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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 中央決着編 9話 だからお願い。

 「うおおおああああああああぁぁぁぁ!!」

 「せぃやあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 互いの攻撃がぶつかり合う。


 (左!!)


 クロの合図で俺は見えない攻撃をかわす。その隙を突いて三上自身が攻撃を仕掛けてきた。俺は先読みしてそこに電撃を撃ち込む。


 (今度は上!)

 (右からも来る!!)


 何!?俺は大きく後ろに飛んだ。三上は間合いを取らせてはくれなかった。


 「もう一人、っていうのは違うよ!」


 三上の攻撃を払いのけた。こいつは二人じゃないんだな。


 (いったい何人まで出せるんだ?)


 (二人は見えた。けど、今はいなくなっちゃった)


 いなくなった?まさか、見えない自分を出すのには時間か何かの制限があるのか?試すか!


 「三上、二人だけじゃ俺は捉えられないッスよ」


 「ん、言うようになったね。覚醒の影響か...挑発に乗ってあげるか。全員で行くよ!!」


 (何人だ!?)


 (右から!そんで上からも!あああ!!四人だ!)


 (前に飛んで!!)


 俺は指示通り動き避けた。そして猛スピードで三上に向かい攻撃する。


 (後ろから来るよ!!)


 俺は地面に風を撃ち、上に飛びあがる。


 「自爆は狙えないよ!」


 (ああ!ダメ!)


 (横に飛んで!!)


 間に合わないか...俺は防御の体勢を取った。だが、三上の攻撃が届いた瞬間に消えた。一瞬触れた感覚はあっただが、突然消えた。


 「読めた!!」

 

 俺は剣を三上の上から振り払った。三上も俺の攻撃に合わせた。俺たち二人は勢いよく反対方向に飛んでいった。


 俺と三上は飛ばされながらも体勢を立て直した。


 「三上、お前のその見えない攻撃、二十秒しか出せないみたいッスね。数えてた甲斐があったッスよ」


 「あらら、見抜かれちゃったか。だけど僕も見抜けたよ。君の能力は動物だ。あちこちで視線を感じると思っらカラスにネズミがいる。あの子たちから情報を得てるみたいだね。君の目線のやり取りでようやく理解できた。中々ファンタジーな能力に目覚めたものだね」


 「まったく、この短時間でこうもすぐにバレるなんてな。相変わらず心の中をのぞいてくる、いやらしい奴ッスね」


 「観察することは結構大切だよ? さてと、お互いの能力を知った。この状況なら君の能力を使わせないようにしなくちゃね」


 (まさか、みんな!!逃げるんだ!!)


 俺は動物たちを狙ってくると踏んで逃げるように指示した。だが、三上は剣を鞘にしまって真っ直ぐ俺に向かってきた。


 抜刀術?今の俺ならこの攻撃、返せる!!俺はタイミングを合わせようと動いた。しかし


 !?


 三上が剣を抜いた瞬間だった。刀身が光っていた。俺の中で危険を察知して俺は上に飛びあがった。その直後に三上は剣を切り払った。


 三上は俺の後ろにあった貯水タンクを切った。いや、切ったというより、溶断したと言った方が良いかもしれない。三上の攻撃は鉄の柱をいともたやすく溶かし落とし、そのまま貯水タンクを破壊した。


 まだ切断面がオレンジ色に光り、熱気が俺にも伝わって来た。


 「なんスか?今の攻撃は...」

 

 「この剣の本当の使い方さ。この剣の名前は『流血光刃』自らの血で魔法の威力を最大限まで高めて、その全てを同時に発動する。そうするとこの剣は僕の血を吸って光り輝き、全てを切り裂く刃になるんだ」


 「成程ッスね。どうりで突き専用の様な武器なのに切り払う攻撃を多用するわけだ」


 「まぁね。と言うよりも、僕自身が突き技が得意じゃないのもあるんだけどね」


 今になってこの技を使ってくる。こんな攻撃、当たったら即アウトだ。


 分かった、こいつは今、奥の手を出した。この攻撃にも何かしら弱点はある。自らの血を使い、更に全部の魔法を同時に使う...なるほどね。


 「このタイミングでそんなものを使ってくるって事は、どうやらその技、あんた自身にも負担が大きいんじゃないッスか?大方、全部の魔法を一気に使うから、その分の疲労は尋常じゃないってところッスよね」


 「ご名答、この際白状するけど、僕の魔法の威力は他の誰よりも強い。だけど威力が高い分僕にかかる精神疲労は大きい。だから、短期決戦でいかないとどんどん僕は不利になる。

 ゲーム終了まではあと二時間か。ここから先は、死力を尽くしていかないとね...」


 三上の剣からはいつの間にか輝きが消えていた。そしてそのまま俺に向かってきた。


 ・


 ・


 ・


 俺と三上との衝突は更に激しさを増していく。三上は俺の一瞬を見抜きその瞬間に剣を輝かせ切り払う。俺の顔をかすめた。皮膚が溶け、直後に固まる。普通に切られたりするよりも何倍も痛い。だけど、これで動きを鈍らせるわけにはいかない。少しでも動きが乱れれば一気にやられる。


 俺自身も反撃に出る。間髪入れずに攻撃を叩き込む、三上は捌いていくがそろそろ疲労が出始めた。俺の攻撃がたまにかすめるようになった。


 切られれば切り返し、魔法を撃ちこまれれば俺も魔法を撃ち返す。それが続いた。


 俺たちの動きは徐々にキレを失い、立っているのもやっとだ。 


 「ぜぇ...はぁ...三ィィィィ上ィィィィ!!」

 「ぬぅああああああああああ!!」


 お互いすれ違いざまに切った。俺はあいつの脇腹を深くえぐった。三上も俺の腹部を剣を輝かせ削り取った。すれ違い、そのまま俺たちは倒れた。


 「あと、十分...勝つのは、僕だ...」


 「いや...まだだ。まだ立てるッス...勝負は、これからだぁ...!!」


 激痛を押さえ、俺は立った。俺の剣を投げ捨て、銃に魔法を込めた。


 「僕も...まだ、っ!!はぁ...」


 三上は頭を押さえながら立ち上がった。お互いにもう力はそれほど残されていない。次の一撃で終わらせる...みんな、見ていてくれ...勝つのは、俺たちだ!!


 「ぁぁぁぁぁぁぁ...」


 俺は更に魔法を込める。電撃に炎、全ての魔法をつぎ込んでいく。


 「だぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!」


 全部だ。俺の全部をつぎ込め!何が何でもこいつを倒すんだ!!


 「来い...三上!!」


 三上も力を込めだした。


 「行くよ...これで最後だ!」


 三上は飛び出した。それと同時に俺は引き金を引いた。


 「うおりゃああぁぁぁ!!」

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」


 様々な魔法が混じった弾は巨大な閃光になり三上を襲う。三上は受けて立った。激しいぶつかり合いが起こる。衝撃でこのビルそのものが揺れる。その時だった。


 『バキンッ』


 子気味の良い音で、何かが折れるような、そんな音がした。


 (マズイよ!そのてっぽう壊れそうだよ!!)


 ネズミの声を聴き、手元を見る。銃口にひびが入っている。そのひびは徐々に広がっていった。


 しまった...この銃はきっと、これだけの魔法の組み合わせには耐えられない。せいぜい、三種類を組み合わせるのが限度だったんだ。くそ!!


 銃口から銃身にかけて大きくひしゃげた。その影響で魔法の威力はは弱まり、三上は俺の魔法を押し返していく。


 「せぃやあああああ!!」


 三上も最後の力を振り絞って一気に突っ込んできた。クソ...ここまでか。


 また、自分のミスでやられるのか...いや、まだだ。体はまだ動く!だったら!!


 俺は銃を投げ捨て、体を深く沈みこませて三上の懐に入り込んだ。流石にこれは予測できなかったみたいだ。俺は三上の剣を蹴り飛ばした。続けざまに俺は三上の足を払い転ばせ、起き上がった。


 武器が無いのなら...あいつのを使う!


 俺は飛び上がった。三上もすぐに立ち宙を舞う剣に向けて俺とほぼ同時に飛んだ。


 今この状況でまともに使える武器はあれしかない!届け!何としてでも俺が先に!!


 ・


 ・

 

 『パシ...』

 

 剣の柄を掴んだのは、俺だ。俺の...勝ちだ!!


 俺は三上の心臓に向けて剣を突き立てた。


 ?


 突き立てる一瞬、奇妙な感覚に襲われた。俺が剣を取った瞬間に三上から、殺気が消えた。そして笑っていた。


 だが俺に躊躇いはなかった。俺の剣は三上の心臓を完全に捉えた。


 「うおおおっ!!」


 三上は成す術もなく、そのまま地面へと激突した。


 「がはっ!!」


 地面に落ちた衝撃は意外と大きく、俺も着地が出来ずゴロゴロと転がった。


 ・


 ・


 ・


 立てない...指に力が入らない。まだだ、まだ終わっていない。止めを刺さないと。たて...立つんだ俺!!


 俺は這いつくばるように三上の元に向かった。


 「...僕が負けた...指の一本も動かせないや...桜蘭君...君の、勝ちだ。後は、とどめをさす事だけ。さぁ、僕を殺すんだ」


 俺は最後の力を振り絞って強引に立ち上がった。だけど、止めを刺すものがない。


 「何を...止まってるの?早く止めを刺さないと時間になっちゃうよ。僕を殺せる道具なら持ってるじゃないか。あと一発残ってたんじゃない?」


 俺は西ボーダーでもらった銃の事をすっかり忘れていた。今でもベルトに引っかかっている。コレの装弾数は六発、後一発入ってる。俺は銃を取り出した。弾丸は湿気ってなさそうだ。


 俺はハンマーを起こして三上の額に向けた。俺はまたここで止まってしまった。俺の手が震えてる。これは恐怖だ。目の前にいる一人の人間を殺す。命をこの手で奪うんだ。


 「何をしてるんだ...早く止めを.....ふぅ、この言葉、知ってる?

 『落ち着け、そしてよく狙え、お前はこれから一人の人間を殺すのだ。』君の目の前にいるのは英雄でも何でもない。君の、そして世界の敵だ。それ以外の何物でもない只のちっぽけな人間だ!!撃て!!」


 「うわあああああああああああああああああああ!!」


 『パァン!!』


 乾いた音が空に鳴り響いた。三上は、撃たれる瞬間に安らいだ顔になっていた。俺の銃弾は三上の額を貫いた。


 殺した...人を初めて殺した。こいつは確かに死んで当然の事をした。俺自身もコイツを殺す覚悟は出来てた。だけど、本当に命を奪う瞬間っていうのは、何とも言えない虚無感に襲われる。


 


 四月二十八日、午前八時一六分一七秒、三上礼は死亡した。

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