第二十四話:そんなこともあったね!
と、やっと続きをお届け出来ますね!
では、本編をどうぞ!!
昨日一日だけで本当に色々なことがあったと思うわけですよ。
我が家に来ると言うだけで、皆さま本当にテンションが上がってらっしゃいましたからね。
「でね、これが竜也が三才の時の写真よ! この写真に写っている竜也は、初めておねしょをしたときの竜也ね! あ、こっちの写真は結衣ちゃん、由愛ちゃんと初めて一緒に取った写真ね! このときの竜也ってばもうすごく照れちゃってね! まあ、不甲斐ない不肖な息子なわけだけど、やっぱりそんな息子でも母親の私としてはもう目に入れても痛くないくらいに可愛いと思ってしまうというか・・・でもでも! モテないモテないと思っていた息子が、まさか五人も女の子を家に連れ込むなんてね! 母さんとしては、ただ一人の女の子に愛を注いであげて欲しいのだけど、五人が五人ともこんなに美女、美少女だったら誰に愛を注ぐのかは迷っちゃうわよね! まあまあそこは、竜也の甲斐性に任せるとしまして! あっ! そうだ今さらだけどね、結衣ちゃんと由愛ちゃんっていうのは、我が家の天使! 我が家のツインエンジェルのことなのよ! 竜也とは三つ年の離れた双子の妹ちゃんズなのでした! あー、そうそう、二人がお兄ちゃんから何の連絡もないって嘆いていたわよ? もうちょっと妹たちのこともかまってあげなさいね! あー、でもでも母さん迷っちゃうなー! こんなに女の子がいても、竜也のお嫁さんになれるのはただ一人なわけでしょ? ということは、未来の娘もただ一人! さあ、一体誰が竜也のハートを射止めるのかしらね! 楽しみだわ!」
そこまで一息に喋り倒す我が母上に、俺以外の全員がぐったりとしていた。
まあ、俺は慣れているから平気なわけだが。
というか、昨日の出来事を回想し終わってすぐに、母さんのマシンガン・トークか。
懐かしくはあるんだけど、正直疲れる。
そんなことを考えていると、俺の肩をグリシーヌがちょんちょんと突いてきた。
「竜也よ」
「なんだ?」
「母君はいつも、その、このような感じなのか?」
さすがのグリシーヌも母さんのマシンガン・トークには参った様子だな。
「うーん、まあ、大体いつもこんな感じかな?」
「そ、そうか・・・」
そう。
こんな風に、母さんの前でグリシーヌと二人、こそこそと話していれば、母さんの標的になるというのは分かりきったことであったのに・・・。
こんな些細なことが、今回の事件の引き金になるだなんて思いもよらなかった。
いや。
俺じゃなくても、誰であっても予期出来なかっただろうな。
「あら? あらあらあら? ねえ、竜也。あなたの本命ってグリシーヌさんだったのかしら? うっそ! マジで!? まあ、母さんさっきこの中で本命は誰なのかーなんて言っちゃったけど、実は竜也の本命は桜子ちゃんだと思ってたのよねー! 母さんの母親の感は絶対に外れないという根拠の無い自信があったのだけど、まさか外れるとはね! まあ、もともと根拠が無かっただけに、外れたとしてもまったく悔しくもないんだけど!」
根拠の無い自信って。
それを自分で言うのはどうなのかということを問いたいです。
少し、時間は遡る。
千代木市内のとある住宅街を、白いスーツを見事に着こなした男が家路を歩んでいる。
男の額と右頬には大きな傷跡があった。
そんな男に近づく人影。
人影は息を殺して男に少しずつ近づいていく。
「・・・・・・」
「・・・ふ」
男こと、山中達郎は不敵に笑う。
そして、白いスーツの内ポケットに手を忍ばせる。
「・・・っ」
人影はそんな達郎の動きを見て、達郎との距離を一気に詰める!
「お帰りなさい! パパ!」
人影は達郎の背中を思い切り抱きしめた。
「ははははは! ただいま、桜子!」
達郎は、白いスーツの内ポケットから何かを取り出す。
それは、緑色の包装紙に包まれた単行本一冊ほどの何かだった。
達郎はそれを人影、否、山中達郎の娘、山中桜子に向けて渡す。
「少し早いけど、誕生日プレゼントだよ~!」
そう言った達郎の顔はデレデレに緩みきっていた。
「ありがとう、パパ!」
桜子は満面の笑みを達郎に向ける。
「いいんだよ~! パパは、桜子の為ならなんだってしてあげるよ~!」
「あはは! うん、ありがとう!」
普段の山中桜子という人物を知っているものなら驚くことだろう。
中性的アンド美形フェイスの桜子はボーイッシュな感じのショートヘアーに陸上で鍛えられた無駄のないスタイルの持ち主である。
その上、気さくな性格で誰からも好かれている。
常に男女とも分け隔てなく接している。
恋愛ごとの相談も、男女とも分け隔てなく受けている。
そんな桜子は、相談を受けると同じ数だけ告白も受けていた。
桜子に告白する者の大半は男だったが、中には同じ性別である女性もいた。
『性別を超えた愛の存在を一緒に確認しましょう・・・お姉さま』
とは、桜子に告白した女生徒の名言であり、伝説でもある。
そんな桜子だが、今まで誰に告白されても断り続けてきた。
断られた中には、藤堂竜也という名の男子もいた。
しかし、そんな桜子だが、父から渡されたプレゼントを受け取り恋する乙女のような顔でプレゼントに釘付けである。
「でも、いまさらどうしてそんな初歩的な魔法教本を欲しがったんだい? プレゼントならもっと別の物でも・・・」
「ううん。これがいいの! この教本じゃなきゅ駄目なの!」
娘の恋する乙女的な顔を見て、達郎は思った。
俺の天使を奪おうとする不届き者がいる。
「・・・竜也」
娘の呟くような言葉を達郎は見逃さなかった。
そうか、名前は竜也か。
ふむふむ。
そういえば、桜子ちゃんから頻繁に竜也という男の名前を聞いていたが、俺から俺の愛する天使を奪おうとしているのは竜也という名前のクソガキなわけだ。
達郎は瞬時に部下へと念話を送る。
(どんな手段を使ってもいいから竜也という人物を探し出せ! ああ!? 名字? あー、ちょっと待て。たしか・・・と、藤堂とかいう名字だったはずだ! ああそうだ! ああ!? ああ、そうだ! いや、ちょっと待て、こういう荒事に長けた奴を一人預かって
いたな。よし、奴の協力を仰げ!)
これは、竜也がマリンによって陵聖学園に連れて行かれたのと同じ時期に起こった出来事である。
ご意見・ご感想などがあれば是非に!!




