第三話〜魔術という領域〜
ユトとミカエルとの会話が終やってから半年と二ヶ月がたった。ユトはちょこんと座れるようになったりハイハイができるようになり動けるようになった。
ユトはミカエルからの説明を受けた魔術に関してはまだ使えていない。ミカエルからものすごく曖昧に教えられたせいでよくわかっていない。そこでその魔術の知識を得ようとしているのだがハイハイで動けるようになっても越えられない壁、いや動けるようになったからこそ壁と認識したのかもしれない。そう彼、ユトが寝ている場所は柵付きベビーベットなのだ。ハイハイができるようになってまだ何かを掴んで立つのがやっとのユトは完璧に立てるわけではない。だから欲しくとも魔術の知識は手に入らない。
魔術の知識が欲しくもまだ家の中、周りの環境を把握してはいないだからこそ早くこの柵を乗り越えなければないのだ。
そうやってユトが必死に柵を越えようとしているとユトがいる部屋に足跡が響いて来た。ユトがいる部屋に近づいているのか少しづつ足跡が大きくなってきた。そこでユトはやっと誰が来たか察する事が出来た。
(ヤバっ、来た来た来た!ヤバイヤバイ!)
そう彼女が来たのだ、以前ユトが乗り越えれそうな時に見つかって柵の中に戻された事があるのだそれ以降見つかるたびに少しづつ柵の高さが少しづつ高くなっていったそのため今はもうどう頑張っても越えれない高さになってしまっていた。学習せずにやり続ける方も悪いのだがユトにとっては彼女は天敵も同然、だかこそ慌てて寝ているふりをするため元に戻ろうとするのだが柵を掴んでいた手が滑って離れてーー
(ヤッバーー)
ゆうまでもなく重力に従って綺麗に顔から落ちて顔面を強打した。
(っ〜いって〜)
普通赤ん坊が顔面を強打したのなら鳴き声一つは出すのだがもちろん見た目は赤ん坊中身は高校受験を終えた中学生なのだ泣はしない。
ウニウニと打ったところ撫でていると彼女が来た。
撫でているユトを見た彼女の反応はーー
「きゃあー!可愛いー!」
という反応をした。そしてユトが気になる発言を彼女はした。
「やっぱりいつどこでも見ても私のは可愛いはねーうふふ」
(私のだと?ってことはこの人が俺の母さん?母さんだったらいいなと思うよだってさやけに美人なんだよなー)
彼女いやユトの母親はユトを抱き上げて言った。
「ユト、柵を越ようとしちゃダメじゃない」
母親は母親らしく注意しをした。その言葉聞いたユトはコクンと頷いた。母親から見てみれば話を理解し頷くタイミングに見えなくもない。
「ユトってば私の言ってる事がわかるの?」
その言葉をはっとするユト。
通常生まれて生後一年もたたない赤ん坊と大人とではまともな会話が出来ない赤ん坊がする感情表現は泣いたり笑ったりすることだろう。その中で会話を納得したように頷くといえば否である。話しかけて偶然頷く事があるかもしれないだが話を理解し頷く事はほとんどないだろう。
ユトが頷いた時母親はまるで会話はの内容を理解しコクンと頷いたように見えたに違いない。
その事に気付いたユトはまるで図星を突かれたように目を逸らしながら内心結構焦っていた。
(やべーなー気付いたかな俺が普通の赤ん坊じゃないってこと)
そんなユトの内心を知らず母親は
「そんなわけないか」
と呟いた。その言葉を聞きホッとするユト。
「ユトじゃあ夕食の材料買ってくるね柵付き越えようとしちゃダメよ?」
釘を刺れたユトであった。母親が部屋から出て行くと母親の言葉を無視してぶつぶつとどうやって柵を越えようか考え始めるユト。
夕食の買い出しの準備が終わったのか扉を閉じる音が聞こえたがその直後にドゴォン!と地面がえぐれるような音が聞こえた。その音を聞いた瞬間ユトが柵をどう越えようかという考えが吹き飛んだ。まるでまた釘を刺されたような音だった。
(俺の母さんって普通の人だよな…)
と考えるユトであった。だが釘を刺すような音を聞いても柵を越えようとまた考え始めるユトどうしても魔術を使いたいのである。でもやはり赤ん坊睡魔が襲って来てまた睡魔に勝てないユトである。
ユトが目を覚めたのはあたり一面暗くなった夜だった。なに一つ音が聞いていないからおそらくは深夜なのだろう。
故に柵を越える絶好のチャンス。そうだから考えていたのだこの柵を越える方法を。
(この柵を越える方法…ビュンと飛べればいいんだけどな…)
ユトが飛ぶイメージをした瞬間彼は頭の上に輪ができた輪ができた瞬間ユトは浮いた。
(何だこりゃ?視線が高くなってる?)
そうユト自身は認識できていないがユトが飛びたいというイメージをユトが魔術に発動させたのだ。だがユト自身が魔術を使ったことを認識していない故に魔術は暴走状態に近い状態でもある魔力の暴走とは違い魔術そのものが成立していないのだかろうじて魔術という形を保っているだけである。
(あれ上昇してる?おお飛んでる飛んでる)
と思っていたのもつかの間だった徐々に天井に近いずいていくユト。魔術が暴走状態に近い状態であるためたまたま使えた魔術をコントロールする事が出来ない。
(あれ?とまんない)
上昇が止まらずついに天井にゴッと鈍器で殴られたような鈍い音が部屋に鳴り響いた。
ユトの中身は高校受験を終えた中学生だ、だけども鈍器で頭を殴られた痛みを受けたら中学生でもかなり痛いそれを赤ん坊の体でやってしまったユトそれでもまだ痛みに耐えられた、さらに痛みで輪が消え魔術も止まった。
よくよくユトの状況を考えて欲しい。
天井に近い高さで魔術を消したら?
それはもちろん重力に逆らわずただ地面に向かって落ちるだけである。 そしてーー
「あー!あー!あぁぁぁぁー!(ヤバイ!ヤバイ!うわぁぁぁぁー!!)」
ゴツとまたユト鈍器で殴られたような痛みを感じた。
流石に二度は耐えられなかったのか鳴き声を出してしまった。故に母親である彼女が気付けばユトがいる部屋に来るのは必然である。
だが痛みには耐えられなかったユトであった。
「びえええええぇぇぇぇぇぇぇん!!!(イッテてえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)」
ユトが大声で泣いて数分もせずにするとドッタンバッタンと激しい足跡が聞こえてきて
「 どうしたの!?ユト!?」
と母親が来た。鳴き声を聞いてこの早さで来たのは流石だと褒める程のものだった。
母親はユト抱きかかえあやし始めた。仮にも中身は中学生もちろんすぐに泣き止んだ。
泣き止んだユトを母親はユトの頭を軽く撫でてから母親の寝室へと戻って行った。
ユトは暴走に近い状態ではあったが魔術を使ったその事を自覚しユトはミカエルの言葉の事を思い出していた。
(『魔術はイメージが大事だからね』…確かにあの時には飛ぶイメージをした…だから飛べたのか?…)
そしてもう一つの事を思い出していた。
(『君の体の中に空を封印してあるからね』そして『本来君が持っている空は使えるよ』だとも言っていた…つまり魔力?は俺の体の中にあるって事か?)
ユトはたまたま偶然出来てしまった魔術の事からミカエルが言っていた事を再確認をし魔術の片鱗を知った気がした。
そして彼はある事を決めた。
(もう二度母さんにバレないようにしっかり練習をしよう!)
普通、魔術の失敗をして母親を心配をさせたのならば次は心配をさせないようにしようと思う人が一般的に多いとは思うのだがユトはただ母親に見つかった時が怖そうだからヘマはしないようにしようという少し捻じ曲がった考え方だった。
翌日ユトは意気込んでいた。魔術の失敗から一つの事を学び柵を越える必要がなくなった事を喜んでいたのもあるがただ単純に子供達が一度は思い描くであろう魔術を使うという事が一番の理由だ。
(柵よ、いままでありがとな俺は次のステップへ進むぜ)
と柵に向かってユトは心中で呟いた、元の世界に戻ってこのセリフを言ったら痛い目で見られる恐れのあるセリフだった。
(さてと魔術をやる前におそらくだが魔力みたいのをコントロールしないと出来なそうだからな我流でいけるところまでやるか…)
と考えてユトは、まずは魔力を感じるところからと呟いたてからミカエルが言っていた事を思い出しながら体の中にある魔力を感じるために集中をした。
(ふぅー)
ユトがしているイメージは体の中心に魔力がある事をイメージしている。魔力がどのような物でどのような形をしているのから想像しにくいだから彼は魂のような物を頭の中に思い浮かべイメージをした。
するとユトにとってどれぐらいたったかはわからなかったがユトは何かを感じた。自分の中にある魔力を言葉で表すならばユトがイメージしていた魂に近く暖かな色をしていた。そしてユトはその魔力を感じた時の感覚を忘れず魔力を外へ解き放つイメージをした、その瞬間ユトは意識して感じる事は出来なかったが確かにその時ユトを中心に何かが放たれた。それはまだ魔術ではなくただの魔力にすぎなかったがユト(あさお)はこの日が生きて来た中で始めて魔力を使うことに成功した日になった。
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