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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 72話 昨日の敵は今日の友 

 今は夕方前、遠くに集落が見えてきた。というのも、青薔薇との戦いで、道が氷で塞がってしまったからだ。それで道を作るのに更に時間がかかった。本来ならもうちょっと早く着いていたはずだったんだが...


 「ようやく見えてきたッスね」


 「そうだねぇ」


 エルメスが適当に返した。


 「そういえば前々からエルメスに聞こうと思ってたんスけど...」


 俺が質問しようと思ったら、エルメスは急に体をビクッとさせた。


 「えっ!?ななな...何のこと?私、変なこと言ってた?」

 

 何のことはこっちのセリフだ。なんかしたっけ?じゃないや。


 「いや、何も言ってないッスけど...あの青薔薇の戦いの時、エルメスの手元若干光ってたッスけど、あれって光の魔法なんスか?」


 「あ...それの事ね...」


 どれの事だと思ったんだ?


 「あれは私の魔法、アダムスの一族は回復の魔法が使えるって事でナナ族の中の一つの血統になるんだけど、私たちの血統だけが使える光の魔法の応用の魔法があるんだ。傷を治すんじゃなくて、体中の細胞を活性化させて一時的に身体能力を上げる魔法。それを使ってたんだ。だけどリスクもあってな、使った後は体中が悲鳴を上げるんだ。だからあの時、シィズは私の治療を同時にやってたんだよね」


 「あ~。そういう事だったんスね」


 あの時の疑問がようやく分かったよ。


 「ついでに言うと、アオシラでサクラの頭にボールぶつけた時もちょっと使ってた」


 「あ...そうですか」


 成程、だからボールを頭に喰らって気絶したのか...なんでそんな時に使ってんだよ...



 

 疑問が晴れたところで、タクシーは集落に到着した。のどかな集落だ。見た感じ、羊がいっぱいいるから羊毛で持ってる町なのかな。


 「...で、エンリコってどんな奴なんスか?」


 俺はシィズに尋ねた。また厄介そうなやつなんだろうなぁ。


 「あ~、あの子ね。あの子はね...」


 シィズが話そうとした時だった。俺は背後から異様な敵意的なモノを感じて身構えた。って『子』?


 最近やたらと強い奴に当たったから、今度も相当な手練れの奴と考えていただが、俺が振り返った時、そこにいたのは、零羅よりちょっと大きい位の少年だった。ものすごい形相で俺たちを睨んでいる。俺この子になんかしたっけ?


 「どこにやった...」


 少年は、俺にそう尋ねた。そして俺は何の事か分からないから知らないと答えようとしたら、その前に少年はそばに立てかけてあった、謎の大鎌を持ちいきなり切りかかって来た。


 「うをぉっ!!」


 俺はビックリしてギリギリで避けた。あぶねぇ、にしても鎌って...こえぇ~よ。


 「どこにやったって聞いてんだ!!」


 少年はまだ訳の分からない事を叫びながら俺に襲い掛かって来た。


 「え!?ちょ、まっ!いったい何の事ッスか!?」


 俺は攻撃をかわしながら受け答える。我ながら思うのは、しっかりと見切って避けれるようになったんだなぁ。俺すげぇ。


 「とぼけんな!お前たちはあってるはずだろ!?ランディあにぃに!!兄ぃはどこに行ったんだよ!」


 ランディ?ランディって確か、インダストリベルトで会った...


 「ちょ、ランディは知ってるッスけど、どこに行ったかなんて知らないッスよ!?確か、実家に帰るって言ってたんスから!」


 確かにそう言ってたはず。


 「え?...って嘘言ってじゃねぇ!!だったら何で帰ってこないんだよ!お前たちが殺したんだろ!!ランディ兄ぃのかたきめ!!」


 は?全然話が見えてこない。ランディも実家はここにあるのか?にしても帰ってない?仕方ない、反撃しよう。もうちょっと落ち着いて話し合おう。


 俺は隙を見て、ブレードを取り付けた。そして少年の攻撃に合わせて反撃に転じようと動いた時だった。


 「やめろ!エンリコ!!」


 遠くから怒鳴り声が聞こえた。俺も少年もビクッと肩を上げて動きを止めた。


 「エンリコ...この人たちは敵ではないよ」


 怒鳴った人物は、杖をついた老人だった。老人は少し険しい顔をしていたが、その後ニッコリ笑って優しい声で少年をなだめた。ってエンリコ?


 「だけどじいちゃん。こいつらはじいちゃんの敵でしょ?こいつらがこの世界に来なきゃじいちゃんはこんなところでみじめに生活する必要なかったんだよ?おれ決めたんだ。じいちゃんは正しいって照明するんだ!」


 「こら!前にも言っただろう、私はこのままでいいのだと、罪があるのは私の方だ。お前は、私の罪をかぶる必要なんかない。その事はもういいんだ」


 老人はポカンと少年の頭を小突いた。


 「済まなかったね。この子は私の孫でエンリコ アザミといいます。そして私はアンドリュー アザミです。異世界の勇者の方々、遠路はるばるこの地までよくいらしました...そして、お久しぶりですね、グレイシア様」


 老人はにっこりとあいさつをした。俺もちゃんと返した。


 「実際に合うのは、二十年振り。元気でやられているようで何よりです。それと私は様呼びは好きじゃない、普通に呼んでください」


 グレイシアとこのアンドリューって人知り合いなのかな。けどなんか、少し互いに緊張してる気もするけど。


 「申し訳ございません。そしてさらにあなたに会ったら直接言おうと思っていたことがあるのです。あの時は本当に済まない事をした。許されるつもりはございませんが、一言、あなたに謝りたかったのです」


 「あの時の事、私も誰も怒ってない。あなたが私を殺そうとしたのは町の安全を守る為に取ったこと。あの時の私は危険な存在だった。あなたは正しかった。だから、謝らないで」


 殺されかけたって、そういえば前に聞いたっけ、三上と出会った時の話で...この人がそうなのか。


 「そうは言っても、殺人未遂に違いはありませんよ。ここで暮らしているのもすごくありがたい事だと感じています......話は変わりますが、エンリコの話、やはりランディの事はご存知ないのですよね」


 アンドリューは真面目な表情になった。俺も気を引き締めた。ランディが戻らなかった。これが意味する事は何なのか...


 「はい、彼は確かに故郷に帰ると言ってたッス」


 俺が答えた。アンドリューも隣のエンリコも考え込んだ。


 「そうですか...あ、そうです。エンリコ、装置を出しなさい」


 「...出すの?」


 「あの装置が破壊されなければ彼らは進めない。エンリコ、お前がここの地区のリーダーになったと聞いた時は驚いたよ。だけど、戦わなくていい。私を思ってくれるのはうれしいけど、私はお前を危険な目には合わせたくない。だから出してくれ」


 「...」


 エンリコは渋々リーダーの持ってる装置を取り出した。三上は何を思ってこの子をリーダーにしたんだ?そういえばジョニーも、まるでサムと戦わせるためにあのカードを組んだ感じだ。


 「では」


 俺は、電撃を撃って装置を破壊した。


 「ありがとう、エンリコ。そして皆さんも、残りの地区は後四か所ですよね。お気を付けください。ミカミさんが何を考えているのか、私には到底理解できませんが、あなたたちが先に進むごとに敵はどんどん強くなっていくはずです。全ては平和の為に、私はあなた方を信じます。信じるなんてかつての私には出来なっかったことですね」


 アンドリューは笑った。エンリコも頭を撫でられて照れ笑いしてる。ここでは戦う必要ないんだな。平和だぁ。



 そして、俺たちは集落を後にした。後四か所、気を引き締めて行こう。


 

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