13/07/22(1) 横浜日本大通り駅:あれ? デートじゃないんですか~?
横浜は日本大通り駅に到着。
出口を出る。
広がる青空、眩しい陽射し。
露わな肌をチリチリ照らしつけてくる。
もう、すっかり夏だなあ。
信号を渡ると、姉貴の働く横浜法務合同庁舎。
脇には姉貴のロードスターが停められている。
横にはみつきさんのZ32。
なんて省エネには縁遠い人達。
でもそういうところも含めて、案外二人は似合ってるのかもしれない。
ロードスターの鍵を開け、中へ。
もわっとした空気。
キーを差し込み、エンジンを始動。
エアコンを効かせる。
別に車を動かすわけじゃない。
ただ座るだけ。
単にここが待ち合わせ場所だから。
今日は俺が先だったか。
目を瞑り、一息つく。
今朝の姉貴は「マッシュをやっている普段通りの私を見せるんだ」と、いつものTシャツにジャージ姿で出て行った。
バカヤロ様この上ない。
普段通りにって気持ちはわかるけど限度ってものがある。
みつきさんがいかに変態と言えども、ジャージ萌えはさすがにないだろう。
──コンコンと窓をノックする音。
来たか。
エンジンを止め、ゆっくりとドアを開ける。
そして車外へ。
「こんにちは~。お待たせです~」
「こんちわ」
「職場の二人を外から眺める私達~。中の二人は何も知りません~」
「姉貴も俺がこっそり車の中にいようとは、きっと夢にも思わない」
「うんうん。何だか背徳的で素敵です~」
「じゃあ俺達も行こうか」
「行きましょう~」
そう、今日は旭さんと久々の待ち合わせ。
これから旭さんに関内周辺を案内してもらうのだ。
旭さんとの連絡は姉貴の人事の一件が片付くまで差し控えていたが、金曜の晩に旭さんの方から「会えませんか~」と電話が入った。
俺に何か渡したい物があるとの事。
もちろん喜んで承諾した。
むしろ飢えた犬がごとく飛びついた。
本日、当初はドライブに行く予定だった。
しかし、気づくと姉貴に先に乗って行かれてた。
これまで日直の時は電車で出かけてたから油断していた。
仕方ないので旭さんに連絡したところ、本庁と違って横浜は割とその辺り自由だからと教えられた。
その上で、「いっそ私達も関内に行っちゃいましょう~」と提案されたのだ。
旭さんが関内~石川町エリアを案内してくれるとのこと。
考えてみたら横浜はあんまり知らない。
大学の集まりでも買物でも東京方面ばかりだから、ほとんど行くことないし。
近いようで遠い、それが横浜。
旭さんや姉貴の日常を覗いてみたいのもあり、二つ返事でオッケーした。
「でもいいの? せっかくの休みなのにわざわざ職場の周辺って」
「働くのとデートで来るのとはまた違うかなあって~」
「デート?」
つい問い返してしまった。
「あれ? デートじゃないんですか~? 私はそうだと思ってましたけど~?」
旭さんがニヤニヤしながら返してくる。
「うん、デートだよね!」
力一杯に答える。
例え自分ではそうだと思っていても。
もしかしたら俺の思いこみかもしれないし。
だけど旭さんの口から、今はっきり「デート」って言われた。
ああ、心が弾んでくるなあ。
いよいよ最終章です
最終章全体が「キノコ煮込みに秘密のスパイスを」最終話と対応しています