12/12/25 自宅:明日から頑張る
大学から帰宅。
さあ、家事をやろう。
今日は絶好の家事日和。
まずは洗濯から。
洗濯機に洗剤を入れてピッピッピッとボタンを押す。
ザーッと洗濯機の注水が始まる音。
これでしばらく放置。
──呼び鈴が鳴る。
バカでかい宅配便が届いた。
差出人は姉貴で受取人は俺。
つまりはクリスマスプレゼント。
これまで毎年くれていたのに昨日はもらえなかった。
だから大学入学と同時に子供扱いも終わったのかなと思ったけど。
どうやら姉貴にとって、まだまだ俺は子供らしい。
だけど、それなら直接渡せばいいじゃんか。
去年までは東京と広島だったから宅配便で当たり前だった。
でも今年は一緒の家に住んでるんだから。
ま……姉貴らしいか。
包装を解いて開けてみる。
中身は姿見鏡。
メッセージカードも添えられていたので読んでみる。
【Happy Merry Xmas!
小町がいつも可愛い自分の姿を眺めていられます様に
BY 腰のくびれが美しい観音姉】
……つまり、お前の腹を引っ込めろということだな。
遠回しに皮肉った言い方が、これまた姉貴らしい。
と言っても安い物じゃないのは一目でわかる。
姉貴はそれだけ本気で俺に痩せてもらいたがっているのだ。
よし。姉の期待に応えるべく決意を紙にしたためよう。
筆ペンを手に取る。
字が乱れない様に慎重に……書き上がった!
鏡の横に貼る。
【明日から頑張る】
箱を処分してから浴室の掃除へ。
浴槽にマジックリンをシュッシュッと吹き掛けてと。
さらにトイレも同じくマジックリン。
時間を置く間にDKの床をクイックルワイパーで掃く。
その後は雑巾で拭き掃除。
家事は同時並行で進めて遊び時間を作らない様にする。
これは基本だ。
そろそろいいかな?
浴室に戻り、洗剤をざっと流す。
洗濯機を確認しに行く。
既に止まっている。
洗濯機から洗濯物を取り出して洗濯かごに。
んっしょ、濡れてるから重い。
両手で持ってベランダへ。
物干し竿の洗濯物用ハンガーを広げる。
まずはバスタオルを外側に。
ついで俺の洗濯物。
その裏側に姉貴の服。
ついで姉貴の下着。
ネットからブラを取り出す。
AAカップにブラなんていらないといつも思うのだが。
続いて姉貴のパンツを取り出す。
シワにならない様にパンパン叩く。
姉貴の下着は白しかない。
それどころかスーツも普段着も白と黒しか持ってない。
この辺り好みというより性格の問題な気がする。
この干し方の順番は東京に来てから姉貴に習った。
「泥棒対策」と「日陰干し」が必要な順だとか。
実家にいた頃は何も考えず干してたのだが。
それだけ東京は都会で広島は田舎ということなのだろう。
世の姉がいない人には姉の下着を干したい願望があるらしい。
しかし現実に姉を持つ身からすると、バカらしくにしか聞こえない。
血を分けた弟にすればブラもパンツもただの物体。
オタの身からしてすら、二次と三次には大きな隔たりがあると思う。
もっとも普段からこれだけいじめられてれば、仮に義理姉フラグが立ったとしても、姉貴の下着に欲情する気はしないけどな。
洗濯物を干し終わった後はトイレへ。
洗剤を流してから、ブラシに力を込めてごしごしと擦る。
仕上げの水を流して終わり。
トイレ掃除は尿石がこびりつかない様、こまめに丁寧にやらないと。
これで今日の家事は完了。
慣れてしまえば何て事はない。
俺が家事をするということは姉貴のマッシュIN時間を増やすということ。
姉の廃人化を押し進める一助となってると思うと、正直複雑な気もしなくはない。
ただですら毎日明け方五時までプレイしてるのに。
でもそれはそれ、これはこれ。
姉貴が気分良く職場から帰ってこれるのならそれでいい。
そう割り切らないとやってられないのもあるが……。
元々姉貴は俺が家事をしようとすまいと全く困らない。
姉貴は俺よりずっと手際よく、かつ丁寧に家事全般をこなすのだから。
基本的に顔と胸と身長と性格以外は完璧超人さん。
俺がいなければいないでテキパキこなして、やっぱり廃人化するだろう。
どうせ結論が変わらないのなら少しでも負担を楽にしてやった方がマシというものだ。
この点において、姉貴は贔屓目抜きで良いお嫁さんになると思う。
でも表向きは家事をできないことにしている。
姉貴唯一のリア友さん曰く「美人な上に家事まで得意となれば、庁内の観音争奪戦が更に激化するもの。今ですらウザがってるのに」。
弟としては信じられないが、姉貴は職場でもモテるらしい。
そして「姉貴はお前らの家事マシーンじゃない!」と叫びたくなった。