12/10/07 自宅:1000ならねぎまぐろBAN
起きてリビングへ行くと、姉貴が頭を抱えていた。
髪がだらんと垂れ下がり、まるでサダコだ。
「姉貴、おはよ」
「おはよ……」
いったいどうしたんだ?
「フリフリミニミニなアイテムありがと」
「ああ……」
ホントにいったいどうしたんだ?
優勝した昨日の今日。
てっきり浮かれまくってるものと思ったんだが。
横にはいつものブラックコーヒー。
具合が悪いならそんなもの飲まないだろうしな。
ん? 姉貴の指が動く。
髪の毛に隠れて見えなかったけど……タブレット?
「何見てんの?」
「あっ、こら!」
伸ばしてきた姉貴の手を払い落とす。
どれどれ──って!
【マッシュ晒しスレ 255
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73 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:43:14
ねぎまぐろチート乙
74 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:52:45
ツール使って優勝して嬉しい? 嬉しい? 嬉しい? 氏ね!
75 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:53:19
これって規約違反なんじゃね? 運営何してんだよ
76 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:54:19
>>75
既に通報した
俺、こないだねぎまぐろにアイテム詐欺られたし、それも合わせて
77 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:56:34
>>76
ひでえ チートだけじゃなく詐欺師かよ
78 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:57:43
サイアクだな
79 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 00:58:44
ねぎまぐろって直結厨だろ?
女と見ればメッセ入れまくるってギルマス泣いてたわ
】
……匿名掲示板の「晒しスレ」じゃないか。
晒しスレはムカつくプレイヤーを晒す場所。
俺も匿名掲示板を見なくはないがアニメスレばかり。
正直言って詳しくは知らない。
しかし何なんだ。
この物凄い勢いは。
終わりまでいってみよう。
【
997 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 06:59:44
追放になったみたいだぞ
998 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 07:00:45
お、頭の上のギルドマークなくなってんじゃんw
999 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 07:01:45
メシウマwww
1000:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/10/07(日) 07:02:45
1000ならねぎまぐろBAN
1001 1001 [] Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
】
ひどい……。
あっ! タブレットを奪われる。
そして再び食い入る様に画面を見つめ始めた。
「姉貴、もう見るな!」
「見ずにいられないんだよ!」
姉貴はタブレットを抱え込むようにしゃがみこんだ。
これじゃもう奪えない。
「姉貴──」
ツールなんて使ってないんだろ?
そう言いかけて思い止まる。
こんなこと聞いちゃいけない。
確かにツール無しで優勝なんて信じがたい。
だけど姉貴が不正ツールなんて絶対に使うわけない。
ここはアタマから信じてあげないとダメだ。
「──ギルドも?」
「そこに書いてある通りだ。さっきインしたらギルマスから『ねぎちゃん、悪いけど退会して』って言われた」
「庇ってくれないのかよ! そのためのギルドじゃないのかよ!」
大体、スレに書いてあった「直結」。
これはゲーム内だけでなくリアルでも会って仲良くなろうという意味。
さらに下世話な言葉で言えば「一発」目当てなのだが……。
姉貴がリアルで友達なり恋人作れるくらいなら、最初からマッシュを勧めるか。
100%冤罪じゃないか。
姉貴がぼそっと呟く。
「『疑い掛けられること自体がギルドにとって罪なんだ』って。そんな組織の論理を持ち出されたら何も言い返せない……」
「ふざけるな!」
「私だって役所で部下や後輩にそう指導しているもの……」
ゲームと役所を一緒にすることはないだろ。
どこまで生真面目なんだ。
ギルマスの行動はわからなくもない。
やっぱり俺だって、晒しスレにあがるプレイヤーとは関わりたくない。
面倒くさそうだしトラブルに巻き込まれそうだし。
俺のフレ達だってそうだ。
だからギルドがそうしたプレイヤーを追い出すのは、別にここに限った話ではない。
しかも直結はまだしもチートについては、そう思われても仕方ないし。
それでもムカつくけどな!
だからといって、どう言葉を掛ければいいのか……。
姉貴がぼそぼそ呟き始める。
「私も妬まれるのや嫉まれるのは慣れているが……こんないっぱい負の感情を突きつけられると……」
「だから、もう見るな!」
「すまん。一人にしてくれ……」
姉貴は立ち上がり、ゆらゆらと自分の部屋に戻っていった。
俺はいったい何をしてあげればいいんだ……。