13/01/01(2) マッシュ:一緒に死にまくりましょうよw
本話と次話はMMO回ですが、用語などわからなければ頭に入れる必要はありません。
適当に読み流して下さい。
マイタケDは墓場を演出したD。その入口は墓石に囲まれている。
墓石にはマイタケが生えている。
マイタケが生えるのは樹木なんだが、どうして石に生えるんだ。
このマイタケは採集して食べる事もできる。
だけどいったい誰が食べるというのか。
至るところに茸の名前が名付けられたマッシュ。
マッシュもマッシュルームの略。
それゆえ他の場所はかわいく感じられるけど、このDだけはリアルでマイタケが嫌いになりそうになる。
いっそベニテングダケダンジョンとかの方がまだよかった。
何が哀しくてファンタジーライフでこんな陰鬱な思いをしないといけない。
難易度だって地獄への直行便と言われてるのに。
ああ、そうだったよな。全部姉貴のせいだよな。
さて、姉貴のフレの振りしてと。
姉貴からは、そうしろとメッセージが入っていた。
元々は「ねぎの姉」という設定だったはずだが、その設定では誰とも会っていない。
フレの振りでいいということだろう。
身内の臭いはできるだけ消したいはずだし。
俺と都、もといまちるださんはダンジョン入口に入る。
差し込む陽の明かりを頼りにし、入場用祭壇行きの階段を下りていく。
ホスト役の二人は既に着いていた。
姉貴そっくりのキャラが「こまっち」に近づいてくる。
この複雑な気分はなんだろう。
せめてそのミニスカニーソはやめて下さい。
姉貴の絶対領域なんか見たくもないです。
〈みつき:あけおめ&おはつ~〉
〈みつき:ねぎのフレなんですって? 今日はよろ~〉
続いて何回も見ているデフォルトキャラ、つまりねぎまぐろが俺達に近づいてくる。
〈ねぎまぐろ:あけおめです♪ 二人とも来てくれてありがとです~〉
「来てくれて」ねえ。
まちるださんも思いは俺と同じだろう。
ついでにこの口調はなんなんだ。
リアル知ってるだけに受け付けなくて吐きそう。
やっぱり、まちるださんも思いは俺と同じだろう。
姉貴、もといねぎまぐろがみつきさんに向き直る。
〈ねぎまぐろ:フレのまちるだとこまちです〉
〈ねぎまぐろ:話した通り初心者と中級者ですから〉
〈ねぎまぐろ:みつきさんもそれを踏まえてお願いしますね〉
〈みつき:ういうい〉
〈こまっち:あけおめ&おはつです~〉
〈こまっち:私下手なので迷惑かけたらごめんなさい〉
〈まちるだ:あけおめ&よろです〉
〈まちるだ:うち全くの初心者なんですけどいいんですか?〉
〈みつき:もちろん〉
〈みつき:俺とねぎは普段から回ってますし〉
〈みつき:そういうのは気にしないで〉
みつきさんは「俺」なのか。
姉貴の外見で「俺」。
わかっちゃいるけど、さらに複雑です。
〈こまっち:マイタケHDは初めてなので足を引っ張らないか不安なんですけど〉
一応念を押しておかないと。これは謙遜じゃない本音の本音。
姉貴は身内だからいいけど、みつきさんは他人なのだから。
〈みつき:大丈夫ですよ〉
〈みつき:新年のお祭りなんですからハプニングあった方が面白いですし〉
〈こまっち:お祭りでハプニングですか……〉
〈みつき:ですです〉
〈みつき:こっちも好きにやりますから〉
〈みつき:一緒に死にまくりましょうよw〉
〈こまっち:そう言ってもらえると気楽です。死にまくりますw〉
社交辞令ではない。
この台詞だけでも本当に気楽になれた。
「一緒に」って言ってもらえたのが嬉しい。
同じ目線でいてくれてる様に感じられるから。
〈まちるだ:うちも死んじゃっていいんですよね?〉
チャットが即座に出現した。
〈ねぎまぐろ:私がフォローするから大丈夫です〉
もう話の展開を読んで準備してたとしか思えない。
みつきさんがまちるださんに優しい言葉を掛けるのを制したのだろう。
まるで「私が」の所に強調点や鉤括弧が見えるかの様。
とても唯一の友達にとる態度じゃない。
ああ、我が姉貴ながら何て見苦しい……。
〈みつき:それじゃ行きましょうか〉
──祭壇に通行証となる鍵形のアイテムを捧げ、ダンジョンに入る。
マイタケDのBGMは墓場をテーマなだけあり、非常におどろおどろしい。
聞いてるだけで気が滅入る。
出てくるMOBもアンデッドばかりでグロテスク。
なんで入口が墓石なのにMOBが洋風なんだ。
一反木綿とか唐傘小僧とかでいいだろう。
その方がずっとかわいいのに。
〈ねぎまぐろ:このBGMを聞くと心休まりますよね〉
〈ねぎまぐろ:眠る前にはいつもかけてますw〉
〈みつき:だよな〉
〈みつき:これを聞かないとマッシュじゃないよなw〉
このコンビはどういう感性をしとるんじゃ……。