13/04/24(5) カラオケボックス&13/05/01 実家:知らなかったんですか? 世の妹は全てワガママなんですよ?
「えっ!」「えっ!」
続いた皆実の台詞は意外な一言だった。
美鈴まで寝転がったまま叫んだくらいに。
「ここ、目を見開いて驚くところじゃないでしょう。お姉さん応援してるなら、むしろ喜ぶところじゃないんですか?」
「いや驚くだろ、あれだけブラコンだのなんだの言っといて」
「だからこそです」
「はあ?」
皆実が「ふう」と溜息をつく。
「うちが甘やかす分、兄ぃの彼女にはちゃんと叱ってもらわないと困ります。それでようやくバランスとれるんですから」
む、むちゃくちゃだ。
「随分と身勝手だな」
「知らなかったんですか? 世の妹は全てワガママなんですよ?」
お願い。
これ以上、俺の妹幻想を突き崩す発言はやめてほしい。
でもまあ……。
「理由は何にせよ、姉貴応援してくれるというなら嬉しいけど」
しかし皆実が首を振る。
「応援するつもりはありません。望むだけ、そして眺めて面白がるだけ」
「望むなら普通は応援するだろ」
「シノさんの邪魔をするという意味では間接的に応援することになりますね。本当だったらうちも応援してあげたい。でも……」
皆実が言葉を溜めた。
「でも?」
「やめときましょう」
「おいっ!」
皆実がニッと笑う。
「だってうちがどう考えてるかなんて関係ないでしょう?」
「そりゃそうだが」
「ただ小町さん。うちが兄ぃに黙っててあげる代わりに条件があります」
「黙っててあげるって……」
「お忘れなく。うちには『二人ともぶち壊して面白がる』という選択もあるんですよ」
こいつだと、本当にそれでも良さそうだな。
「わかった、聞こう」
「大したことじゃありませんよ。今日うちと会ったことを観音さんには黙っててくれればいいです。その時が来るまで」
なんだ、その程度か。
さしあたって今日の話の中に、姉貴に急いで話すべき事項があるわけじゃなし。
「それなら構わないよ。でもその時ってのは?」
「いずれわかりますよ」
「ふーん?」
きっとろくでもない企みを抱いているだろうことは、ニヤついた顔からわかる。
それでもこっちは言うこと聞かなくてはならない立場だしな。
「ただ、観音さんにとって悪い話じゃないはず。その点は安心してもらえれば」
「そうであってくれることを祈るよ」
「じゃあ話はこれで終わりですね。せっかくですし歌っていきましょうか」
「俺は
パス!」
「僕は
※※※
しばらくは何も起こらなかった。
ゴールデンウィーク突入、俺は広島に帰省した。
そして本日五月一日。
ちょうど夕飯を食べ終わったところに、姉貴から怒鳴り声で電話が掛かってきた。
そう、皆実の言った「その時」が来たのだ。
姉貴からは「往来でプライベートを軽々しく話すな!」とこっぴどく怒られた。
バレたことは仕方ないものとして許してくれたけど、仕事上で差し障りがあるからと。
姉貴の言うことは当然なので謝った。
何が起こったか、詳しくは教えてくれなかった。
ただ「皆実にシノがやられた」とだけ。
あの妹はいったい何をしでかしたのか。
そして姉貴は皆実に「兄ぃへの口止め料」としてイチゴ大福一〇個奢らされたと。
あの妹はいったいどれだけイチゴ大福を食べれば気が済むのか。
妹がいなくてよかった、今では心からそう思う。
だけど、でも、それでも……やはり俺は妹への夢を捨てられない。
だって、二次と三次の妹は違うから!
さて、明日は帰京。
早く寝よう。
皆実が何をしたか興味ある方は「キノコ煮込みに秘密のスパイスを」13/05/01(3) 横浜喫煙室を御覧下さい。
また、みつきさんとシノの豆腐居酒屋での状況は13/04/23 横浜オフィスにあります。
知らなくても本作を読み進めるには特に問題ありません。