明滅する矢
「魔物が出たら、僕は援護をしますね」
「よろしく頼む」
俺たちは二人で門の方へ歩いていると、突然エンリに蹴りを食らった。
リックが……。可哀想に。
「ちょっと二人だけでどこに行くのよ! 私にも声をかけなさいよ!」
「ゴーブリアン四体から魔鉱を回収してくるだけだぞ?」
「ゴーブリアン四体ですって?」
反応がいちいち大きいな……。
「ど、どうやって群れのゴーブリアンを倒したのよ!」
エンリがめっちゃ動揺してるんだが……。
「エンリは昨日ゴーブリアン一体にギリギリ勝てたんですよ」
リックが大きな声で教えてくれた。当然エンリの蹴りをもう一発食らうことになる。リックって意外と馬鹿だろ?
「一緒に行くか?」
「え? でも……。あ、当たり前よ!」
女心はよくわからん。
「早速パーティーができたのか? 魔鉱板に亀裂を入れる少年は違うな」
門番のおっちゃんの言葉に、リックとエンリが後ずさる……。
「僕を食べてもおいしくありませんよ?」
「わ、私もよ!」
「俺は人喰いじゃないぞ!」
「「ですよね……」」
門番のおっちゃんのせいで、無駄に恐怖心を植え付けてしまった。まだ若干距離が離れているし……。
俺たちは無言のまま、一キロ以上を南へ進むと。
「リック……逃げるか?」
「もう遅いと思いますよ?」
「私は隠れさせてもらうわ」
エンリは一人でズルくないか?
リックは近くの木に三メートルジャンプをする。
二人とも薄情だな!
俺がさっき倒したゴーブリアン四体を食べるために集まったゴーブリアンが……。
撒き餌をしたと思えばいいのか。
「リック遠距離で注意を引けるか?」
「あまり期待しないで下さいよ」
リックは手を一振りすると、魔鉱具が展開した。
見た目の印象はアーチェリーのような形状をしているが、矢が赤色に明滅している。
リックの放った矢は、見事群れから少し離れたゴーブリアンの右肩を射抜いた。
ゴーブリアンの怒りは他のゴーブリアンの意識を奪うには至らず、単体で近づいてきたところを俺が仕留める。