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13/06/01(10) 秋葉原某コスプレ居酒屋:女子高生はおろか幼女はいません

「はあはあ、酷い目に遭いましたね。胃の中の物が全て逆流しました」


「でもこれは話のネタに使えるぞ。CIAの連中に勧めてみよう。味覚のないアイツらなら、きっと耐えられるに違いない」


 二人が戻ってきた。

 CIAに食わせる前に、まずは二人が目の前の物体なんとかしてくれないか?

 悪臭放ってて耐えられないんだが。


 そんな二人をよそに、旭さんは店内をきょろきょろしてる。


「本当にコスプレなんですね~」


「そうそう。あれがトゥ○ートの制服でね、あれがクラ○ドの制服でね」


「それ、何の暗号ですか~?」


 旭さんがきょとんとする。

 無理もない、両方とも有名ギャルゲーの名前だから。


 というか……どうしてあなたの口からそんな単語が、淀みなくすらすら流れ出る。

 聞いてみよう。


「シノさん、随分とギャルゲーに詳しいですね」


 確かにさっき店員から説明を聞いていた。

 だからって、元のタイトルの名前を知らないと頭に入らないと思うんだけど。


「職場にそういうのが好きな人達がいるからつい……」


「ふん、『人達』じゃなくて『人』だろ。シノが昼休憩に弥生の漫画をこっそり持ち出しては、応接室で読んでるのは知ってるんだぞ?」


「なぜ、それを!」


 それを、じゃないよ。

 ここにもストーカーがいた。


 姉貴まで同じ言葉を続けた。


「それを、じゃないよ。ボケのつもりか?」


「違いますから!」


「だったら、応接室の前で漫画を抱えて周囲をきょろきょろ見渡すのはやめろ。知らないのは弥生本人くらいのものだ」


「えっ!」


 えっ、じゃないよ。

 不審者以外の何者でもないじゃないか。

 よくこんな人がスパイとかできるな。


「弥生さん、昼休憩はずっと喫煙室で寝てますからね~」


「まさか旭ちゃんも?」


「はい、知ってます~。だけどそんなのどうでもいいです~。その前にあのロッカーの上に積み上げた漫画自体を処分させて下さい~。こないだの地震の時なんかどさっと崩れ落ちてきて、私の席がエロ漫画まみれになったんですから~」


「弥生のはともかく、統括のロリペド一八禁漫画も混ざってたからね……」


 あなたはそれも含めて読破したのか。


「実はさ、厨二統括のは以前に一度処分させたんだ。本人に紐で縛らせて、ゴミ捨て場に持って行かせてさ──」


 厨二って言い方をするって事は、以前に姉貴が呆れかえってた邪眼の上司か。

 厨二でロリペドって終わりすぎてる。

 というか部下の姉貴にそんなの怒られる上司って……。


「──そうしたら建物管理にバレて突き返されてなあ」


 旭さんが問う。


「どうしてバレたんですか~」


「『こんなの職場で読む役所は公安庁以外にない』だとよ」


 どんな理屈だよ。

 いや、それ以前に不思議なことがある。


「姉貴、どうして一八禁漫画をゴミ捨て場に捨てたらダメなわけ?」


 ゴミはゴミだろ?

 そう思ったら美鈴が答えてきた。


「職場で読んでたってことになるでしょう。それを見た業者が週刊誌にでも話せばちょっとしたスキャンダルのできあがりです」


「休憩時間に読むなら構わないんじゃないの?」


 ちっちと指を振る。


「役人たるもの、聖人君子じゃないといけないんです。まかり間違ってもロリペド一八禁漫画を読んでるなどと思われてはいけないんです」


 そりゃどんなに間違っても、美鈴のおじさんはそう見えないけど。

 さすがにそこまで強制されちゃ、お役人さんもかわいそうだ。


 姉貴が言葉を継ぐ。


「本省だとゴミ捨て場が各部署で決められてるから、新聞紙にくるむか他局のゴミ捨て場に持っていくかしてバレない様にしてるんだけどさ。横浜だと一箇所でまとめてゴミ収集だから、ムキ出しのまま捨てても知らぬ存ぜぬで通せると思ったんだよなあ」


 同情したのが一気に台無し。

 やってることが子供と変わらないじゃないか。


 旭さんが姉貴に問う。


「結局その漫画はどうしたんですか~?」


「仕方ないから弥生に持って帰らせた。厨二統括にはリアル娘さんいるから持って帰らせると教育上よくないし」


 リアル娘がいるのにロリペドかい。

 まずはその厨二統括を教育しろよ。


「弥生さんにだって皆実さんがいるじゃないですか~」


「皆実曰く『兄ぃにロリペド属性ないのはわかってますから大丈夫です、うちが責任持って処分しますので』だと」


「皆実さん、器が大きすぎます~」


 そうなのか?


 シノさんが口を開く。


「でもわかんないんだよねえ。私からすればナイムネ好きならロリも好きなんじゃないって思っちゃうんだけど」


「そこは私も不思議に思って聞いてみた。そうしたら『幼女が貧乳なのは当たり前、そうではなく、成熟してくびれた後でも胸が育っていないアンバランスなところに美が存在するんです』って語ってた」


「弥生駄目すぎる」


 女上司に自らの性癖を熱く語ってる時点で、どうしようもない駄目人間だと思う。

 遠回しに姉貴を褒めてる気がしなくもないけど。


「実際に皆実からは『兄ぃのハードディスクに入ってるエロ画像はOLばかりです。女子高生はおろか幼女はいません』との報告を受けている」


「弥生可哀相すぎる」


 さすがにシノさんに同意してしまう。

 漁る姉に漁る妹かよ。

 姉貴と皆実の間では身内のPC漁るのが常識化してそうだ。 


 旭さんが姉貴に顔を向け、呆れた様に口を開く。


「私の目の前で立ち読みしてくれたエロ本もOLさんでした~」


「旭、立ち読みって?」


「はい~。仕事途中のコンビニでやってくれました~」


 あら? 俺の聞いた話。

 ちらっと旭さんに目を向けると目配せしてきた。

 アイコンタクトか。


「あいつはバカか。今度そういう真似をしたらぶん殴っていい。上司の私が許す」


「その時は二回ぶん殴りました~。次は観音さんの分も合わせて三回ぶん殴ります~」


 ふむ……知ってる話でも知らない振りして聞くのは面白い。


「私の分もお願い。でもああいう本って、立ち読みできない様に紐で縛ってない?」


「だから紐を少し寄せて、本の下からのぞき込んでました~」


「弥生終わってる」


「次から次へと上司に恥かかせやがって。死ねばいい」


 話自体は今この場で全員が知った。

 だけど俺が既に知っている事は、旭さんと二人だけの秘密。

 その上でこうやってみんなの反応を眺める。

 秘密の楽しみ方にも色々あるものだ。


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