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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 中央決着編 13話 この異世界より込められた真実を胸に

 「原子爆弾、つまり核の本当の使い方は彼らの情報網を絶つことにあんだ。核は只の爆弾じゃねぇ。ロケットエンジンを積んだミサイルってやつだ。それをはるか上空にまで打ち上げて炸裂させる。すると超強力な電磁パルスが出てこの世界の通信機器とかを一気に使えなくする。高高度核爆発つってな、それを時間切れになった場合に使おうとしてたんだ。彼らからの通信網を一網打尽にしてあんさんらを隠す為にな。つってもそいつを使うのはあんさんらがゲームをクリアできなかった場合の保険だ。そいつを使うのはこっちにも被害は出る。そうすればこの国は混乱しちまうかんな。ま、予定通りあんさんらは覚醒してここまで来た。核を使う事は無くなったって訳だ」


 そういえば聞いたことあるな、確かEMPって言うだっけ。


 「そしてレイの持っていた核は、時間が来た時にスイッチが入ってレイがバケモノになる前に炸裂してあいつをバケモノにさせない為のものだ。わざわざ核にしたのは念のためってのと、これもまた保険でな、あの町を消し去って彼らの監視から抜ける為だ。ほら、あんさんらが中央で戦ってた時、街には誰も居なかったろ。住人たちは全員アダビルの地下に避難してんだ。あのビルは核にも耐えれる構造になってる。玉座の間に窓がねぇのもそのせいだ。そろそろ住人たちが外に出る頃だろ」


 聞けば聞くほど、あいつの用意周到さに圧倒されるな。どんだけ保険賭けてんだ。


 「お?というと、三上殿はこの時間に外に出ても良いって言ったのでござるか?もし、核が爆発したのなら放射能汚染で外は地獄になってしまうでござるよ?」


 「その点だが、あんさんらの世界では核兵器の使用での汚染の除去は五十年近くかかるって言われてんだろ?だけんどな、この世界は違う。この世界にある零祖細胞ってのは空気中に当たり前に存在してる。簡単に言やぁ、酸素とほぼ同じだ。そしてその細胞の特徴の一つに人体に有害な毒素を無害化させる力があるって分かったんだ。放射能すらな。そんでもって放射能除染の仮想の実験を試みてその結果、あの核が使われて除染にかかる時間はたった二時間ほどだった。だから心配はいらねぇんだ。証拠に、この世界じゃ日焼けしても真っ黒になるやつは見た事ないだろ。そういった紫外線とかの物質を無害化させんのさ、零祖細胞はな」


 あ、そういえばアオシラにいた人たち、確かに多少褐色気味な人はいたが、日焼けが凄い人は誰もいなかったな。


 「俺の知ってる事はこんぐらいか...何かほかに聞きてぇ事はあっか?俺も全部が全部教えられている訳じゃねぇ。答えられる範囲でなら答えるぜ」


 大分納得出来た。この冷静さは覚醒のせいか?いつもの俺なら訳が分からないって投げ出してたのに、今は上手く物事を繋げられる。俺が知りたいのはあと一つになった。


 「じゃあ聞くッスけど、三上が殺し続けた人達、あいつが殺した人数ってのは百人どころじゃないんスよね。あの人たちは何かあったんスか?」


 俺の質問にスチュワートは眉間にしわを寄せて考えた。


 「俺も、そこだけは全く分かんねぇんだ。いくらレイが異常者になったって彼らに見せつける為でもやりすぎだ。あいつの事だから何か考えがあっての事だと思いてぇが...やっぱそこだけは分かんねぇ。シャルロットかポンサンあたりなら知ってたかもな。あの二人は知ってそうな雰囲気だった。けど、あいつ等も死んじまったしな...」


 スチュワートでも分からないことがあるのか。三上は、真実を別々に分けて教えていたという事か?全員が全員全てを知ってる訳じゃない。グレイシアもそうだ。三上は信頼する人物でも全てを教えなかったって事だ。


 「三上...勝つには勝ったけど、やっぱりあんたは俺の上を行きやがるんスね。まぁいいか、答えは埋まった。じゃあ俺たちがこれからやる事はまずはジョシュと連絡を取る事って事になるんスよね。そこから彼らを探し出すと」

 

 「そういう事になるな。けどこの部屋は音も電波とかも防ぐ、一応彼らへの対策の一環だ。一旦外に出なきゃ通信は出来ねぇ。廊下に出りゃ出来ると思うぜ」


 ・


 ・


 ・ 


 俺は扉を開けてジョシュに連絡をとろうとした。だが、その前に俺の足元に何かが飛びついてきた。


 「うわぁ!」

 

 隣でエルメスが悲鳴を上げた。


 (あ!開いた!!ねぇねぇ!!近くにバイクに乗った人達が近づいて来てるんだよ!?あの人たちってお兄さんの事探してるよ!?逃げたほうがいいんじゃない!?)


 足元でしゃべったのはネズミだった。探してる? まさか...


 「麗沢!!ここに誰か近づいて来てないッスか!?」


 「お、およ?別に何も...いや、これはタイヤの音でござる...二輪の、二十台...距離は数キロ先?しかし、エンジンの音はしないでござる...これは、一体」


 「ちょ!おぃおぃ...まさか、彼らが動いてるってのか?...ここは誰も立ち入らない森の中、表立って行動してもバレねぇって事か...ちっ、してやられたか。レイサワ!エンジン音がしねぇってのは多分、隠密行動用に作られた軍用バイクだ!ここがバレるの早すぎんだろ...仕方ねぇ。みんなぁ!この机の下に隠し通路がある!一番奥に俺の車を置いてある。そいつを使って逃げな!俺が時間を稼っからよ!」


 スチュワートは廊下に置いてあった机を倒して近くにあった杖をを虫が食ったような穴に刺した。すると、そこの地面がスライドして梯子が出てきた。


 「時間を稼ぐって、大丈夫なのですか?それだったらここまで来た車を使えばいいのでは...」


 零羅が心配そうにスチュワートに尋ねる。しかしスチュワートは余裕のある笑みを浮かべた。


 「彼らの狙いはあんさんらだ。奴らぁ、とことん存在を知られるのがいやらしいかんな。うかつには手が出せねぇはずだ。こっちの世界の俺が死ぬことがあったら奴らのデメリットがでけぇ。だから心配なさんな。そんで車だが、あいつはここに来るまでに一気にタイヤをすり減らして燃料もほとんど無くなってるはずだ。あいつを使うのは危険過ぎんだ。そんでよ、グレイシアちゃん!」


 スチュワートはとある紙をグレイシアに渡した。


 「レイの話じゃ、そこに彼らと対抗する手段があるらしい。心中察するが、出来るか?振り切れるのはおめぇさんぐれぇだ」


 グレイシアはしばらくその紙を眺めてから呟いた。


 「必ず...!」


 紙を掴んで一気に梯子を降りた。他のみんなも続いて降りていった。最後は俺だ。

 

 「サクラ君よ、ちょい待て」


 スチュワートは俺を呼び止めた。俺は振り返ると、真剣な顔で俺を見ていた。まるで何かに決心したかのような顔だ。


 「あんさんの能力ってのは、動物の会話でいいのかぃ?」


 「正確には、動物たちを操るって感じッス。どこまでの範囲で効くのは分かんないッスけど、少なくとも十キロ圏内の動物たちには俺の声を届けられるッスよ」


 「そうか...だったらすまねぇが、そいつらにここから離れるように言っておいてくんねぇか?もしもの場合を考えてな...」


 スチュワート...何を考えてる?まさか...!


 「スチュワートさん。まさかあなたは...」


 「あぁ、止めても無駄だぜ。俺も覚悟は出来てんだ。だから済まねぇけど頼む。俺には俺なりの闘いがあっからな」


 スチュワートの目にあるのは覚悟だ。俺には止められない。止めてはいけない。そう俺の心が言った。


 「分かったッス。何をするつもりかは聞かないッスけど、ありがとうッス!!」


 俺は梯子を降りた。その直後にスチュワートは地下への入り口を閉じた。


 

 暗い洞窟の様な道をしばらく進み、距離にして約五キロ程歩いたところで外に出た。一台の車が置いてある。この車で行けばいいのか、行き先はグレイシアが知ってるんだったな。


 俺たちが車に乗り込もうとした時だった。


 「誰でござるか!?」


 茂みが揺らぐ音で麗沢が気が付いた。俺は既に動物たちに遠くに行くように言っておいた。その為か、ここには動物が誰もいない。俺は何となく身構えた。


 「待って、私だよ」


 茂みから声が聞こえて、その人は出てきた。


 「シ、シィズさん?」


 突如俺たちの前に現れたのはシィズだった。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 桜蘭たちがスチュワートの用意した車にたどり着く数十分前の事、スチュワートは一人、車いすに座って外を眺めていた。


 「...そろそろか」


 そう呟いた時、部屋のドアが勢いよく開けられた。


 「スチュワート ヘリオトロープ。貴様には逮捕状が出ている。同行してもらうぞ」


 入って来た男の一人がスチュワートに近づいた。


 「へぇ~、アダムス警察の服で来たか、にしてもいきなり来て横暴な奴だなぁ。せめて罪状を言えよ。そうだな、世界の裏側を知った罪ってところでな!」


 「...やはり、気が付いていたか。ならば率直に言おうか。あいつ等はどこに行った?」


 「う~~~ん、答えてもいいけどよ?その前におたくら、そのヘルメット取ったらどうなんだ?顔に自信ねぇのか?」


 部屋に入った者たちは全員総じてフルフェイスヘルメットをかぶっている。おかげで顔が全く見えない。


 「それを取らねぇのは、俺に色々読まれるのを恐れてか?それとも...取ったら何かマズイ事にでもなんのかねぇ」


 スチュワートはいたずらな笑みを浮かべている。男たちはその言葉で後ろにたじろいだ。


 「お!やっぱ図星じゃねぇか!レイの思った通りってとこか。おたくら、サクラたちとは別の方法でこの世界に来やがったな?零祖細胞のリスクはおたくらが一番知ってるもんなぁ。そのヘルメットは零祖細胞の遮断用か」


 「だ、だったらどうした!いいから教えろ!坂神桜蘭たちはどこにいる!?」


 男はアサルトライフルを取り出し、スチュワートに向けて脅した。


 「いいのか?俺を殺すのはやべぇだろ。いくら記憶を操作できる奴がいるにせよ、あいつ等が俺を知ってる。覚醒者には記憶操作は出来ねぇ。違うか? にしても、その銃かっけぇな。レイが昔言ってたっけな、『あさるとらいふる』って言うんだろ?」


 会話の主導権は完全にスチュワートに持っていかれている。男は周囲の連中に指示を出した。


 「部屋を隅々まで探せ!!どこかに隠し通路があるはずだ!!」


 「イエッサー!」


 男たちは部屋の捜索を開始した。


 「ふぃ~、精が出るねぇ。あ!その椅子怪しいんじゃね?ほら、その肖像画とか調べたら面白いものがあるぜ!」


 男たちの一人が言われた通り肖像画を外した。裏には『ば~か』とでっかく張り紙がされていた。


 「ぐ!ぐぬぬ...」


 「ぶっはっはっはっは!!騙されてやがんの!!」


 「き...貴様ぁ!!何としても見つけなければ...!というか、なんで言う通りに行動してんだ!!」


 「も、申し訳ございません!!」


 スチュワートは完全に遊んでいる。時間稼ぎのためでもあるが、彼にはまだ別の作戦があったからだ。


 「...あと一人か...」


 「ん?なにか言ったか?」


 「いやね、実は隠し通路の入り口はこの部屋にあんだよ。見つけるのはちと難しいかんな。俺からのヒントだ」


 スチュワートの言葉を聞いて、男たちが全員部屋の中に入った。


 「ほんっと、ここに来た連中が只の馬鹿で助かったぜぇ」


 スチュワートはポケットの中からリモコンのような物を取り出してボタンを押した。その瞬間スチュワートたちのいる部屋の全ての扉が一気に閉まった。


 「なっ!?しまった!貴様ぁ!俺たちを閉じ込める為に!!」


 「閉じ込める?なぁに勘違いしてんだお馬鹿さんよぉ。俺はここに闘いに来てんだぜ?」


 「戦う?その姿でか?仕方ないな。もう我慢ならん!命令違反だが、貴様を殺す!!処理は何とかやってやる!!全員構えろ!」


 男たちは一斉に銃をスチュワートに向けた。


 「...最初っから、それぐれぇの覚悟をしておけば、死なずに済んだのによぉ」


 「まだ言うか!!」


 「ふぅ、おたくら、この部屋が何なのか気にならねぇか?そこの扉とか、やたらと重く感じたろ。それ実は鋼鉄製の扉なんだ。木目調に塗装したな。それからこの家の形...おたくらにはなぁんかの形に見えやしなかったか?」

 

 男は固まった。そして銃を降ろして扉に体当たりを始めた。


 「大ヒント!!発射台だ!」


 「おいお前ら!!これを開けるのを手伝え!!この部屋は...この家はミサイルだ!!」


 それを聞いた他の男たちも一斉に外に出ようとした。


 「おい!貴様!ここを開けろ!!」


 「だれがやるかよ。言ったろ?ここに闘いに来たってな。俺の目的はな...

 てめぇらをぶっ殺す事だ。レイを...グレイシアちゃんを悲しませたてめぇらを俺は許しゃしねぇ。てめぇらには俺と一緒にでっけぇ花火を打ち上げてもらうぜ?」


 スチュワートは、更に別のボタンを押した。


 「はいカウントダウン開始だぁ 十!」


 「くそ!!」


 男たちは一斉に銃弾を扉に撃ち込んだが、びくともしなかった。


 「九!そんな弾じゃ壊せねぇよ!はい八!  七!」


 「グレネードは無いのか!?」


 「ありません! あ!窓からなら!」


 「ほんと...こんな奴らに踊らされてたのかよ。俺たちはあと五!」


 男たちは窓に全弾撃ち込んだが、これもまた無意味だった。


 「クソオオオォォォッ!!」


 「さらに追い打ちで言うけんどよ。ここの近くなんだよな?おたくらの監視の拠点があるのは、そこが破壊されれば、完全にあいつらの追跡は出来なくなる。当初の目的通りだ。使う核は一つ。それを大気圏あたりまで飛ばす。中央にはギリギリ影響は出ねぇが。南オーシャナまでの電気機器が一気にぶっ壊れるぜ?そして、一...ゼロ」


「諦めな!どっかにつかまってたほうがいいぜ!最後にいいものが見れるかも知んねぇぞ?」


 スチュワートのカウントダウンが終わったと同時に部屋は大きく上下左右に激しく揺れだした。


 家の形をした発射台から、核を搭載したミサイルがスチュワートたちを乗せて発射された。


 (結構...体にくるな...ロケットエンジンてのは)


 「くそ...スチュワート。あまりいい気になるなよ?俺たちの組織にも覚醒者がいる。それを超える奴らもな...どの道、貴様らには勝ち目はないんだ。こんな状況、猫が飼い主を引っ掻いた程度でしかない」


 男はヘルメットをとって外を見た。


 「ふん、てめぇらの組織がでかいのは知ってるさ。だがよ、俺らは抗うぜ?これは開戦ののろし見てぇなもんよ。  

 にしても、あんさん、意外と良い顔してんじゃねぇか」


 スチュワートも外を眺めた。


 (わりぃなレイ。あんさんは俺に生きろと言ってたが、今の俺じゃ足手まといにしかならねぇ。どのみち、もう先は長くなかったしな。


 レイ、俺ぁ産まれて初めて忠誠心というもの感じる事が出来た。俺ぁ昔から誰かの言いなりになるのが大嫌いでな。アレックスの護衛をやってた時も、気まぐれでしかやってこなかった。アレックスとは只の友だったかんな。だけど、あんたは違った。俺にとっちゃぁあんたは友と言うより、はるか上から俺たちを見る神だ。おおげさかもしんねぇが、俺から言わせたらそう言わざるを得ない。あんたの覚悟は、いつか全てを笑顔に変えられる。


 さぁて、そろそろ時間か...)


 ミサイルは大気圏を超えようとしている。


 「ハハハ...ようやく、この目で観れたぜ。この世界をよ...満足だ。この世界で初めて空を飛び、更に宇宙へと進めた。長年の夢が叶ったわけだ...()()()()()()()()()()


 ミサイルは大気圏を超え、その直後に内部にある核が点火した。凄まじい速度で連鎖反応を起こし、ミサイルは眩い閃光を放ち、世界を一瞬照らした。

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