リックとエンリ
「ここは魔鉱学の町『パルティナ』だ。君は旅の少年のかな? 魔鉱学を学びに来たようには見えないな」
門番のおっちゃんが豪快に笑った。事実だからいいんだけど……。
「俺は旅人だな。町に入るのに審査はあるのか?」
「この魔鉱板に手をかざしてくれれば審査は終わるぞ」
俺はおっちゃんに言われるままに、板(手鏡サイズ)の上に手をかざす。
すると、突然板に亀裂が入った。
俺……超能力に目覚めたか?
「ほぉー、少年の皮をかぶった猛者だったかな?」
今度は、先程の二倍のサイズの魔鉱板が用意された。
「これで何がわかるのか聞いてもいいか?」
「お前は一度も町に出入りしたことがない田舎者か?」
さっき転生したばかりだからな……。
「これはお前の潜在能力を調べる機械だ。ついでに前科も調べられるぞ」
おっちゃんは何か悪さをしていないか調べているんだぞと脅しているようだ。笑っているから全然怖くないが……。
話を鵜呑みにするなら、俺の力は並以上が確定したわけだな。
もう一度手をかざすと、亀裂は入らなかったが板がガタガタ揺れ始めた。
「もういいぞ」
おっちゃんは慌てて俺の手首をつかんで、板から遠ざけた。
「ここにある測定器では調べられなかったな。町に入っていいぞ」
「調べられなかったのにいいのか?」
門番として心配になった。
「お前ほどの潜在能力を持った者は、他にはいないからな。騒ぎを起こしたらすぐにわかるだろ」
他の門番も頷いているから、実際にそうなんだろうな……。
「君の名前は何て言うんだ?」
「俺の名前は……ライトだ」
現実の名前を言おうか悩んだが、やめておいた。ライトの方がかっこいいからな。
本当の名前は『中池 光』だ。
「ライトだな。ようこそ」
モニターで見たときにはドームのような物に覆われていて、よくわからなかったが……。
門をくぐるとそこは異世界でした。最初から異世界だったが……。
男の子が平然と三メートル以上ジャンプをして女の子を追いかけている……。
そうかと思うと、逃げていた女の子の姿が一瞬で消えた。
男の子は必死に消えた女の子の姿を探している。
俺は女の子が消える直前に手首の機械を操作したのを見た。きっとあれが消えたトリックだろう。
そして消えても気配はある。
俺は気配のする方を凝視すると、男の子も俺の視線の先をおった。
「ちょっと! あなたのせいでリックにバレたじゃない」
男の子の名前はリックらしい。
「エンリ、今のはなしにするから、もう一度隠れてよ」
「当たり前よ!」
女の子の名前はエンリらしい。
「ごめんね。気配を感じて気になって見ていただけなんだよ」
初対面でかくれんぼを邪魔したんだから謝るべきだよな……。
「気配を感じた? 冗談よしてよ。これは玩具だけど、最高級品よ! そんな簡単にわかるわけないじゃない」
「疑うなら、もう一度やってみるといいよ」
子供がむきになったら、しつこいからな……。
「言われなくても、やってやるわよ!」