第二十三話:藤堂家家庭訪問前日
鋼の錬金術師は最高だね!
とか思いながら執筆しているわたしです(笑)
では本編をどうぞ!
事件はいつも唐突にやってくるわけで。
軍服姿の黒いフェイスガードで顔を覆った怪しい人物&操られていた皆さまが陵聖学園を襲撃した事件の後、嫉妬に怒り狂った美紀さんの攻撃を喰らい、危うく死後の世界へと旅立とうとしていた俺を、呼ぶ声が聞こえてきた。
『・・・・・・様』
誰でぃ!
ちょっと頑固な棟梁をイメージしての返事を思い浮かべた。
『・・・也様』
なんだか可愛らしい声だった。
少し舌ったらずな声は、聞き覚えのない声だが、こんなに可愛らしい声を聞いたのは始めてかもしれない。
『竜也様』
本当に誰だろう。
『もう朝ですわよ! 起きて下さいまし!』
なんとお嬢様口調でした。
本当に誰なのかとても気になる。
『起きませんわ。や、やはり、殿方にはお目覚めのせ、せ、せ、接吻などしなければいけないのでしょうか?』
それはマズイ!
俺には美紀さんという素晴らしい彼女さんがいるわけでして!
俺はベッドから飛び上がって起きていることをアピールすることに。
「起きてます!」
だが、俺の部屋には誰もいなかった。
はて?
さっき聞こえてきた可愛らしい声は幻聴だったのかな?
『ああ、やっと起きて下さいましたわね』
え?
どこにいるの?
誰も見えないよ?
『皆さんがリビングでお待ちになっていますわ。朝食の準備が整っておりますのでお越しになってください』
だからどこにいるの?
ちょっと・・・怖くなってきたのですが・・・。
ポテポテポテポテ。
と、なんだか間の抜けた音がした。
心なしか、足音・・・のような気がしないでもない。
その音が聞こえてくる方へ視線をやる。
小さな物体がとことこ歩いていた。
『では、失礼いたしますわ。なるべく早く着替えてきてください』
言って、小さな物体というか、どこからどう見ても日本人形にしか見えないそれは、俺に頭を下げた後、にたぁ~、と凄惨な笑みを浮かべて去っていった。
俺は、いつの間にか、あなたの知らない世界に迷い込んでしまっていたのか?
これ以上呪われるわけにはいかないという恐怖観念から、俺史上最速で着替えを終わらせ、皆が待ってくれているリビングへと向かう。
リビングの扉の前で一つ深呼吸をする俺。
やはり美女&美少女がいる部屋に入るのはかなり緊張するわけでして。
古いが、ただ古いわけではなく、歴史を感じさせる古さを持つリビングの扉を見て、そんなことを考えていた俺。
呼吸が整ったところで扉を開けて中へ入る。
「突然だけど~、明日ね~、竜ちゃん限定の家庭訪問をすることにしたから~」
本当に突然だった。
おはようも何も言う前にそんなことを言うマーちゃん。
「竜也くん! お、おはよう!」
美紀さんだけが俺に朝の挨拶をしてくれた。
「おはようございます、美紀さん」
「う、うん!」
なんと可愛らしくも愛らしいお人なのだろうか?
今日も今日とて美し過ぎるぜ、美紀さん。
「っていうかマーちゃん」
「な~に~?」
「俺の家族はみんな今、俺を覗いて世界一周の旅行に出かけているのでは?」
「そうだよ~!」
「それなら、家庭訪問なんて無理なのでは?」
「無問題~! 竜ちゃん一家は今、お家に帰ってきてるから~! 最近~、いろいろ大変だったでしょう~? だから~、竜ちゃんの~ママさんに~、理由を説明して帰ってきてもらったの~。どこかに移動しているよりも~、一か所に留まってくれていたほうが~守りやすいから~」
そうなんだ。
帰ってきてるのか。
そして、家庭訪問されてしまうのか・・・。
あの、見たものを必然的に同情させるような家を見られてしまうのか。
「だからね~、皆で~、竜ちゃんのお家に~家庭訪問するの~!」
「皆で!?」
「そだよ~」
ということは・・・美紀さんにも我が家を見られてしまうということなのか?
「あ、竜也くん。その、私はというか、私たちは行けないの」
私たち?
そういえば、すもも先輩の姿が見えないな。
「毎年、七月の下旬に四大貴族会議っていうのが開かれているんだけども、今年から私たちも参加しなくちゃいけないことになって。すももと虎之助くんはもう先に行ってるの」
だからすもも先輩の姿が見えないのか。
「そうですか・・・。残念です。美紀さんのことを、母さんに紹介しようと思っていたので」
「竜也くんのお母様に紹介!?」
「はい」
「うう、それは・・・すごく行きたいかも」
迷いの表情で悶々としている美紀さん。
「美紀よ。会議などすっぽかして、我らと共に行ってはどうだ? なに、心配はいらん。美紀に文句を言うような輩がいれば、私が八つ裂きにしてくれよう!」
と、超超超絶美女な姿のグリシーヌは言う。
ちなみに、グリシーヌは超超超絶美女なのにくまさんパジャマを見事に着こなすという荒業を習得しているらしく、そんなグリシーヌの姿にときめきを隠せない俺でした。
この場にイリーナもしくはすもも先輩がいれば、確実に何か言われていただろうが、あいにく二人は今はいない。
すもも先輩は美紀さんが言っていたように会議へと向かっているのでいない。
イリーナは、夢への旅路を辿っているのでいない。
「竜也くんのお母様にも会いたいけど、やっぱり会議も大事よね!」
肉親の危機を察知して、そう言う美紀さんだった。
うう、すいません、美紀さん。
「あと~、きーちゃんと~、まーちゃんも~一緒に行くことになったから~、よろしくね~」
「・・・暇だから」
「私は久しぶりにお父さんに会いたいから」
黒崎さんの言い分はわかる。
暇だからどこかへ出かけて暇つぶし。
でも、朝比奈さんは?
お父さんに会う?
どういうことだ?
「あ~、竜ちゃんは知らないんだよね~、きーちゃんのパパさんのこと~」
まあ、知らなくて当然だと思うのだが?
「ゴリマッチョ~!」
「は?」
「運転手~!」
「え?」
「竜ちゃんを~、こっちの世界にご招待した~、大きな水先案内人~!」
ポクポクポクポクポクポクポク・・・・・・チーン!
俺の脳裏に蘇る恐ろしき記憶。
本当にあの、アイコンタクトで会話を成立させる運転手が朝比奈さんのお父さん?
うん。
突然変異万歳!!
ご意見・ご感想などがあれば是非に~!