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13/04/13(1) アンジュ:というか早く脱げ

 本日はアンジュ初出勤。


 「ウェイターなら」と言っていたものの、果たして俺にウェイターが務まるのか。

 正直不安半分でアンジュの入口をくぐる。


「おはようございます」


 マスターがにかっと笑いながら出迎えてくれた。


「おはよう、小町君。今日から頑張ってね」


「はい」


「これ君の制服。早速着替えてくれるかな」


 綺麗に畳まれた制服を渡してくれる。


「俺はどこで着替えれば?」


「ここ」


 マスターが床を指さす。


「いや、ここってどこですか!」


「だから、ここ。店の中」


 ……おい。

 既に店内ではウェイトレス達が開店の準備を始めてるんですが。


「できるわけないでしょう!」


「だって、ここ女子更衣室しかないよ? 他に男性いないし、僕は正社員用の更衣室使ってるし」


 マスターがニヤニヤする。

 心なしか視線に熱を帯びてる気までする。


 ふざけるな!

 そう思ったところに鏡丘さんがやってきた。


「マスター、小町君をいじめちゃだめですって。着替える場所は最初から決まってるくせに意地悪なんかして」


 鏡丘さんが俺に顔を向け、手を取ってきた。


「さあ、小町君。いこ?」


 うわ、どきどきする。

 鏡丘さんの手ってひんやりしてる。

 手から心臓の鼓動って気づかれないよな?


 ──ドアの閉まった部屋の前。


「ここで着替えて」


「はい」


 ドアを開けて中にはい──


「きゃあああああああああああああああああ」


「えっ!? うああああああ! 俺見てません。何も見てません!」


 とっさに鏡丘さんの手を振り解いて顔を隠す。

 一瞬見えた光景、それは着替え中のウェイトレス達だった。


 このいかにもありそうな癖に絶対にありえないテンプレ展開はなんだ!?

 まさかリアルで体験できるなんて。

 ちらっと見えた白の下着に黒のパンスト姿は、しっかり脳裏に焼き付けた。

 やはり色の組合せはこれに限るよな。

 鏡丘さんありがとう。


 ……いや違う。


「鏡丘さん、なんて事してくれるんですか!」


 目を瞑ったまま叫ぶ。

 目を開けたい。

 とても開けたい。

 すごく開けたい。

 心の底から目を見開きたい。

 だけどそれは男として許されない。


「だからここで着替えていいって。ねえ、みんな?」


「そうねえ小町君ならいいか」

「むしろひんむきたいしね」

「小町君脱いでいいよ。いや脱げ」


 では御言葉に甘えて……


「って、そんなことできるわけないでしょうが!」


「別にいいんだよ?」

「顔赤くしちゃって可愛い」

「というか早く脱げ」


「からかわないで下さい! 特に三人目の鏡丘さん、あなたの発言怖いから!」


「そうやってすぐムキになるからいじられるんじゃん。開き直ってガン見しちゃえば、私達の方が照れて逃げるのに」


「それはそれで痴漢扱いして警察に突き出すでしょう」


「当然でしょ。遊ぶのはこれまでにして、と。本当の場所を教えてあげるからおいで」


 そのまま再度手を引っ張られる。


「もう目を開けていいよ?」


「まさか、またどこかの女子更衣室じゃないでしょうね?」


 鏡丘さんの笑い混じりな声が聞こえてくる。


「違う違う、今度は信じてくれていいよ」


 目をあける。

 そこは見慣れた階段の踊り場だった。


「今まで通りリカーのロッカールームを使わせてくれるってさ。いってらっしゃい」


 鏡丘さんが地下に向かう階段を指さす。


 チーフ感謝。


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