魔鉱と消滅
「まずは一体」
「すごい……、あんなにあっさり……」
エンリのそんな声が聞こえた気がする。
ゴーブリアンの断末魔の声はゴーブリアンの群れに気が付かれたようだ。
「同時に戦えるのは四体が限度だ。それ以外は注意を引いてくれ」
「がんばります」
一体目をあっさり倒した事で、勝機が生まれたとばかりにリックが矢を放っていく。
左肩、右腕、左足と次々に矢は命中していく。しかし、リックの攻撃力では注意を引き付けるだけで精一杯のようだ。
今回はそれでいい。
リックは結局、ゴーブリアン十体全てを一人で引き付けた。俺は背後から確実に急所を攻撃していく。
「十体っていっても、簡単だったな……」
正直、一人で四体と戦っていた時の方が数倍きつかった。
「リック、エンリありがとう」
エンリは何もしていないが……。一人で逃げ出さなかっただけでも俺は嬉しかった。
「さっさと回収して帰りましょう。僕とエンリでやりますので、周辺の警戒をお願いします」
「わかった」
エンリは特に文句も言わずに、手伝ってくれた。
魔鉱が回収されると、ゴーブリアンは消滅していく。なるほど、あれができるようになれば、放置をせずに済むんだな。
「十体をあっさり倒す程の腕前……」
「エンリ、何か言ったか?」
「何でもありません」
エンリは真っ赤な顔でそっぽ向いた。