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第六話:素敵な朝の断末魔

最近、朝に寝ることが多い筆者。


もしかして駄目人間か?


あっ、本編スタート!

チチチッ。

 

小鳥のさえずりが聞こえてきた。


 「うーん!」


 俺は大きく背を伸ばした。


 チュンチュン。


 窓に寄り添う小鳥が可愛らしく小首をかしげた。


 「おはよう小鳥さん。今日はいい天気だな! やっぱりこういう大事な日は今日みたいにいい天気に限るな!」


 今日は俺の軟禁生活が解かれる記念すべき日。


そう、今日は陵聖学園入学式なのだ! 


今日までの日々はとても長く辛い日々だった! 


来る日も来る日もマリンさんに言いつけられた修行を頭の中でイメージするだけの日々・・・。


 「うぅ・・・辛かった。辛かったよぉ!」


 マリンさんはドアを開けるな、誰も入れるな。と、告げにきて以来面会にきてくれないし、柊さんは・・・問題外だし。


モーガン・フリー○ンだけはたまに話し相手になってくれたけど忙しいのか、来てもすぐに帰るし。

 

「だが、そんな惨めな日々とも今日でお別れだ! 今日から俺は新しい人生の一歩を踏み出すんだ! この一歩は人類にとっては小さな一歩でも俺にとっては大きな一歩なんだ!」


 と、世界の偉人の名台詞を馬鹿みたいに言ってしまう俺。


 それほどうれしいのだ。


俺はマリンさんに魔法で届けてもらった制服に腕を通した。


制服は紺のブレザーに灰色のズボンだった。


俺は制服を着た自分を鏡に映して見る。


鏡に映る自分を見て、自分が高校生になったのだという実感が改めてわいてきた。

 

「おっはよ~! 今日はいい天気だね~! まさに快晴! 今日という日に感謝を~!」


 勢いよくドアを開けて入ってきたのはもちろんマリンさん。


今日も今日とて綺麗なマリンさんだった。

 

マリンさんはピンク色の長い髪を後ろで結って、ポニーテイルにしている。


純白のドレスをなんの違和感もなく着こなしているあたりがさすがだった。


幸せの権化と言っても過言ではない顔が、緩みきってほにゃ~んとしている。


慈愛に満ちた紅い瞳が俺をじっくりと見て、さらに顔が緩む。


整った鼻はくんくんと俺の部屋の匂いをかぐ。


そしてまたもや顔が緩む。

 

普通の人間ならこれだけ顔が緩めばブサイクになること必至だが、マリンさんは普通ではなく超絶美女なのでブサイクになるどころか、むしろ可愛さが倍増する。

 

「竜ぢゃ~ん・・・ひっぐ、ぐずっ。うぇ~ん!」


 突然泣き出したかと思えば、歩く屍、西洋風に言うとゾンビのような足取りでマリンさんは俺の部屋へと入ってきた。


 「お姉さん寂しかったよ~! 竜ちゃんに会えない日々が寂しかったよ~!」


 「な、泣かないでくださいよ。それに誰も部屋に入れるな、ドアを開けるなって言ったのはマーちゃんじゃないですか」


 「ぐずっ・・・そうだけど~」


 「でも話し相手ぐらいにはなってほしかったな。毎日退屈でしたから。あっ、ちゃんと言われた通りに修行はしてましたよ?」


 「だって・・・お話してたら絶対に竜ちゃんの顔が見たくなるから~! だから自制してたの~! 胸が張り裂けるほど辛かったけど~、お姉さんはそれを我慢して頑張ったの~! これも竜ちゃんのためだって自分に言い聞かせてお姉さん頑張ったの~!」


 マリンさんは豊満な胸を上下にたぷんたぷんと揺らせながら俺に抱きついてきた。


朝の起きたてほやほやな健全な思春期男子の俺にとって、マリンさんの行動は大変危険だった。


思わず下半身を両手で塞ぐ俺。

 

「ま、まあ、理事長先生がたまに話し相手になってくれたからよかったですけど」


 「それホント?」


 マリンさんは微妙にひきつった笑顔で聞いてきた。


 「ホントです」


 と、答えた俺は次の瞬間信じられない言葉を耳にした。


 「ちっ! あのくそじじい~! 私が竜ちゃんのためを思って、竜ちゃんに会いたいのを我慢して会わなかったというのに・・・それをあの腐れじじいはこともあろうか竜ちゃんと毎日毎日楽しくお話してただぁ~! 許せねぇ~! こいつはマジ許せねぇ!」


 マリンさんの豹変ぶりに俺は言葉を失った。


それにモーガン・フリー○ンはたまに話し相手になってくれたとは言ったが、マリンさんの中では俺とモーガン・フリー○ンが毎日楽しくドア越しにおしゃべりしていたことになっているらしかった。

 

「竜ちゃん!」


 「はい!」


 悪鬼と化したマリンさんは俺の両肩に手を優しく置いて言う。


 「お姉さん急に用事を思い出しちゃった。それはそれはと~っても大事な用事なの~! だから・・・今日の入学式、頑張ってね・・・」


 今生の別れのような台詞を残し、マリンさんは弾丸のように走り去って行った。


 まあ、マリンさんがなにをしに行ったのか想像できた。


想像できただけに俺の胸にはモーガン・フリー○ンに対しての罪悪感が・・・。

 

「やあマリン先生おはようござぼふぁぁぁぁっ! な、なにを!? マリン先生なにをぐしぇっ! お、落ちついとぅっ!」


 「貴方の罪は何よりも重く、そして深い!」


 「は、はいー!?」


 「これは竜ちゃんの分!!」


 「ぶしぇ!」


 「これも竜ちゃんの分!!」


 「ざばへぇ!」


 「これも、これも竜ちゃんの分!!」


 「な、ど、」


 「そしてこれが・・・」


 「た、たすけてー!」


 「私の分!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 「ぎゃああああああ!」


 陵聖学園女子寮にハリウッドの名優モーガン・フリー○ン似理事長の断末魔が響き渡った。


 ごめんなさい。


 俺が心の中でそう言うと、開けっ放しのドアからマリンさんが入ってきた。


 にっこり笑っているマリンさん。


 「今日は~、竜ちゃんの大切な日なんだから目一杯おめかしして行くのよ~! お姉さんも影ながら応援してるからね~!」


 と、言った。


 返り血にまみれた顔で。


 せっかくの純白のドレスも返り血を浴びて真紅のドレスへと様変わりしていた。


 「それじゃね~!」


 言ってマリンさんは何かをやり遂げたように清清しく去って行った。


 まあ、何かを殺り遂げたってのは間違いないよな。


ふふふ。

感想を待っておるぞ。




あ、嘘です。

本当調子に乗ってすいません。

ああ~、見捨てないで~

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