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13/01/31(4) 自宅:じゃあそういう事にしておくか

 美鈴の家から帰宅。

 姉貴はまだ帰ってない。この一週間は土日を除いて深夜一時回ってるから当然か。

 土日は他の人が行ってるからやる必要がないとか。


 もう二三時近く。

 さて作るか。本当なら料理する時間でもないんだけど仕方ないな。


 まず、鍋に適量の水を張る。余りは朝食にすればいいから800ccくらいでいいか。

 絞った濡れ布巾で昆布を拭いて鍋にぶち込む。

 次いで、人参と大根の皮をむいて薄く銀杏切りに。

 こんにゃくを熱湯通ししてから薄切りに。

 塩鮭にも熱湯を回し掛けして臭みを抜いてから四つ切りに。

 ネギを刻む。


 ここで放置がてら入浴を済ませる。


 ──料理再開。


 鍋を中火にかける。煮立ってきたら昆布を取り出して一旦火を止める。

 差し水をしてから薄削りの削り節を加える。

 弱火で削り節が浮き上がってきたら火を止め削り節が沈むのを待つ。

 キッチンペーパーでボウルに濾す。

 これでだし汁のできあがりと。

 おばさんからもらってきた酒粕をすり鉢にぶち込む。

 だし汁を少々入れ、こねくり回す。


 つまり俺が作っているのは粕汁。


 姉貴は冷え性、そこにきて連日連夜の屋外仕事。

 帰宅した姉貴の顔はいつも青ざめてしまっている。

 粕汁なら体暖まるし、帰った後の一口に丁度いいかなあと。


 美鈴の家で出された粕汁が美味しくて思いついたのが、我ながら単純。

 だけど案の定質のいい酒粕を使ってたし、頼んだら分けてもらえた。

 しかも他の余ってた材料と一緒に。

 ラッキーとしか言いようがない。


 毘沙門家の粕汁にはジャガイモや油揚げなどが入っていた。

 栄養バランスや味わいを考えた、実際には小町専用粕汁だろう。

 なんだかんだいって、それなりに満腹にもなったし。


 だけどそういった材料は抜いて、より一層カロリーを抑える。

 姉貴が帰宅するのは午前一時前。

 体型を気にする姉貴に夜半のカロリーを摂取させるのは、それこそ親切高じて余計なお世話になりかねない。


 だし汁に酒大さじ2、大根、人参を加えて中火で煮る。

 野菜がしんなりしてきた。

 ここで塩鮭を投入、五分程煮る。

 こんにゃくと酒粕を入れて更に煮る。


 もういいかな?

 酒粕が全体に行き渡ったのを確認してからネギを入れて一混ぜ。

 味見してみる……醤油小さじ1くらいでいいかな。


 よし、完成。


 メモを書いてコタツの上に置く。

 重しには七味唐辛子。


【粕汁あるから勝手に食べろ】


 帰ってきた姉貴に直接差し出すのも気恥ずかしいしな。

 さて寝よう。


                      ※※※

 あー、たっぷり寝た。

 寝過ぎで頭が痛いくらい。

 こんな怠惰な生活を送ってしまっていいものか。

 ま、試験明けだしな。


 ──あれ? 何かいい匂いがする。


 DKへ。

 姉貴がコタツに入ってテレビを見ている。


「小町、おはよう」


「おはよ。今日仕事は?」


「休んだ。粕汁ありがと、美味しかったよ」


「別に姉貴のために作ったんじゃないけどな」


「ふーん、じゃあそういう事にしておくか」


 しておくかって何だよ。

 その変にニヤニヤした顔やめろ。


「でも仕事休んでいいの? みつきさんの監視あるんだろ?」


「ああ、監視については一区切りついた。あとは連絡待ちさ」


「連絡?」


「みつきさんの課に協力してくれる人がいるから」


 それだけ言うと、姉貴が立ち上がった。


「小町も御飯食べるだろ? 昨日の粕汁で雑炊作ったから食べながら話そう」


 ──姉貴が雑炊を差し出してくる。


 しかしなぜか二人分。


「雑炊、食べてなかったの?」


「そろそろ起きると思って待ってた。同じ昼食なら二人で一緒に食べた方が美味しいってものだ」


 この姉貴は、どうしてそんな赤面する台詞をさらりと言えるかね。

 美鈴のおばさんも似たようなことは言ってたけどさ。

 ここまで直球な表現だと、さすがに気恥ずかしいものがある。


「「いただきます」」


 雑炊には溶き卵も入っている。

 うん、美味しい。

 一晩置いたせいか味がまろやかに感じられる。


 テレビの画面にはNHKの連続テレビ小説。

 CNNよりよっぽどマシではあるけど……。


「姉貴、そんなの観る趣味あったっけ?」


 姉貴がちらりとだけ目線を投げてきた。


「毎日職場で流れてるから、つい点けてしまった。習性って恐ろしいな」


 それだけ言うと、再び画面を凝視し始める。

 こういうのも一種の職業病なんだろうか?


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