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13/06/01(8) 秋葉原駅周辺:小町さんも何だかんだと観音さんと姉弟ですよね……

 中央通りをてくてくと歩いていく。

 

「これから行くのはどんな店なんですか~」


「行けばわかりますよ」


 美鈴も意地が悪いな。

 けど、お楽しみってやつもあるだろうしな。


「秋葉原ってかなり賑やかですね~。普段来ないので知りませんでした~」


「二次な文化かアイドルさんに興味ないと、あまり来る機会はないですよね」


「俺はいつも来るぞ?」


 美鈴と旭さんの二人で会話を進められると、のけ者にされたみたいで寂しい。

 ちょっと割り込んでみる。


「誰も聞いてないから黙ってて下さい」


 美鈴……。

 しかも、目すら向けないで。


「いつもなら『今度僕とも来ましょうね』とか相槌打ってくれるくせに!」


「『空気を読め』って言ってるんです。せっかく旭さんが滅多に来ない秋葉原の感想を話してるのに。それをいつも来てる人が邪魔してどうするんですか」


「正論だけど美鈴にだけは言われたくない!」


「はあ、小町さんも何だかんだと観音さんと姉弟ですよね……」


 美鈴が溜息をつきながらひどい事を言う。


「姉貴と一緒にするな! 俺はあんな構ってちゃんなんかじゃない!」


「二人とも仲いいですね~。美鈴さんはどうなんですか~?」


 ちきしょう。

 そこで美鈴に話を振られると、ついジェラっとヤキモチを焼くではないか。


「僕もあまり来ないですね。誰かさんは誘ってくれませんから」


 当たり前だ。お前を連れてきたら俺の世界を片っ端からぶち壊しかねない。メイドカフェだって可愛いメイドさんに「きゅんきゅん」と言われながらヲタネタで会話を楽しんだ後、「こまっち様おかえりなさい♪」とかケチャップ文字のオムライスを食べつつ「さっきのメイドの子いいよな」って言い合える男と行くからいいのに。何が悲しくてメイドを眺めるどころかメイドコスプレをして店内中の視線を集める男と行かなければならないのか。ああ、一緒にメイドコスプレはしてくれたよな。


「買物にもですか~?」


「ああ、買物は母と来ます。値切るのが楽しくて」


「美鈴君が値切るって意外ですね~。そういう事しなさそうに見えます~」


 俺も意外だ。

 頭下げて値切るくらいなら言い値で買いそうなんだが。


「逆ですよ。値切る過程こそが楽しいんです。店員にに~っこり微笑んでから『……して♪』とか『……だめ?』とか上目遣いで甘えてみると、その度にどんどん値段を下げていってくれるんです。それがもう最高に滑稽でお腹苦しくて」


 最悪すぎる。

 でも今度買物するときは美鈴連れてくるのもいいかもな。


「小町さんもやってみればいいんですよ」


 美鈴がニヤリと笑う。

 まるで俺の考えを見透かしたかの様に。


「やらねーから!」


 そもそも広島人に値切るという習慣はない。

 広島の家電は東京に比べて著しく高い。

 それこそ「日本一高いヤ○ダ電機」と地元では噂されるくらいに。

 「付近最安値」をうたっていても、その価格自体が高い。 

 それ以下に値切ろうとしても「他所いってください」。

 きっとカルテルを結んでいるのだろう。

 もちろんカカ○コムのページを見せても「ネットはネットです」で流されてしまう。


 だから広島人は、自然と楽天やアマゾン等のお得意様になってしまう。

 姉貴も同じ。

 姉貴が宅急便でプレゼント送ってくるのは、実際この理由も大きかったりする。


「二人でやればいいんです~、私は横で二人が値切るのを愛でます~」


 それはあまり嬉しくない。

 というか美鈴が加わると正直面白くない。

 まさか美鈴って、旭さんを気に入ったんじゃないだろうな。


 美鈴がシャツの裾を引っ張り、俺の足を止めてきた。

 旭さんを先に行かせる形にしてから耳打ちしてくる。


(顔に出さないで下さい。小町さんが心配してる様な事はありませんから安心して)


 言い終わった美鈴はぱたぱたと駆け出し、すぐに旭さんと並んだ。

 いかんいかん、暴走しかけてた。

 俺も器小さい。


 そうだな。

 二人が仲良くしてくれるのは、俺にとってもこの先ありがたいわけだし。

 目の前の光景は喜ばしいことのはず。


 でもごめん、美鈴。

 そうやって気を回せるお前を見てると、やっぱり少しやっかんじゃうんだ。


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