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第五話:エビフライはやっぱりタルタルソース

こ、これは!


このコクと良い、旨味といい、申し分ない!

素材の味を充分に引き立て・・・etc


サブタイトルを見て、料理小説と勘違いしてしまった方がいらしたらすいません。


まったく料理とは関係ない、お話です。まあ、ね・・・。

あっ、本編スタート!

修行開始初日の夕方。

 

「ふふっ、夕日が目に染みるぜ」


 コンコン。


 誰かがドアをノックしている。


 誰だ? 


思い浮かぶのはマリンさんかモーガン・フリー○ンだ。

 

柊さんは昨日の今日でありえない。


 「いま開けますから」


 「あっ! 開けちゃ駄目~! そのまま~!」


 こののほほんとした声はマリンさんか。


 「どうしたんですか?」


 「あのね~、言い忘れてたんだけど~、入学式までの間~、竜ちゃんが外に出ることはもちろん駄目だけど~、ドアを開けたり、誰かを部屋に入れたりしても駄目だよ~?」


 「駄目なんですか?」


 「ぜ~ったいに駄目~!」


 「どうして?」


 「どうしても~! い~い? わかった~?」


 「はぁ・・・わかりましたよ。誰も入れなきゃいいんでしょ?」



 「それだけじゃ駄目~!」


 「わかってますって。ドアも開けませんから」


 「うん! 竜ちゃんはいい子ね~!」


 ドア越しの会話ってのは変な気分だ。


相手がどんな顔をしてるかわからないのはちょっと不安だ。

 

「それじゃあね~!」

 

言って、マリンさんは去って言った。


もう少し話し相手になってほしかった。


ゴーン、ゴーン。

 

備え付けてある時計が十八時を知らせてくれた。


 「もうこんな時間か。そろそろかな?」


 コトッ。


 思ったとおりだった。


 テーブルの上には本日の夕食が届けられていた。


これはマリンさんが魔法で届けてくれているらしい。

 

いやー、それにしても昨日は驚いた。


マリンさんから渡された紙に書いてある質問について考えていたところに、いきなりトレーに乗ったカレーが現れたんだもんな。


まあ、おいしかったからいいけど。

 

さて、今日のご飯はなにかな~?


 おおっ! なんてことだ! 


今日の晩飯はご馳走だ! 


エビフライだと!? 


しかもエビフライ本体にタルタルソースが惜しげもなくふんだんにかけられている! 


ソース派や醤油派の方々には申し訳ないが、俺はタルタルソース派なので、感動にむせび泣きそうだ! 


今日は誰かの誕生日なのか? 


それともなにかめでたいことでもあったのか?

 

手を合わせて合掌。


 まずはおいしく料理された海老に感謝の気持ちを。


 次に料理してくださった人に感謝を。


 最後は神様に感謝を。


 別に信仰してる宗教があるあけじゃないけどなんとなくだ。


 「さて、食べるとしますか! いただきまー・・・」


 コンコン。


 無視無視。


 せっかく俺に食べられるために料理された海老を前に席を立つなんて俺にはできない。


 コンコン。


 無視無視。


 「あの、藤堂くん」


 ひ、柊さん!? 


昨日のことで収まりかけていた怒りが今日一日で爆発し、俺の息の根を止めにきた・・・と?

 

「すいません! 少し寝てました!」


 俺は咄嗟に嘘をついてしまった。


 「えっ? あっ、ごめん。起こしちゃった?」


 「いえ、滅相もございません!」


 「そう・・・」


 「柊さん?」


 「あのさ、これからなにか予定ある?」


 「いまから晩飯を食べるところです」


 「そ、そうなんだ! ちょうど私もいまからお夕飯にしようと思ってたの! よかったら一

緒に食べない?」


 一緒に?


 食べに行こうってことか? 


それとも俺の部屋で食うってことか? 


いや、俺の部屋ってことはないな。


でも、どっちにしてもドアを開けなくてはいけないじゃないか! 


ここは非常に残念だが断るしかない!

 

「すいません」


 「そ、そっか・・・。ねえ」


 「なんですか?」


 「中に入ってもいいかな?」


 無理です!


 「すいません。今日はちょっと・・・」


 「そ、そう・・・。それじゃあ明日は?」


 「明日もちょっと・・・」


 「いつならいいの?」


 「入学式っていつですか?」


 「入学式? 四月五日だけど?」


 「じゃあその日まで無理です」


 ピキッ。


 なにかが崩壊した音が聞こえた。


 「私と一緒にいるのが嫌ならはっきりそう言えばいいじゃない!」


 「違うんです! 一緒にいたくないなんて、そんなわけないじゃないですか!」


 「もういい! 私が馬鹿だった! 藤堂くんとはこれっきりね! 別れましょう!」


 別れるもなにも既に昨日で全て終わってたじゃないですか。


 「わかりました・・・」


 「さよならっ!」


 不幸な俺。


 多分俺は不幸な星の下に生まれたのだろう。


 こんな幻想はどこかの誰かさんにぶっ壊して欲しい。


 いやマジで。


 「まあ、しょうがねーな」


 こうなったら気持ちを切り替えてマリンさんに言いつけられた修行に専念しよう! 


つーかそれしかない。

 

軟禁状態な俺。


 囚われのお姫様な俺。


 籠の中の鳥な俺。


 いまの俺にぴったり当てはまる言葉が次々と脳裏に浮かぶ。


 はぁ・・・。


 「問一の答えは出てる」


 問一。


 好きな武器は?


 答え。


 弓。


 この前、桜子と見たファンタジー映画でエルフが弓を使っていてかっこよかったからだ。


もちろん映画は桜子のおごりだ。


俺に、というか我が家に映画を見に行くだけの大金はない。

 

「問二はなんとかなりそうだけど、三は思い浮かばねー」


 問二。


 好きな動物は?


 「好きな動物か・・・」


 そういや桜子の家で飼ってた猫は可愛かったな~。


 「猫かな?」


 あのキューティーな存在を思い出し、俺の深く傷ついた心が癒されていく。


 「問題は三と、四だな」


 問三。


 好きな空想上の生き物は?


 「そんなこと聞かれてもなー」


 好きもなにも俺が知ってるのはドラゴンとペガサスぐらいだし・・・。


マリンさんには一番好きなものをって言われたけど、正直どっちもどっちだからなー。

 

「ドラゴンはかっこいいと思うし、ペガサスは綺麗だもんなー」


 ズシン!!


 ヒヒーン!!


 「えっ?」


 いま、なにかとてつもなく大きな音が聞こえたような。


 そう、たしか・・・でかい何かの歩く音と馬の鳴き声みたいなものが・・・。


 まあ気のせいだろう。


 「問四は質問自体がわからないんだから、考えることなんてできないッス」


 よし、ちょっとここらで一度まとめてみようか。


 「俺の一番好きな武器は弓で、一番好きな動物は猫。そして、一番好きな空想上の生き物はドラゴンとペガサス。こんな感じでいいんだよな? 問三は答えが二つになったけどいいよな? あとはこれらを常に頭の中で想像しておく・・・っと」

 

 一時間くらい経った。


 「もういいかな?」


 そういや、腹減ったなー。


 「あっ! いろいろあって俺まだ飯食ってねーよ!」


 ごめんなさい海老さん!


 「もういいや。今日は飯食って寝よう」


 この日、俺は言葉通り夕食を食べてすぐに寝た。


 余談だが、エビフライはとっくに冷めていた。


 その日の夢にエビフライになる前の海老が大量に押し寄せ、呪詛のように「早く食べろ~」と、俺に訴えかけてくるという悪夢を視た。


ところで、私自身。エビフライにはタルタルソース派です。


感想待ってま~す!

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