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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 75話 巨大橋の決戦 その3

 「あなたが前にわたしにした質問、その答えが出たからです」


 「成程ね...君の中の平和の意味、それがでたのかい?」


 全員、臨戦態勢であるものの、全員零羅と三上の会話を聞いている。


 「そうです。わたしは今まで平和とは、ただ争いや戦いのない事だと思っていました。しかし、みなさんと旅をして分かったことがあります。戦いは一種の平和の道である事なのだと知りました。今まで出会ったリーダーたちは全員、敵と呼べる存在じゃありませんでした。全員、それぞれ信念を持っています。その信念を貫くために、私たちと戦いました。みんな自分が望むそれぞれの平和を実現したいだけなのです。一人一人、望む平和の形は違ったのです。だからこそ悲しいんです。あなたは、その全ての平和を奪おうとしている。あなたには成し遂げたい平和はないのですか?あなたに、貫く信念はあるのですか!?」


 零羅の言葉に、三上は少し唖然としていた。だが、三上の顔は今までにない程いい笑顔になった。


 「いい答えだよ!!そうさ!一人一人の掲げる平和は違う!お互いが貫きたい信念、それはいつしか争いに発展する。全く意味のない、自己満足すらない闘い。それを永遠に繰り広げるのが僕たち人間なのさ!今までのリーダーたちもそうだよ!みんな僕に味方している訳じゃない、それぞれが掲げる信念があったから君たちと戦ったんだ!そして、僕にも貫きたい信念がある。だから君たちと戦うのさ...全ては、平和の為にね」


 三上は剣を構えた。顔の横に剣を上に向ける構え、八相の構えだったか?をしている。


 「零羅さん、君の気持ちはよく分かったよ。だったら君はどうする?君は、信念を貫き通せるのか?自分を...超えれるのか?」


 「超えて見せます。あなたを踏み台にしてでも!」


 零羅はまっすぐ三上に走り、そのまま攻撃に移った。



 


 正直言って、今俺はどうすることも出来ない。この二人の戦いは激しすぎる。零羅の炎神を使った手わざに足わざで攻撃、それを三上は捌き反撃。互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げている。下手に手出ししようものなら、俺が零羅の足を引っ張りそうだ。


 「うんうん、いいね。最初に会った時とはまるで別人だよ。だけどさ、人間はそう簡単に変われない。変われてたら、僕は敗北してるね!」


 ほんの一瞬の隙を突き、三上の振った剣は零羅の顔をかすめた。いや...わざとかすめさせたのか。


 「人間の掲げる信念は、いともたやすく壊れる。君の今の心境を言ってあげようか?君はきっとこう考えている。自分の満足できる死を与える。そのほかの事なんてどうでもいいってさ」


 「そう...かも。どうでも、いい。わたしがのぞむのは、し だけ?」


 ん?疑問形?


 「あなたを...殺す」


 やはり、まだ駄目か。


 「まずいッスね。麗沢!援護頼むッス!」


 「了解でござる!」


 「三上、こっからは俺たちも加勢するッスよ。あんた、さっきから信念がうんたらかんたら言ってたけどさ、正直言うと俺はそんなの特にないんスよ。俺が今思ってる事は、あんたはムカつく。だからぶっ倒す。それだけだ」


 「ハハハ、それはそれで面白い答えだね。確かに、人間が戦う本質はただの闘争心だけなのかもね!」


 既に零羅は、攻撃に移っていた。無言のまま、三上だけを標的に捉えている。俺も、その後を行く。


 「おっとぉ!?まさかの結構いいコンビネーション?」


 いいぞ、さすがの三上でもこの状態の零羅の攻撃は防ぎきれない。それは前に見て理解している。零羅の攻撃は避ける。俺の攻撃は捌く。反撃の隙を与えるな。そこへ...


 「ぬぅおおお!」


 麗沢が突っ込む。


 「くっ!」


 三上の表情が初めて陰った。つまりは少し追い込まれ始めたという事。


 「エルメス!」


 更にエルメスもタイミングを合わせ、加勢した。四人からの一斉攻撃、いいぞ。やれる!


 「アハ、アハハ アッハッハッハ!!」


 俺たちの攻撃を辛うじて避けているこの状況なのに、三上は突然大爆笑した。


 「何がおかしいんスか!?」


 「いや!うれしいんだよ!僕はてっきり零羅さんのこの状態は危険だから気絶させるなりなんなりの手段に出ると思ってたのに、まさかのこの暴走を利用してくるなんてね。よほど信頼関係がないと出来ないよ」


 信頼...そうだ。俺はみんなを信じてる。あの手紙言葉の意味は分からないけど、俺は零羅を麗沢を、みんなを信じれる。向こうも信頼してくれてるから、俺たちはこうして息を合わせて戦えてるんだ。


 零羅もただ暴走しているんじゃない。どんどん、俺たちに合わせて動こうとしている。


 「これが人間だよ!!誰かを支え、誰かに支えられながら成長する!それこそが人間なんス!てめぇみたいな一人ぼっちの化け物には、永遠に理解できない事ッスよ!!」


 「確かに、一人の僕には出来ない強さだよ...だけどさ!!」


 俺たちは、みんなして一斉に吹っ飛ばされた。今の攻撃、まさか...最初の!


 「一人だからこそ、到達した力もあるんだよ」


 麗沢が最初に立ち上がり、三上に立ち向かった。


 「いや待て!麗沢!奴に近づくな!」


 「ぬ?」


 麗沢は、三上に攻撃する前にまた吹っ飛んだ。


 「何事でござるか、今の攻撃...そう言えば、最初に会った時も使っていた。目に見えない何かに攻撃されるような感覚」


 そうだ、もう一人誰かがいるみたいなあの攻撃。こいつにはまだ、これが残されていた...


 「どうする?うかつに近づくとまた飛ばされるよ?どう攻撃に移るのかな?」


 俺は立ち上がった。どうするも何も、攻撃しなきゃ倒せないしな。


 何かがあそこにいるのなら、見えるはずだ。足跡でも何でも...動くのなら、音も出る...そうだ


 「麗沢!音で何かいるか判断出来るッスか?」

 

 「お?あ!そうでござるな!」


 よし、行くぞ!


 俺は三上に向かって走り出した。


 「うおおおおおおお!!!」


 よく見ろ...麗沢を、信じろ。俺はそのまま真っ直ぐ突っ走った。が、


 「ぐあ!!」


 目の前で急に何かに押さえつけられ地面に倒れた。


 「なんだよ...これ、見えないし、更に聞こえないのか...」


 動けない。何かが俺を押さえている。だけど上には何もない。


 「これを理解できるのはさすがに難しいよね。僕もしばらくは完全に理解できなかったんだもん。これは音もなければ目に見えない。だけど、確かに存在する僕の力。多分覚醒の賜物かな?」


 三上は俺の前に立った。


 「残念だけど、まだ君たちでは僕には勝てない。やはり、覚醒しなきゃね。君たちに出来る選択しは二つだよ。ここで死んでゲームオーバーになるか。それとも一旦先に進んで行くか。だけど、再びここに戻る時には期日はどう頑張っても過ぎてしまう。どちらにせよ、ゲームオーバーだよ」


 クソ!どうにか勝つ方法はないのか!


 「くっそ...たれ...!」


 俺は三上を睨んだ。憎しみと悔しさのせいで、上手く声が出ない。悔しい、けど、どうにもできない。みんな倒れている。グレイシアたちとは分断されている。どうすればいいんだ!!


 「!?」


 突然三上は驚いた表情になり、思わず手が出たと言わんばかりに、三上は剣を前に突き出した。


 「...これなら、いけるんですね」


 この声、零羅だ。


 目の前に零羅がいる。そして、零羅の手には炎神を着けておらずそのまま右手に三上の剣が突き刺ささりながら、三上の腕を抱え動けないようにしている。


 「まさか、乗り越えた?」


 「そうですね...皆さんのおかげです。そして、あなたのおかげでもあります」


 いつもの喋り方、だけど、手からは血がダラダラ流れている。


 「この状態、これならあなたの見えない攻撃でも吹き飛ばされずに済みそうです」


 「へぇ、この暴走をこのタイミングで抑えることに成功したのか。とりあえずおめでとう...だけどさ、確かにこの状態だと君を吹き飛ばしても僕も飛んでっちゃうけど、どうするつもり?」


 零羅はしばらく黙った。そして俺たちににっこりと笑いかけた。


 「今まで、ありがとうございました」


 まさか、俺は零羅が何をしようとしたのか、考えが読めた。


 「駄目だ!!零羅!!」「これなら!絶対に倒せますよね!!」


 俺は立ち上った。だが、間に合わなかった。零羅は三上の腕を巻き込みながら橋の壁を越えた。零羅は、三上もろとも、この橋から落ちる気だ。


 「んな!?」


 三上も反応が遅れた。そして、そのまま橋の外に体が投げ出された。俺は走った、まだ間に合うと願った。そして手を出した。だが、零羅は、俺の手を払いのけた。


 「ごめんなさい、みなさん。わたくしは、ここでお別れです。ごめんなさい」


 零羅は、落ちながら謝っていた。このたった一秒にも満たない出来事が凄まじく長く感じた。そして俺は叫んでいた。


 「零羅ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 なんでだよ、せっかく暴走する自分を乗り越えられたのに、こんな...


 後ろから、グレイシアが走って来た。どうやら氷の魔法で橋を作っていたようだ。だが、さすがのグレイシアでも五十メートルも氷で橋を架けるのには時間がかかったようだ。


 「そんな...」


 グレイシアが呟き、目を見開いて橋の下を見ている。下は雲で既に何も見えない。


 みんな、その場に立ち尽くしていた。


 「行かなきゃ...」


 エルメスが呟いた。


 「探さなきゃ!今すぐ!!」


 「......ダメ」


 グレイシアはエルメスを止めた。


 「なんで!?もしかしたらこの下はすぐ地面の可能性があるかもしれないじゃない!」


 「ここが...一番高い所だから...」


 グレイシアが指さした方向には、『地上までの距離、二千三百八十メートル』と書かれた標識がたっている。つまり、零羅たちはこの高さを落ちたんだ。


 「くっ...レイラちゃん。なんでそんな馬鹿な事をしたの!」


 エルメスは地面を殴っている。


 「私たちに出来ることは、何もないの!?」


 「いや...一つだけあるッス」


 俺は、今やるべきことを考えていた。


 「先に進む、それしかないッス。三上を倒せていても、この世界の危機は変わらない。零羅が俺たちにこの世界の平和を託したのなら、答えるのが筋ッス」


 「......くそぉ...絶対に、誰も死なせないって決めたのに...行くしかないなんて...」


 エルメスは、姿勢を整え敬礼した。俺たちも続き敬礼した。


 




 神和住 零羅。この世界で平和を願い戦った彼女の雄姿は、絶対に忘れない。


 今日は四月二十五日、午前八時十五分 ゲーム終了まで約四十八時間。


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