13/05/30 自宅:何か息が切れてますけど~
もう夕方。
洗濯物を取り込んでいると、スマホの呼び出し音が鳴った。
新たに追加した着うた「コネクト」、これは!
ショートツインテールなヒロインのアニメと来たらこれしかない。
旭さん専用着うた。
洗濯物を投げ捨て、畳にスライディング。
スマホを掴み、すぐさま画面タッチ!
「はい、小町です」
「こんばんは、旭です~、今お電話大丈夫ですか~」
「大丈夫だよ」
「そうですか~? 何か息が切れてますけど~」
「いやいや全然大丈夫、うん本当に」
意識して息を深く吸う。
ゆっくり吐く。
うん大丈夫、多分。
電話の向こうからは雑音が聞こえる。
屋外っぽい。
「明日どうやら時間取れそうなので電話しました~。メールよりも早いかなって~」
そんな事言われると嬉しいじゃないか。
もちろんメールよりも嬉しいに決まってる。
「うんうん」
「横で先輩に待ってもらってるところですから手短に用件言いますね~。明日の夜の御都合はよろしいですか~」
「大丈夫」
後ろの雑踏の音が変わり、旭さんの声が微妙に小さくなる。
「今更ですけど、日吉でぶつかったって事は小町さんってK大の学生さんですか~?」
ああ、一緒にいる先輩はきっとシノさん。
話を聞かれない様に離れたのか。
「うん」
「それなら日吉か自由が丘がいいですか~?」
「いや、俺はもう三田に移っちゃってるから。あの時日吉にいたのはたまたまで」
「そうですか~。それでは大井町でどうでしょう~?」
大井町?
言っちゃ悪いけど、デートスポットと呼ぶには程遠い街。
競馬場以外は何もないぞ?
「いいけど……トウィンクル競馬とかそういうの?」
「いいえ、行ってみたいお店があるんですよ~。ちょっと女性だけでは入りづらくて~」
「はあ」
「気楽なお店なので、格好は気を使わないでください~。時間は一九時でいいですか~」
「うん、了解」
「それではまた明日、よろしくです~」
電話を切る。
するとすぐにメール着信。
【From:江田島旭 To:天満川小町
題名:おまけです~
盗撮しちゃいました。シノさんLOVE♪】
メールの添付画像に写っていたのはスパッツ姿のシノさん。
確かに綺麗。
だけど俺が見てどうしろと……。
待てよ?
もしかして旭さんはシノさんが好き?
……ということはだ。
すまん姉貴。
俺は今日からシノさんがみつきさんとうまくいくように祈願していいか?
いずれはこんな冗談も冗談ですまなくなりそうで怖いなあ。
──洗濯物を畳んでる内に、ふと気づく。
最初に日吉か自由が丘で聞いてきて、場所が大井町。
旭さんの家は溝の口だから、まさかそこから大井町に移動はすまい。
だとすれば日吉や自由が丘でも、それぞれお店を考えた上で電話してくれたということじゃないか!
くーっ、俺のために!
ああ、なんて嬉しすぎる。
つい拳を握りしめるじゃないか。
気づくと、手の中にあったのは姉貴のパンツだった。
俺、何やってるんだ……。
でも、まあいい。
せっかくだ。
サービスでアイロン掛けといてやろう。
本話に対応するキノコ番外編を別途アップしています。
「キノコ煮込みに秘密のスパイスを 番外編 13/05/30 横浜駅周辺 シノ視点」
公募のために削ったシーン。
キノコの同一日付ともリンクしています。