているのは一人。彼女はエレベータを降りた。そして僕のところまで来た。
「ありがとうグレイシア。うまくいったよ」僕は彼女に、礼を言った。
「ちょっと、グレイシア!?あなた、何をしているのか分かってるの!?」
女の人の声が聞こえた。声の主は、グレイシアの小学生からのクラスメイトでアレックスの実の娘。エルメス アダムスだった。
「征服。せかいを乗っ取る」グレイシアは、そう言った。
「エルメスさん、ごめんね。怖い思いさせちゃって。すぐ終わるから、黙っててくれる?」
僕はエルメスを睨んだ。エルメスは地面に張り付けられた。
「やめろ!エルメスは関係ないじゃないか。なぜだ。何故君がこんなことを!」
王は叫んでいる。
「答える必要なんてあります?分かりませんかねぇ?支配したいから。とだけ言っとこうかな」僕は適当に返事した。
「で?僕にこの国の政権すべて渡して逃げる?今ならグレイシアが電気を復旧させてるから逃げれるよ。何、心配しなくても、あなたはあの家に行けばいいじゃない。あなたの別荘にね。それとも、このまま全員死んで、僕が乗っ取りを宣言しようかな?」僕は王を脅した。
「分かった。君に全権力を与える。私たちはここから出るよ」
王は会場のみんなを連れて退散した。
「あっ陛下だけはちょっと待ってください」僕は、王だけを呼び止めた。
「まだ何かあるのか?」王は怯えていた。
「なぁに、全国一斉放送ですよ。ここにはあるんでしょ。それをできる機械が。僕はそこで宣言するよ。いちいち、テレビ局をつぶしてたらめんどくさいからね。じゃあお願いね」
僕は王に指示した。
「分かった。ここだよ」王は僕を別の部屋に連れていった。そこにテーブルとマイク、そしてテレビカメラがあった。
「くそっ」
王は緊急放送用のスイッチを入れた。
『国民の皆さん。重大な発表があります』僕はマイクを奪い、カメラの前に立った。
『皆さん、僕は三上 礼です。まぁ知っている人も多いですけど改めて自己紹介させてもらうよ。僕は今、この国の政権を手に入れました。アレックス国王からね、つまり今僕は、この国を支配しました。僕が、この国の王です。何故そんなことになったかって?奪い取ったからだよ。ではさようなら、あっそうそう。僕に逆らったら、即処刑するからね』
僕は笑って、電源を切った。
「ふぅ、これで良し。アレックスさん早く行ったほうがいいよ。いろんな人が詰めかけてくるだろうからね。あぁ、それと...」
アレックスは走ってエレベータに乗った。しばらくして、またエレベータが動きフォックスが来た。
「今の演説、ちょっとグダグダだったねぇ」フォックスは僕を馬鹿にしていた。
「うるさいなぁ」僕は、さらに上にある玉座の間に向かった。僕はそこに腰かけた。
「世界を、支配してやったぞ」僕は、不敵な笑みを浮かべた。
俺たちの戦いは、ここから始まったんだ。
とりあえず、第一章はここまでです。
年末から書き始めてもう4月です。小説って書いてると楽しいですけど、詰まるととことん詰まりますね。
とりあえず、この章のテーマは「伝える」をメインに書いてみました。僕自身も書いてて分かりにくいと思います。大体アイコンタクトの表現になってしまいました。
それ以外にもいろんなテーマをつっこみ過ぎてしまい、途中から自分でも設定を忘れてしまうこともありました。本当に小説書くのって難しいですね。