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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 82話 一人目の覚醒者

 「覚醒...」


 俺はその単語をつぶやいた。零羅は遂に覚醒した。今の零羅の攻撃がその証拠だ。


 「まずはおめでとうだね。カミワズミ レイラさん。気付けなきゃ即効でやられてたところだ。だが、俺は王を超えた者。本気の本気でいく!」


 ディエゴの目は真剣そのものだ。零羅もゆっくりと構える。


 「先手...」


 先に攻撃を仕掛けたのはディエゴだ。凄まじいスピードで零羅に攻撃を仕掛ける。対する零羅は全て紙一重でかわす。そしてディエゴの剣を弾き、今度は零羅が猛攻を仕掛けた。


 そしてしばらくの打ち合いの末、鍔迫り合いのような状態になった。


 「ほんとに子供の動きじゃないな。というか人間を相手にしているっていう考えをやめた方が良いかもね」


 「そうですよ、あなたが相手にしているのは、人間を超えてしまった者なんですから」


 「だが、君の弱点は知っている。君の二重人格をね...」


 零羅を弾き、今までにない速度で猛攻を仕掛けた。


 「ん!」


 零羅はほぼ全て避けたが、一撃だけ右の肩をかすめた。


 「聞いた話、カミワズミ レイラさん。君は自分の血を見ると見境なく攻撃しだすらしいね。そしてその一撃はあらゆるものを粉砕する。だが、その攻撃は直線的であり、隙を突く事が出来れば、攻略は容易になるってさ」


 零羅はしばらく立ち尽くしていた。そして一気に攻め込んだ。


 「予想通りだ!!」


 ディエゴは、零羅の攻撃に合わせて攻撃した。零羅から血がしたたり落ちた。だが、ディエゴの表情は陰った。


 「まさか...そんな」


 零羅は剣を掴んでいた。そして零羅は口を開いた。


 「二重人格?ずいぶんと古い情報ですね。わたくしはもうそんな自分なんてとっくに乗り越えてますよ。だから...」


 零羅は深呼吸してディエゴの剣を叩いた。


 『バキィン!!』

 

 子気味の良い音をたて、剣が砕けた。この攻撃は...暴走した零羅の...


 「この技も、出来るのですよ」


 ディエゴは一気に後ろに下がり間合いをとる。


 「しまったなぁ。剣を壊されるとは...ちょっとふざけすぎたかな?だが、俺も負けられないからね」

 

 ディエゴは折れた剣を逆手に持ち、正面に構える、刀身はまだわずかに残っている。


 「負けられないのはわたくしたちも同じです。だから、終わらせます...」


 零羅は構える動作の一瞬俺を見た。


 


 そして二人同時に攻撃を仕掛けた。零羅は拳を突き出し、ディエゴ逆手で剣を横に振った。二人の攻撃はぶつかり合い、衝撃波が生まれた。それでもなお二人は手を緩めない。


 「ぬぅううああああああああああ!!」


 ディエゴは全身の力を振り絞り、零羅の攻撃を捌いた。


 「勝った!カミワズミ レイラさん!」


 「勝ったのは...俺たちッス」


 俺は、ディエゴの横に立っていた。そして引き金を引いた。


 「しまっ!」


 もう遅い、俺は風の魔法を放った。ディエゴは吹き飛ばされ、そして横たわった。


 「しまったな...俺が忠告した事を逆にやられてしまったか...」


 「そうッスよ。よそ見はいけないッス」


 「にしても...いい視力してるねぇ。バレないように装置を隠してたんだが、見つけたのか...」


 「あぁ、俺、目だけはいいッスから」


 「ハハハ、完敗だ。行きな。ってあれ?」


 突如、ディエゴは駅にある時計を見た。


 「深夜、一時過ぎ?もう終電は出たよね」


 俺はこの言葉の意味を理解するのに、しばらく時間がかかった。


 「ここから中央までは車でかっ飛ばしても七時間くらいかかる。始発は午前六時...これって、どう頑張っても中央に着くには朝の八時過ぎるって事よねぇ」


 シィズの放った言葉で、俺は全てを理解できた。つまり、時間切れだ。


 「え゛!?絶対に無理なんスか!?」


 「無理だな...でも原爆は...」


 「ありますよ」


 零羅は口を挟んだ。


 「確かに、全国の原子力発電所で製造しているってのは確認してませんが。しかし、原子力発電所内に通常の爆弾があるのは確かみたいです。もし、その全てが爆発すれば大量の放射能が出ます。世界が炎に包まれなくても、この世界は死の世界になるのは間違いないです」


 零羅は冷静に説明した。


 「じゃあどうするんスか!零羅、さっきから余裕ッスけど、何か方法があるんスか?」


 「はい、まだのぞみは残ってますから」


 「のぞみは新幹線じゃねぇか!」


 「ちがいますよぅ!先ほど三上さんから聞いたのですが、もし終電に遅れたのなら、今日はどうやら高速試験車が走るらしいんです。それを使えば中央まで二時間ちょとで着けるみたいなんですぅ!」


 な...成程ねぇ。俺はどうやらてんぱって正常に脳が働いていなかったみたいだ。


 「それで、その車両がここの駅を出るのが一時二十分です...」


 「後、五分だね」


 グレイシアは時計を眺めて呟いた。


 「あ...で...ですから、急ぎましょう!!」


 零羅は駅に向かって全力で走り出した。足早!!っていうかそこまでドヤ顔しておいて現在の時間把握してなかったんかい!!


 俺たちは、ディエゴをその場に置いて、駅に向かった。


 ・


 ・


 「すみませーーーーん!!」


 零羅はホームまで一気に駆け上り、停車していた普通とは違う感じの列車の前にいた作業員らしき人に話しかけていた。俺がホームに着くころにはどうやら話し合いは終わっていたようだ。


 零羅がぴょんぴょん跳ねながら手招きしている。俺たちはその列車に乗り込んだ。


 あとは中央地区だ。待ってろよ三上、俺は絶対にあんたと決着をつける。時間が無くても、絶対に全てクリアしてお前の野望を暴いてやる!!


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 桜蘭たちが飛び出すように駅に向かったその後、ディエゴはしばらく横になっていた。


 「これで覚醒者は一人...そして三上は生きていた。あいつは残りの二人も覚醒まで強引に導く気か?ふ...フハハハハ、フハハハハハハハハ!!面白くなってきたなぁ!次はどう出るんだ?三上 礼!お前の最後を見る事は出来ないが、お前のやる事、楽しみに待ってるよ!!」


 ディエゴはしばらく大笑いしていた。そして、立ち上がった。その表情は先ほどまでの剣士の顔ではない、野望に満ち溢れたどす黒い顔をしていた。


 

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