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第二十七話:

では、本編をどうぞ~!


 「そうです。そのまさかです」

 

まさかのボケに俺はものすごくツッコミを入れたかった。


 ええ、それはもう本当に。


 でも、ツッコミを入れることはしなかった。


 だってツッコミを入れると何だか負けた気がして悔しいのです。


 これこそ、秘技ボケ殺し!


 「どうして貴方がこの場にいるのかしら?」


 そんな俺の心情とは天と地ほどの違いがあったのだろう。


 マーちゃんがシリアスモードへと移行する。


 「ふ・・・」


 軍服姿に顔を黒いフェイスガードで覆い隠した、見るからに怪しい人物は余裕の笑み(顔が見えないから笑ってるか分からないけど、声でそう判断)を見せている。


 「何も言わぬということは、殺されても文句はない――ということだな?」


 グリシーヌはグリシーヌで、人間の姿のまま、刃物のように長く切れ味のよさそうな爪を出している。


 言葉を発した口からは、炎の余熱だと思われる熱気が漏れ出ている。


 「ふふ・・・」


 うん?


 あれ、もしかしてコイツ?


 「・・・なんだかおかしい」


 黒崎さんも俺と同じ違和感を感じたらしい。


 そう。


 以前俺たちを襲った軍服姿に顔を黒いフェイスガードで覆い隠した、見るからに怪しい人物と、目の前の人物とが同じ人物だとは思えない。


 気のせいというわけでもない。


 コイツからは、殺気というか何と言えばいいかわからないが、そういう危険なものは一切感じない。


 むしろ・・・。


 「ふふふ・・・っぐす」


 泣いたー!!


 今コイツ泣いたよね!?


 「なんだよー!」


 そしてキレたー!!


 「私が何したって言うんだよ~!!」


 うわーん!


 と泣きながら、桜子の中々に成長しているお胸様に顔を埋めて泣き始めた。


 なんだか可哀想になってきた。


 「あ、あれ~? ちょ、ちょっと~、泣かないで~! お姉さんたち~、貴方に泣かれると何だか調子狂っちゃうよ~」


 マーちゃんも目の前の事態にかなり戸惑っているようだ。


 「う、うむ。なんというか・・・すまん。その、まさか泣くとは・・・」


 グリシーヌは爪を元の長さに戻し、泣いている赤子の対応に困る子供のようにしどろもどろになっていた。


 だけど、一番対応に困っていたのは誰あろう、桜子である。




 

 桜子、我が家へ来る。

 ↓

 軍服を睨む俺たち。

 ↓

 突如泣きだす軍服。

 ↓

 軍服、桜子の胸に顔を埋める。

 ↓

 桜子、オロオロとし出す。




 

 という訳の分からないことに。


 そりゃ、困るわな~。


 と、そんなどうしていいか分からないことになっている空気を変えてくれる救世主が現れた。


 「はいはい、もうそこまで! 皆一回深呼吸をしましょう! はい、深呼吸開始! すぅー、はぁー、すぅー、はぁー。はい、どう落ち着いた?」


 母さん。


 あなたはなんて凄い人なんだ。

 






 「どうも、取り乱してしまいすみませんでした」


 そう言って軍服姿の怪しい人物は頭を下げる。


 以外に礼儀正しい。


 そこに驚くというのは失礼か。


 「今さらですが初対面の皆さまに、自己紹介をさせてください。私の名前は、エドアルド・クリスティーと言います」


 初対面。


やっぱり人違いだったのか。


そんなクリスティーというらしい男は、黒いフェイスガードを被ったまま俺たちに頭を下げた。

 

「桜子お嬢様の護衛のようなことをしています」


 うわ~、知ってはいたけど、桜子って本当にお嬢様だったんだなー。


 第三者の口から改めて『桜子お嬢様』なんて聞くと、なんだか変な気分だが。


 「そうなんだ~。ごめんね~。お姉さんたちすっかり勘違いしちゃってたよ~」


 「いえ、誤解が解けて何よりです」


 「実は~、少し前にね~、かくかくしかじかで~」


 「そんなことがあったのですか。それは、紛らわしいものを被っている私にも責任がありますね」


 「そんなことないよ~」


 「そうですか? そう言っていただけると少し気が楽になります」


 うふふ。


 あはは。


 と笑いあうマーちゃんとクリスティー。


 はい、ここでちょっとストップ。


 今の会話おかしいよね?


 つーか、『かくかくしかじかで~』でよく会話が成立したな!?


 びっくりしたよ!


 (それはですニャ、愛の力ですニャ!)


 ニャン吉っつぁん!


 (相手のことを思う魔王様の愛の力が、言葉という壁を乗り越え相手に伝えたいと思うことを伝えられるのです!)


 すまん、ニャン吉。


 俺にはお前が何を伝えたいのか良くわからないのだけど。


 (・・・実はボクも自分が何を言いたいのか良く分かっていないのですニャ~)


 そうか。


 (はいですニャ~)


 ・・・・・・。


 (・・・・・・)


 ・・・・・・。


 (そ、それじゃあボクはこの辺でドロンしますニャ~)


 ドロンて。


 まあ、マーちゃんのことだからまた魔法で何とかしたんだろうな。


 便利だよね、魔法って!


 「しかし不思議ですね?」


 クリスティーは俺のことを見ながら言う。


 「竜也くんは本当に魔法が使えないのですか?」


 「あ、ああ。まあ、はい」


 「うーん、おかしいですね」


 「えっと、何が?」


 「桜子お嬢様」


 無視ですか!?


 話を振っておいて無視されるのですか!?


 「竜也くんが魔法を使えないというのは本当なのですか?」


 そして全く信じて貰えない俺!!


 少しは信じてくれてもいいと思うよー!!


 「そうよ。竜也は魔法を使えないわ。で、でも、そんなことなんて関係なく私は竜也のことが、その、す、好きだし・・・魔法が使えなくて将来就職出来ないってことになったら私が養って上げることも・・・」


 と、後半は声が小さくなったため桜子が何を言っているのかは分からなかった。


 そんな俺の脇腹を、イリーナはひじで小突いてくる。


 「マスターも隅に置けませんねー」


 何のことでしょうか?


 イリーナはたまにわけのわからないことを言うな。


 「竜也くん、本当は貴方、魔法が使えますよね?」


 「はい?」


 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。


 だって、クリスティーがいきなり変なことを言いだすから。


 「ふむ、召喚術も広義の意味では魔法といえば魔法といえるからな。それと勘違いしているのではないか?」


 「いえいえ、そんなことは・・・・・・って!! ええー!! 竜也くん召喚術が使えるんですか!?」


 「そ、そうなの竜也!?」


 クリスティーと桜子が同時に驚く。


 アレ?


 クリスティーはともかく、どうして桜子が驚くんだ?


 もしかして、俺言ってなかった?


 「いやー! それは本当にびっくりです。おめでとうございます」


 「あ、はい。ありがとうございます」


 「あ、でもでも! 私が言っている魔法というのは、召喚術とは違うもののことなんですけど。でもー、うーん何て言うのかな? 私が竜也くんから感じる魔法の力はですね、うーん、本当に何と伝えればいいのか・・・その存在しないんですよねー」


 俺、今、俺の存在自体を否定されてしまいましたか?


 うそー。


 今さっきあった人に存在を否定される俺ってどうなんだ?



 

 魔法というものは、七つの元素によって成り立っている。


 生き物の命を守り、時に奪う、火。


 草花を育て、時に暴風となりあらゆるものを薙ぎ倒す、風。


 全ての生命の源である、水。


 その昔は、神と崇められたこともある自然の脅威、雷。


 生命が豊かな心を手に入れるきっかけとなった、音。


 生命の命綱、生命が立つために必要不可欠である、土。


 緑を守り、星を豊かに育て上げるための、木。


 魔法とはこれらの七大元素によって成り立っている。




 以上!


 出張陵聖学園授業、イン我が家でした!



 「ねえ、クリスティーさん」


 イリーナがクリスティーを怖がらせないようにと、優しい声音で問いかける。


 「もしかして、それって・・・」


 俺がイリーナの声を聴けたのはそこまでだった。











 そう、このときの俺が、この後どうなるかなんて分かる筈もなかったんだ。











 突如、辺りは白く光る。


 何も見えなくなった。


 そして、次に俺が感じたもの。


 それは――。


 「竜ちゃん!!」


 「竜也!!」


 マーちゃんと桜子の叫び声が聞こえてきた。


 痛い。


 胸が突然痛み出した。


 右胸の辺りに何か激しい痛みが・・・。


 死。


 そんな言葉が俺の脳裏を過った。


 「貴様っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 グリシーヌは誰に向かって怒ってるんだろう?


 あ、ヤバイ。


 目の・・前が・真っ・・・暗・・・・・・・に・・・




ご意見・ご感想などがあればお待ちしております!!

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