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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 中央決着編 2話 それぞれが平和を願っていた。

 エレベータの扉が開く。開いたと同時に部屋に電気が点いた。誰も居ない応接部屋、だが、所々生活感の漂う感じがした。汚れていたのを強引に片付けた感じだ。部屋の隅に掃除機が隠されているのが見える。


 「あら...」


 グレイシアがカーテンを開けたら、そこにゴミ袋の山があった。


 「またフォックス散らかしてったみたいだね」


 また、って事はフォックスって人はだらしない人物なのか?にしても、これを片付けたのは三上か?すごいゴミ袋の量だな。


 グレイシアは、カーテンの奥にあるスイッチを押した。すると俺の目の前の扉に電気が点いた。どうやらこれがエレベータらしい。扉が開く俺たちは乗り込み上に行く。


 「これで玉座の間まで一気に行ける」


 


 最上階に着き、色々な大きい扉を横目に見ながら突っ走る。この扉の向こうは色んなパーティが行われる場所だったり、発表会を行ったりすることの出来る場所らしい。ここには下からの直通するエレベータがあるが、動かすには電源を入れる為にごちゃごちゃとしなくちゃいけないとグレイシアが教えてくれた。だから少し面倒くさいが三上の家の中を通るルートにしたらしい。


 そして奥にある段数の余り多くない階段を上り、その奥にある一段と荘厳な印象を受ける扉の前にたどり着いた。


 「ここの先に、レイがいる。そしてフォックスも...忠告すると、フォックスの本気は私は見たことがない。ただ、あの子の扱う炎の魔法は、私たちの魔法とは何かが違う。脅すようで悪いけど、それだけは覚えておいて」


 「了解でござる!」


 麗沢が威勢よく返事した。そして、扉を開けた。巨大な扉をほんの少しだけ開け、俺たちは中に入った。


 

 中はかなり広い。長く続く回廊の奥が少し高くなっていてそこの一番奥にやたらと存在感のある椅子がある。あれが玉座か...三上があれに座るのねぇ。想像できんな。


 この広間は電気が点いていないせいか少し薄暗い。柱にあるオレンジ色のライトと非常口のライトだけがこの広間を照らしている。柱にあるのは松明かと思ったが、それっぽい電灯だった。


 奥までたどり着いた。

 

 「...来たのはいいッスけど、三上は?」


 「いないでござるなぁ」


 「どこかに隠れているとか...は、ないですよね。動いていたら麗沢さんが気付きますし...」


 ここには誰も居ない。俺は玉座を見る。ある欲望が俺の中で渦巻いた。少しだけなら...


 


 「先輩、今はこんなことをしている場合ではないでござる」


 「いっぺんやってみたかったんス」


 俺は玉座に座り、足を組んで肘をついた。ひじ掛けまで意外と遠かったからほぼ寝そべった体勢になった。恥ずかしくなってもとに戻ろうとする。


 「あ、上...」


 零羅が上を指さした途端。何かが上から俺の頭に落ちてきた。


 「いたっ!くない?なんスか?このもふもふした感触...」


 頭の上に妙に柔らかく温かいものがある。そして、この感触は 毛か?例えるなら、もふもふだ。そしてそのもふもふは俺の膝に落ちた。


 「やぁやぁど~も~...ふぁ~~~~」


 そのもふもふはやる気のなさそうな声で俺の話しかけた。


 「は...はぁ。えと...これって、キツネ?か?」


 「そう...ですよね。黒い足に茶色い毛並み、そしてこの尻尾...キタキツネです」


 「それは、分かるでござるが...今、喋らなかったでござるか?」


 俺たち三人はお互い見つめあった。


 「あ~、グレイシアおかえり~。えっとさ...あれ?あ...これっていよいよ、おいらの出番って事なの?」


 「そうでいいよ」


 「え!?じゃあこの人達が遊び相手なの!?」


 キツネは俺の膝の上でぴょんと飛び跳ねた。


 「ごめんねぇ、今ちょっと寝てたんだ。あ!!そうだ!自己紹介まだだったよねぇ!おいらの名前はマイケル J...」


 名乗り切る前にグレイシアがキツネの頭をペチンと叩いた。


 「なにすんのさぁ...」


 「それ以上は言ってはいけない気がして...」


 「いいじゃん!おいらと名前同じだし、かっこいいし!! う~~~、仕方ないなぁ。おいらの名前はフォックス!よろしくねぇ~」


 「ど...どうも」


 キツネ、フォックスは前足を俺に差し出した俺は流されるがまま右手を出して握手的なことをした。肉球はいいけど、爪が引っかかる。


 「え~っと、さっきレイ兄ちゃんが何か言ってて...あ!そうそう、レイ兄ちゃんは屋上にいるよ~。そんでさ、一人だけを屋上に通してだってさ」


 どういう意味だ?そのまんまの意味か?誰か一人が先に行って、残りはこのフォックスと戦うって意味?


 「だれが向かうの?私たちで決めればいいの?」


 グレイシアがフォックスに問う。


 「あ!それなんだけどさぁ、えっとちょっと待ってねぇ。あったコレコレ。このサイコロ振って出た目の人が上に行ってもいいってさ~。んで残った人はおいらと遊んでもらうからね~」


 尻尾の中から取り出したサイコロの目を見る、そこには俺の名前、グレイシア、麗沢、零羅、エルメスシィズ、六人の名前があった。


 「そんでシィズちゃんは下にいるからぁ...あ、そうそう、いない人の目が出たら全員で行っていいってさぁ。それでさ、誰が振るのぉ?」


 フォックスは前足の上にサイコロを乗せて差し出している。


 「ちょっと触らして...」


 グレイシアがサイコロを確認する。指ではじいたり振ってみたり、様々だ。


 「うん、特に問題はない。みんなも確認してみて」


 俺も確かめてみた。うん、只のサイコロだ。


 「グレイシア、あんたもしかしてフォックスちゃんにサイコロ振らせる気?」


 グレイシアは無言で頷く、確かに、それが一番後腐れなさそうだしな。それがいいか。


 全員が確認し、フォックスにサイコロを渡す。


 「んお?おいらがふっていいの~?そいじゃ、早速...て~~~い」


 フォックスは思い切りサイコロを上に投げた。しばらく時間が立ち落ちてくる。俺は落ちてくる間に色々な事を考えた。


 出来る事なら、一対一で戦いたい。だけどそれじゃ勝率が低くなる...確実に倒すには、全員で行けるシィズの目が出る事だ。いや待てよ、俺が戦おうが誰が戦おうが、フォックスを倒せば俺たちの勝ちは決まる。奴との戦いは無意味な延長戦だ。時間内にフォックスを倒せれば...時間を稼いで戦えば勝てるんじゃないか? いや!時間切れの勝ちなんてスッキリしない!


 様々な感情が渦巻いていた。そして俺は分からなくなった。俺の目が出る事を望むのか、シィズの目が出てくれることを祈るのか、俺は一体、何がしたいんだっけ...


 サイコロが落ちてきた、サイコロは段差を転がり落ちる。


 「何が出るかな?何がでるかな?」


 フォックスは手拍子を叩きながら目が出るのを待つ。


 「あ!コレもしかしてシィズ?」


 シィズの目が出たかの様に思えた。だが、サイコロはもう一回転がってしまったのだ。出た目は...


 「あれ?えっと...さか  さくら...なんて読むのコレ?」


 俺だ。俺の名前を一番上に止まった。


 「坂神 桜蘭。フルネームは坂神 レイノルド 桜蘭ッス。俺の方こそ自己紹介してなかったッスね」


 「あ...ごめんね~。また一人でいっぱい喋っちゃって...自己紹介出来なかったんだよね。はんせ~、レイ兄ちゃんにも前に言われたばかりだったんだけどね~」


 フォックスは、喋りすぎた!と口を押えてショボンとうつむいた。だがすぐにケロッと元の感じに戻った。


 「んじゃ、桜蘭兄ちゃんはこっちね~。後のみんなはここに残ってね。全力で遊んでいいらしいからさ~。そんで最後にここのルールはぁ...えっとコレコレ。メモっといてよかったぁ。おいらは背中にこの変な装置を着ける。みんなはこれを壊しにくるから、おいらはそれを迎え撃てばいいんだね。そこに特に制限は要らない。って事でいいんだよね?」


 「まぁ...そうなるね」


 「んじゃさ、早く始めようよ。時間は朝の八時までって言われてるんだ。はやくやろ~」


 フォックスは、階段の下に降り、下でぴょんぴょん跳ねてる。まるでここには本当に遊びに来たかのようだ。


 もしかしたら、誰もコイツをリーダーだとは思わなかったのはみんなこの性格のフォックスしか知らないから何じゃないか?無邪気な奴ほど恐ろしいって言うからな。さてと、俺は上に行くとするか。


 「んじゃ、行ってくるッス」


 「三上殿との一対一、無理をしてはいけないでござるよ」


 「そうそう、フォックスを早く倒して、出来るだけ素早く駆けつけるようにするから、無茶な行動だけはしないでよ!」


 「あぁ...分かってるッス。全員が生き残って勝つ。それこそが完全勝利ッスから」


 俺はやはり、分からない。冷静な俺はみんなが駆け付けるまで時間を稼ぎ、できる限り三上の体力を削れば勝てるはずだ。こっちには既に覚醒者がいる。そう考えている裏で俺は、みんなが駆け付ける前にこの手で三上を倒したい。超えたいと願っている。俺はまだ覚醒していない。三上を超える事が覚醒に繋がると感じている。その感情が俺を理解という言葉から遠ざかっていく。


 「じゃあ...みんなも、気を付けるッスよ!!」


 俺はそう言って立ち上がり、後ろに向かって走った。


 この先の出口には飾り気のない、屋上に続く階段があった。

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