第二十五話:そして再びのお母様(後編)
本編、は~じま~るよ~!!
ということなので、本編をどうぞ!
思い返してみれば、フラグはもうすでに立てられていたのかもしれない。
そう。
他ならぬあの人。
俺の母さんによって――。
『あら? あらあらあら? ねえ、竜也。あなたの本命ってグリシーヌさんだったのかしら? うっそ! マジで!? まあ、母さんさっきこの中で本命は誰なのかーなんて言っちゃったけど、実は竜也の本命は桜子ちゃんだと思ってたのよねー! 母さんの母親の感は絶対に外れないという根拠の無い自信があったのだけど、まさか外れるとはね! まあ、もともと根拠が無かっただけに、外れたとしてもまったく悔しくもないんだけど!』
こんなことを言った母さんが次にどんな行動に出るのか予想して然るべきだったな。
つーか、久々・・・ではないけど、我が家でゆっくりする暇もない状況を作り上げた母さんの無邪気さを、怒ればいいのか、恨めばいいのか、呆れればいいのか、それとも笑って許せばいいのか・・・。
こんなとき、どんな顔をすればいいのか分からない。
(笑えばいいと思うよ?)
え?
誰?
誰なの?
(忘れたの? ボクが誰なのかを?)
ええーと?
本当にどちら様なのでしょうか?
(ふう・・・。別れてからそんなに時間は経っていないのに忘れられるなんて・・・何だか悲しい)
本当に誰ですか!?
(ふふふ・・・知りたいかい? 知りたいのかい? そんなに知りたいのかい? ならば仕方がない答えてあげよう! ボクの名は!)
いえ、そこまで知りたいわけでは・・・。
(うわーん! 聞いてくださいニャー!)
ニャー?
(ボクです! ニャン吉です! 忘れないで下さいよー!)
ニャン吉?
その名前で思い浮かぶのは、美紀さんが偉く可愛いと仰っていた、俺が召喚したあの使い魔で偵察軍人もどきなお猫さんだが―。
ニャン吉ってば、もっと違った口調だったような?
(本当にニャン吉ですニャ! 正真正銘美紀様にお名前を頂戴したニャン吉ですニャ! あと、この喋り方がボクの素ですニャー)
なん・・・だと?
(どうして無駄に格好良く驚いているのか知りませんニャ、本当ですニャ!)
何故口調が変わっているのかしらん?
(だって、女の子にはちょっとでも格好いい所を見せたいですニャ!)
ふむ。
同じ男としてその気持ちは分からんでもない。
(なんて失礼なことを仰るのかニャ! 竜也様! ボクはこれでも女の子ですニャ!)
ふむ、普通に会話に困った。
というかだ。
何故ニャン吉は俺のモノローグに対し、会話が出来るんだ?
(そういう仕様なので)
仕様て。
そんなモノローグによる使い魔との会話に没頭していたのが要因だと思う。
「あっ! もしもし桜子ちゃん? そうそう久しぶりじゃないけど一応久しぶりね! あのね、今我が家に竜也が帰ってきてるわよ! あはは桜子ちゃんそんなに驚いちゃってー! そうよー! 桜子ちゃんの白馬の王子様が帰ってきたのよ! あ、そうそう! それとね、竜也と一緒に美女ア・ン・ド美少女五名様も我が家にご来店なさっているんだけどね、え? 何? どったの? うーん、そうね。今の所は・・・うん、グリシーヌさんっていう褐色の肌の絶世の美女で、何故かフォーマルなスーツを着用している完璧な男装の麗人なんだけど、それでいてお色気むんむんという美と美のケミストリー日本語で言うと化学反応を起こしちゃってる人が一番かな~? え? そう? うんうん。わかった! それじゃ、待ってるわね!」
「母君よ。私の名が話に出たようだが、今の会話は誰なのだろうか?」
と、少々困惑気味なグリシーヌ。
「え? あー、桜子ちゃんっていう、竜也のことがだ~い好きな女の子! 竜也が帰ってきたら教えて下さい~って言われてたからね! それでねそれでね・・・以下省略!」
って!
自分で以下省略って言うのはどうかと思われますぞ、お母様。
『そんなことが・・・』
はいはい、もうそんな古臭いリアクションはいいですから・・・え? そんな・・・。
再び再臨。
呪いの人形。
どこから湧いて出やがった!!
そんなに俺が憎いのか!!
「・・・あ、駄目ゴメス。今お話中だから。それと、そんな古臭いリアクションはいらない」
同じ意見で嬉しいよ、黒崎さん。
でもね――。
ゴメスってそれが名前!!
そんなんだから呪いの人形になっちまったんじゃねーのゴメス!
『あら、私としたことが失礼致しましたわ。おほほほほ』
にたぁ~っとした凄惨な笑みで笑われるゴメスさん。
もう堪忍して・・・。
「あらら? お人形さんが喋ってるわね? お母さんびっくりしちゃいましたよ! それにしてもこのお人形さんどうやって動いているのかしら? それにしてもパート2、このお人形さんとっても可愛いわね!」
「・・・・・・っぽ」
お母様の一言に、何故か頬を赤く染める黒崎さん。
「・・・・・・」
何も言わず、だが、感銘を受けたと言わんばかりの表情で黒崎さんは母さんの手を取り強制シェイクハンド。
「・・・ゴメスの良さを初見で見抜いた人は初めて」
「そうなの? こんなに愛らしいのに?」
お母様!
あなたには今も凄惨で残忍な笑みを浮かべながら、その小さな体をくねくねと動かす呪いの人形が可愛く見えているのですか!?
是非眼科へ行くことをお勧め致します!!
「・・・ゴメスとお友達になってください」
「それは駄目!」
「・・・・・・(がーん)」
鬼や!!
ここに鬼がおるぞ!!
持ち上げてからの、急速降下。
大変勉強になりました!
「私は、ゴメスちゃんだけじゃなくて、マリアちゃんともお友達になりたいな!」
「・・・・・・」
感無量過ぎたのか、黒崎さんは滝のような涙を流しながら、お母様の手を再び握って強制シェイクハンド。
何故か一人でうんうんと頷いている。
「・・・お姉さまと呼ばせてください」
『良かったですわね、マリア様! このように素敵なお姉さまがお出来になりまして!』
「・・・ありがとう」
勝手に人の母さんをお姉さまにしないでー。
うん?
母さんが黒崎さんのお姉さん。
↓
必然的に、黒崎さんは俺の叔母さん。
↓
同い年の叔母さん。
↓
どうしてか、そこはかとなく背徳的な・・・。
(竜也様ー、あのですニャ・・・)
と、ニャン吉が俺に語りかける。
(格好良くも、可愛らしいという絶妙なバランスを保った女の子がもうすぐここに来ますニャ! それと一緒に・・・)
母さんのさっきの会話の流れからして、それは桜子だろう。
しかし、どうしてわかるんだ?
(そういう仕様なのでニャー)
仕様て。
そんなときだった。
「竜也!!」
懐かしい声が聞こえてきたかと思うと、俺の胸に温かな感触が飛来した。
中性的な美形フェイスが俺を見上げる。
山中桜子である。
彼女は俺の胸に飛び込み、満面の笑みで俺を見ている。
そして中々に大きな禁断の果実が俺の胸板に押しつけられる。
うむ。
こういった強制イベントなら大歓迎なのである!
「会いたかったよ! 竜也!」
俺は固まった。
俺だけじゃなく、その場にいた母さんを覗いた全員が固まった。
桜子の言動に戸惑った・・・からではない。
桜子の後ろにいる人物を見て固まったのだ。
「ふ~、お嬢様ってばどんだけ急ぐんですか~! 早すぎですよ(笑)」
忘れもしない。
桜子を追いかけるような形で我が家にやって来たのは、軍服姿に顔を黒いフェイスガードで覆い隠した、見るからに怪しい人物であった。
『あっ』
六人が一斉に声を出した。
そして、俺は、俺たちは軍服姿に顔を黒いフェイスガードで覆い隠した、見るからに怪しい人物に視線を注ぐ。
「ん?」
そいつは首を傾げ、俺、マーちゃん、グリシーヌ、イリーナ、黒崎さん、朝比奈さんを順に見た後こう言った。
「そうです。そのまさかです」
まだ何も言ってねーよっ!
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