表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/156

13/05/02(1) 新幹線内:今から三人のリア充を始末してこい

 現在は東京に戻る新幹線の中。

 笹塚~幡ヶ谷駅周辺を舞台にしたラノベを読破中。

 随分と庶民的な魔王さまもいたものだと思いつつ、ついつい親近感を抱いてしまう。

 最近は千葉マンセーなラノベも見るけど、やっぱり馴染深いのは東京だよね。


 ──あれ? 姉貴からのコール。


 俺が新幹線の中にいるのは知ってるはずだが。

 よっぽど重要な用件に違いない。

 デッキへ出て電話に出る。

 

「もしもし姉貴?」


〔お前は現在どこにいる〕


「名古屋を過ぎたあたり」


〔今から三人のリア充を始末してこい〕


「はあ?」


 ついにこの姉貴は耳まで悪くなったか。

 「今から」とか。

 名古屋と言ったのが聞こえなかったのか。

 それに始末って、いったい一体何事だ?


〔私を役所に一人置いて、瀬田温泉できゃっきゃうふふしてるリア充どもを始末してこいと言っている〕


 瀬田温泉ってうちの近所の温泉じゃん。


「まず何があったか、わかるように説明しろ」


〔今から画像を送る。さっきシノから送られた写真だ〕


 シノさん?

 

 電話を切った姉貴からメールが届いた。

 添付画像を開く。

 どれどれ……。


 画像には男一人女二人が写っている。

 それも水着姿。


 一人はシノさん。

 オレンジ色のビキニ。

 相変わらずの魔乳だ。

 膨張色だから、さらに大きく見える。


 もう一人は……うわっ! すごくかわいい。


 ツインテールの、いかにも妹を思わせる童顔。

 ピンクでストライプの入ったタンキニ。

 幼児体型っぽいけど、胸も決してぺったんこではない。

 思い切り俺のタイプなんですが。


 こんな女性ばかりなら俺も公安庁を目指したくなってくる。

 姉貴は絶対やめとけと言うけどさ。


 残る一人のみつきさんはどうでもいい。

 男の水着姿なぞ視界に入れたくない。

 ただ二週間前よりは、結構痩せたな。


 姉貴から再び電話が掛かってきた。


〔小町、写真は見たか?〕


「シノさんともう一人映ってるかわいい女性は誰?」


〔旭っていう後輩。お前と同じ年齢だが、今はそんなことどうでもいい〕


「どうでもいいって……」


〔今大事なのは私がどれだけひどい目に合っているかだ〕


「はあ?」


〔こいつら私一人に仕事を押しつけて、全員休暇を取りやがった。おかげで私が現在どれだけ忙しい思いをしているか〕


「それってひどすぎない?」


 それは姉貴が気の毒すぎる。

 そんな事が許されていいの?


〔そう思うだろ? だから現在は、この写真画像をコピー機でめいっぱいに拡大して、こいつらの机に貼り付けてるところだ〕


「あの~、忙しいんだよな?」


〔ああ、忙しいとも〕


「仕事で忙しいんだよな?」


〔誰が仕事で忙しいと言った。こいつらへの嫌がらせで忙しいだけだ〕


 画面の【終了】をタッチ。

 これ以上聞いてられるか。

 公安庁は国民に税金を払い戻せ。


 即座に電話がかかってくる。

 しつこいな。


〔小町、もしもし? いきなり電話切るなんてひどいだろ〕


「要するに暇なんだろ? だからみんな休暇を取って温泉に行ったんだろ? 事情がわかった以上、俺は席に戻ってラノベの続きが読みたいんだが?」


〔小町はラノベの続きとあいつらへの嫌がらせのどっちが大事なんだ?〕


「後者を選ぶ奴がいたら、是非とも顔を拝みたいわ」


〔それでも後者を選ぶのが弟というものだ。美鈴ですら後者を選んだのに〕


 哀れ美鈴。

 カラオケの後遺症はまだ続いていたか。

 すっかり姉貴に洗脳されてしまったらしい。


「で、姉貴は美鈴に何をさせたの?」


〔瀬田温泉に行かせてみつきさんを逆ナンする様に命じた〕


「はああああああああああああああ?」


〔水着を着れば美鈴は見た目貧乳女性。みつきさんはすぐに転ぶだろう。そうすれば三人のリア充GWはジエンドだ〕


 いったい何考えていやがる。


「姉貴は美鈴にみつきさんを盗られてもいいのか?」


〔構わん。美鈴に手ひどく振らせた後で私が口説き落とす。弱っている心に付け入るのは恋愛とスパイ工作の基本だ〕


「姉貴、正気か?」


 それができるくらいなら二九歳処女なわけないのだが。

 口にするだけでもバカとしか思えない。


〔正気だ。その上でみつきさんを傷つけた美鈴は私が始末する〕


「その理不尽ぶりは何だ! 自分でやらせて自分で始末するとか、お前は鬼か!」


〔大人になればよくあることだよ〕


 一回始末されたら人生終わるんだから、決してよくあることじゃないと思う。


「聞きたくないけど聞いてやる。姉貴は俺に何をやらせようというわけ?」


「東京に着き次第、美鈴の逆ナンを手伝え。見た目貧乳女二人なら、みつきさんは間違いなく落ちる。ちゃんと女性用の水着も美鈴に買っておく様に命じてあるから」


 画面の【終了】をタッチ。

 そのまま姉貴の番号を着信拒否。

 ふう……これで大丈夫。


 同じ命令するなら女性二人組のナンパにしてくれ。

 それならまだ命令に従わなくもないのに。

 大体、俺の声がみつきさんにばれていいのか?

 皆実にはバレたとは言え、みつきさんは知らないままなんだから。

 何より俺も美鈴も、みつきさんには顔バレしてるんだぞ?


 ……そんな判断もできない程にむかついているということか。


 姉貴が職場で独りにされてしまったのは間違いないんだよなあ。

 そこにみんなで楽しんでる写真を送ったシノさんは、確かにひどい。

 どんな経緯があったかは知らないけど、きっと洒落とかその程度なんだろう。

 嫌いな人にそんなことはしないだろうし。


 だが、姉貴にその手の冗談は通じない。

 伊達にあの女はぼっちマスターを名乗ってない。

 仲間外れにされたときの姉貴がどれだけ恐ろしいか。


 シノさん、そして他の二人。

 この後どうなっても知らないぞ……。


「キノコ煮込みに秘密のスパイスを」の同一日付とリンクしています。

なお現在、本話に登場した瀬田温泉は閉鎖してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ