第1章 20話 異世界の野宿
僕たちは順調に進み森の中に入った。バケモノの気配はここまで全く聞こえなかった、
日も沈んできたところで僕はあることを思い出した。
僕は冷や汗が、大量に噴出した。僕はブレーキをかけバイクを止めた。ビーンも僕が急に止めたのに気づき、急ブレーキをかけて止めた。
「おいどうしたんだ?まだ今日は進めるだろ」
ビーンは言った。彼は僕たちがしてしまった最大のミスにまだ気づいていないようだ。
「ビーンさん、僕たちは今朝からここまで流れるように行動してきましたけど、やらかしてしまいましたね。もっとしっかり考えて準備すべきでした。気持ちが急いでいました」
僕は言った。ビーンの頭には?がある。
「だから何のことだよ」
ビーンはまだ気付かない。
「食料って僕、持ってきてないんですよね...」
僕が言うと、ビーンは笑顔で固まった。
「やべえええぇぇぇぇぇ! 頭ん中からすっかり抜けてたぜ! おい!あんたのカバンの中に食料はねぇのか!」
僕はリュックの中身を確認したが、水以外はない。
「どうしましょう...」僕は焦った。
「くそ、仕方ねぇ。今日はここで野宿だ。今から狩りをするぞ、まず薪を持ってこい!」
僕は、バイクを茂みにやり、荷物を降ろし、木の枝を拾い集めて、空気が通りやすいように木の枝を並べた。僕は魔法で火を起こそうと思ったが、気持ちが焦っているせいか、爆風になって、うまく木に燃え移らなかった。
「何やってんだよ、もうちょっと落ち着いてやれよ。あれっ」
ビーンも電気で火をつけようとしたが。ほぼ雷みたいに放電して、薪を吹き飛ばした。僕はあることを思い出した。
「ビーンさん、ライターが僕のリュックに入ってたはずです。とってくれません?」
僕が言うとビーンはリュックの中から、ライター用のガスボンベを出した。
「これの事か?」ビーンは僕に聞いてくる。
「いえ、それの近くにあったなんかボタンの付いた、細長い奴です」
僕は、ビーンに特徴を言った。
「これか、おい投げるぞ」
ビーンは僕に向かってライターを投げた。僕はキャッチしようとしたが手を滑らせて落としそうになった。
「おっとっと」
僕は、何とかライターの底をつかんだ。そして、火をつけようとしたその時だった。
『ボオオァァァゥゥゥゥゥ』
ライターから炎が火炎放射のごとく噴出した。
「うわぁっ!」
僕はライターを放り投げてしまった。ライターが地面に転がった。薪には火が付いた。
「ライターってそういうやつなのか?」
ビーンはあっけにとられている。
「いや、ありえないですよ普通に蝋燭とかに火をつける程度の炎しか出ませんよ」
僕も唖然としながら言った。
「マッチみてぇなやつなんだよな。あっそれどころじゃねぇ、近くに川はねぇか?魚なら俺の得意分野だからな。俺がとってきてやる」
僕は音を聞いた、どうやらここから、すぐ近くに小川のせせらぎが聞こえた。
「ビーンさん、ありますね。ここからあっちに五十メートルほどのところに」
僕が言うと、ビーンは槍を持ち出し出かけようとした。
「レイ」グレイシアが僕を引っ張った。
「どうしたの?」
僕が聞くと彼女は、サイドカーを指さした。サイドカーの中に大きい布袋があり、その中にはカセットコンロと大きな保冷バック、コメが三キロ、その他野宿セットがあり周りには野菜が敷き詰められていた。手紙も添えられている。
「ビーンさ~ん!」
僕は、今にも走り出しそうなビーンを止めた。僕も、彼女と一緒にサイドカーを指さした。
「あっ...あったの」ビーンは、肩を落とした。
僕は手紙を見て、声に出して読んだ。
「ビーンさん、これ、スチュワートさんからですね、手紙があります。読みますよ(勇者の方々へ、あんさん方はちょっと今回、気が焦ったんじゃねぇか?ろくに準備もしねぇで外に行くと命がねぇぜ、これは俺からの選別だ。今朝、アレックスのじじいから今日いきなり、あんさんがここを出るって聞いてな、昨日開いたスーパーマーケットってとこで、食料とか保冷鞄とか買っといたから、ここにあるバイクに積んでおくぜ。一週間は持つだろ。スチュワートより)っとの事ですね」
僕は読み終えた。
「さすがは隊長だな、仕事がはえぇ」ビーンは槍を下した。
「これで作るとなると...」僕は中を詳しく確かめると、カレールゥが出てきた。
「カレーが作れそうですね」僕は、カレーを提案した。
「あっそれ俺の好きなやつ、しかも甘口買ってきてくれてるし」
ビーンは、急にノリノリになり支度を始めた。僕は辛口が好きだがと思ったが、文句は言えない。
「ちょっと水汲んでくる。ちょっと待っててくれ」
ビーンは、どこからか大きな鍋を持ち出してきた。
「じゃっ僕たちは、材料を切っておくか、あっ包丁がない、まな板はあるのに...」
僕はどうしようか悩んだが、グレイシアが氷を刃のようにして作り出して僕に手渡した。
「あ~こんな使い方があるなんてね」
僕は、ジャガイモの皮をむいた、最初は大丈夫だったが、氷が冷たくて手が痛くなってきた。僕はあることを思いついた。野菜類をまな板の上に置いた。
「やれるかなぁ...やってみよ!」僕は手に精神を集中させた。
『ズバババァッ』
僕は風を操り、吹き飛ばないように調整して、風をぶつけ合いかまいたちを起こした。野菜はきれいに切れた、一瞬だった。
「ふう、集中さえできれば、ここまでできるんだなぁ、自画自賛はしたくないけど、我ながらここまで上手くいくなんて」
僕はちょっとうれしかった。グレイシアも口を開けて感心していた。
「うぇ?、もう切り終わったの?せっかくの俺の見せ場が」
ビーンが鍋を抱えて戻ってきた、コンロに火をつける。
「あとは、肉があれば最高なんだけどな、さすがにそれはねぇかな」ビーンがガサゴソ探っていた。
「マジか!あったー!」
ビーンが保冷バッグから『豚肉322円』と書かれた入れ物をとり出した。
「かなり入ってる!一週間、肉にも困らなさそうだ!」ビーンは満面の笑みだ。
「後は米を炊くか」
僕は米を出した。そしてかばんに入っていた、小さい片手鍋を持ち出して、焚火のほうに持っていきリュックから水を出した。
「米は洗いたいんだけど、仕方ない」僕は米を片手鍋に入れた。
「えっと確か米の炊き方は『はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな』だったっけな」
僕は鍋に蓋をし、魔法で炎をコントロールしてみた。
「なんだ今の はじめちょろなんとかって、ってか米炊けるのかよ。俺は、カレーだけで十分だと思ってたのに、あんた家庭的だなぁ」
ビーンが、感心していた。僕は無視していた。できることならきれいに炊きたい。それに気づいたのか、ビーンとグレイシアは、ルーを作るのに専念した。
「今だ!」僕は、鍋のふたを開けた、が、あまりきれいな米では無かった。端っこはちょっと焦げ付いていた。
「ま、まぁいいか。おこげっておいしいし」
僕は、今まで事がすんなり運んでいたので、今回もと思ったがさすがに料理は、経験がものを言った。
「おっ おいしそうじゃん。なあ」
ビーンとダストは目を輝かせていた。喜んでくれるならいいか。
僕たちは紙の皿にカレーを盛りつけた。
「いただきます」
僕達は食べた。甘いが結構いけるな。何故か食べ始めたらみんな無言になって食べ続けた。
「ご馳走様」
僕たちはみんなで川に向かいそこの水で洗いものをした。
「ふぅ、本当にスチュワート隊長には世話かけてばかりだな」
ビーンがつぶやく。
「そうですね、今度しっかりお礼を言わなきゃですね」
僕もつぶやく。グレイシアは、途中から一人水遊びを始めた。
「さて、寝るか。寝袋も用意されてるしな、明日は日の出とともに出るぞ」
僕たちは、バイクに戻った。
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「ん?」
僕は、耳を傾けた。何かが近づく音がする。
「ビーンさん...」
僕が言うと、彼はすぐに火を消した。僕は耳を澄ませる。
(頼む、通り過ぎてくれ、いや駄目だ。まっすぐこっちに向かってる。四足歩行の、大きさは犬ぐらいか?)
徐々に近づく音は、ビーンにも聞こえるぐらいに近づいてきた。
「来い!」僕は構えた。