第1章 15話 異世界の首都
「何を言ってるんですビーンさん?彼女は、少しづつですけど喋れるようになってたじゃないですか」
僕は不思議に思いビーンに聞いた。
「あんたこそ何言ってんだ?この子の声を聴いたのは今のが初めてだぜ。あんたは、隊長同様に読心術でも使ってんのかと思ってたんだが...それに目を見れば分かるとかとかなんとかアンドリューに説教してたじゃねぇか」
ビーンは、僕が変だと言うような口ぶりだった。
「いや、ちょっと待ってください。さすがに目を見ただけじゃ全部まではわかりませんよ。あっそうだ。ね、なんでもいいから、なんか言ってみてくれる?」
僕は彼女に聞いた。彼女は、
「あ.い.う.え.お」とゆっくり発音した。
「ほら、こんな感じですが、喋れてるじゃないですか」
僕がビーンに尋ねると、ビーンは余計に首を傾げた。
「へっ?俺には何も聞こえねぇけど、口を『あいうえお』って動かしたのはわかったけどよ。あんた、いったいどんな聴力してんだ?」
僕の中で新たな疑問が出来た。そうしていたらオルゴールが鳴った。
『あと、五分ほどで、中央に到着します。お忘れのなさいませんようお気を付けください。本日も、アダムス国立鉄道をご利用いただきありがとうございました。まもなく、中央、終点です』
「もう着くな。この話は、一旦無しにして、アダムスビルヂングに行くぞ。そこが面会場所だからな」
僕たちは、荷物をまとめてデッキに向かった。しばらくして列車が停止し、折り畳み式のドアが開いた。
『ちゅうおう~、ちゅうおう~。中央です。お忘れ物のなさいませんようご注意ください』
駅のアナウンスが聞こえる。ホームに降りて周りを見ると、沢山の人と、大量の電車や機関車に、客車が止まっていた。
「おい、こっちだぜ」
ビーンが先導する。僕達は後ろについていく。改札を出てしばらく歩いた。町並みは、フランスというより、摩天楼が立ち並び、道路には路面電車が走っている。
僕はアメリカっぽいなと思った。だが、ところどころ見ると、壁には『高速鉄道開通まであと一日』と書かれた昭和チックなポスターがあり、信号機からは、『カッコ―』と音が聞こえてくる。大きな街頭テレビでは、アンドリューの指名手配についてのニュースが流れていた。
大きい横断歩道を渡り終えて、またしばらく歩き続けた。ビル群の間を抜けるように行くと、巨大なロータリーに出た。そして、ロータリーの奥に巨大な建物が立っていた。ふと建物の下あたりを見ると、建物の周りは、きっちりとした軍服を着た人や、ビーンのような鎧を着た人がうろうろしていた。
「ここが、この国の城。アダムスビルヂングだ。みんなは、アダビルとか呼んでっけどな。結構固そうなやつらが見回ってるけどよ、この建物の一階~七階は一般開放されてて色んな店が入ってんだ。俺たちが待ち合わせてんのは、ここの四十七階、応接部屋ってとこらしいぜ。んでよ、そこに行くには、まず普通に七階まで行ってから、その上のホテル専用のエレベータで四十五階まで行って、そこに受付があるみてぇだから、そこで王と会う旨を話せばいいらしい。そうすると、さらに専用エレベータで四十七階に行けるらしいぜ。分かったか?俺は、今回入れねぇらしいからよ途中のホテルの入り口までしか案内出来ねぇ。道に迷わねぇようにな」
ビーンがいきなり説明したのと、途中までしかついてこれないと聞かされて僕は焦った。
「えっ?ビーンさん来れないんですか?聞いてなかったですよ。そんな事」
僕は、戸惑っていた。
「あぁ、俺も言うの忘れてたからな。なんでも王はあんたら二人と話してぇらしくてな、俺がいると新鮮な話が出来ねぇとか、ってスチュワート隊長が言ってたんだ。隊長の事だから、王にはレイの正体は伝えてあるからだと思うぜ。だから、俺がハブられてるんじゃねぇの?」
ビーンは、適当な感じで答えた。
「じゃ、いくぞ」
ビーンは建物に向かった。
「あっ、はぃ」
僕は、少し動揺しながらも、ダストとビーンの後ろについて行った。
建物に入ると、大勢の人でにぎわっていた。まるでデパートだ。僕達は、エレベータが混雑していたので、エスカレータを使って七階まで上がった。七階の奥のほうに、『アダムスホテル、エントランス』と書かれた、他より豪華な装飾のドアがあった。
「俺は、ここまでしか案内出来ねぇ。俺はここの階の店をうろうろ見てっからよ、あんたは王にあってきな」
ビーンは、ちょっとうれしそうに、店を見て回ろうとしていた。
「行こうか」
僕たちは、ホテルに入った。中は、それこそ高級ホテルのようで緊張する。『受付』と書かれた看板を見つけた。僕達はそこへと向かう。受付を見つけると、そこにいた女の人に話しかけた。
「すみません。今日の五時十五分に国王さんと待ち合わせをしている者なのですが...」
と言ったら、一呼吸も置かずに返答が来た。
「ああっ。はい、スチュワート様から話は聞いております。ミカミレイさんとダストさんですね。ハイ、こちらが、エレベータのカギになります。エレベータはここの奥にあります。そちらにこの鍵を入れてご搭乗ください。そこから四十七階のボタンを押してください。面会時間は一時間ほどとなります。とわ言っても、陛下の事ですからまた長くなるかもしれませんけどね」
受付の女の人は急にフレンドリーな笑顔になった。
「分かりました。ありがとうございます」
僕は礼を言って、エレベータのあるほうへと向かった。
「えっとこの鍵を~、これか」
鍵の差込口に、さっきもらった鍵を入れて回したら、すぐにエレベータのドアが開き僕たちは中に入る。
「そんで四十七階っと」
壁のボタンには数字で「47」と書かれていたところだけが明るく点いていた。僕はそのボタンを押した。すぐに到着した。ドアが開くと、広い部屋に、高級そうな机と高級そうな椅子が置いてあり、その奥にスーツのよく似合うまだ四十代半ばぐらいの男性が、やたらと大きな椅子に座っていた。
「やぁ遠くから済まないね、私がこのアダムス王国の現、国王のアレックス・アダムスだ、よろしくね」
王に、僕はすごくフレンドリーにあいさつされた。
「あっ、あの三上 礼です。本日はよろしくお願いいたします」
僕は頭を下げた。隣でダストがハッとして、一幕おいて同じように頭を下げた。