標準アプリの使い方
「とにかく、これで無事に〈SOS〉のインストールは完了だ。ホーム画面を開いてみろ。何のアプリがある?」
ケット・Dに聞かれて、安峰さんが答える。
「〈スリープ〉っていうのがある」
あれ? と僕は思った。
僕のホーム画面と違うらしい。
「〈スリープ〉か。さては流伽。貴様、授業中に居眠りしているタイプだな?」
「関係あんの?」
「ああ。固有アプリには、ある程度ユーザーの特徴が反映される仕様になっているからな」
なるほど。そういう理由だったのか。
僕のスマホのホーム画面には〈スリープ〉の代わりに〈タイムボム〉というアプリがある。
導火線のついた時計のアイコンのアプリだ。
「これしかアプリが入ってないわけ?」
「まだLV1だからな。〈スタット〉を開いてみな。虫眼鏡のアイコンのアプリだ」
「いや、だから〈スリープ〉しかないんだってば」
「標準アプリだから扱いが別なんだよ。上からスワイプするとコントロールパネルが出てきて、そこにアイコンがあるはず」
「ああ。あったわ」
「開くとカメラが起動するはずだ。反転させて自分に向けてみろ」
「なんか、あたしの名前が出た」
「その状態でボタンを押せば、貴様のステータスが表示できる」
「お。これがあたしのステータスか――」
僕も〈スタット〉を開いて自分を映してみる。
僕にフォーカスが当たっていて、ツールチップには僕の名前が表示されている。
ボタンを押すと僕のステータスが表示された。
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名前 時枝彩輝
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LV 1
属性 善
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分類 ユーザー
性別 男
年齢 17
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電池 100%
状態 正常
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アプリ 1 ›
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「LVとかもあって、なんかゲームみたいだね」
「そう思ってくれていて構わないぜ。実際、その方が気楽だろう?」
ケット・Dはそう言った後、「もっとも、ゲームオーバーになると本当に死ぬけどな」と付け加えた。
「アプリの隣りの数字は何?」
安峰さんがケット・Dに聞いている。
「インストールしている固有アプリの数だよ」
「そうじゃなくて、その先の画面」
「ああ、一覧の方か。そいつはクォータといって、そのアプリを使用できる回数だ」
「回数制限があるんだ?」
「固有アプリにはな。標準アプリと隠しアプリにはない」
「隠しアプリ?」
「特殊なアプリがあるんだよ。まあ、基本的に入手できないから気にしなくていい」
「ふうん――」
僕もアプリの行をタップして一覧を表示してみた。
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タイムボム 15 / 15
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〈タイムボム〉のクォータは15だった。
斜線の右が最大値、左が現在値といったところだろう。
「あ。これ、他人のステータスも見れるんだ?」
スマホから顔を上げると、安峰さんが僕にカメラを向けていた。
「当然。そうじゃないとカメラの意味がないからな」
僕も安峰さんのステータスを表示してみた。
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名前 安峰流伽
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LV 1
属性 善
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分類 ユーザー
性別 女
年齢 18
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電池 100%
状態 正常
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アプリ 1 ›
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そして、アプリ一覧。
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スリープ 15 / 15
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「ケット・Dのも見れるんだね」
安峰さんがケット・Dにスマホを向けながら言った。
僕も試してみると、こんなステータスだった。
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名前 ケット・D
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LV 0
属性 中立
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分類 デーモン
性別 不明
年齢 不明
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電池 100%
状態 正常
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アプリの表示がないのは、固有アプリを1つも持っていないからだろうか。
さっき言っていた隠しアプリは持っているのかもしれないけれど。
2024/12/14:表現の修正
2025/01/26:空白文字が抜けていたのを修正