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第一話:さようなら、夢の高校生活

あの・・・実は・・・その・・・えーとですね・・・・・・・


何と言いいます・・・


まあ、あとがきで言います。

魔法が一般常識じゃん? 


などという不思議世界に変化したのは五年前のこと。


原因は不明だが魔法は五年前、確実に世界中の人間がその存在を突如認知した。


誰に教えられたわけでもなく、人々は魔法を扱えるようになった。


その利用方法は様々で、炊事洗濯から戦争まで幅広く、使用または研究されている。


魔法が世界中で浸透してきた中、二年前に日本、イギリス、アメリカ、この三国に世界初の試みとなる魔法学校が設立された。


まあ、魔法なんて非現実的なものの存在を信じていない、というか信じたくない俺にとってはどうでもいいことなんだが・・・。


だいたい魔法が使えたからなんだっていうんだ? 


みんなどうかしてる。


毎日毎日魔法の話ばかりだ! 


今日はどんな魔法が使えただとか、明日はあの魔法に挑戦してみようだとか。


魔法なんて使えなくて困るなんてことはない! 


あってもなくても同じだよ!            


ま、まあ、使えるに越したことはないだろうが・・・。

 

はあ~、どうしてなんだ? 


どうして世界中で俺だけが魔法を使えないんだ? 


俺はいわゆる落ちこぼれという存在なのだろうか? 


腐った蜜柑なのか? しかし、そんな憂鬱な気持ちを宇宙の彼方まで追いやる出来事が起こった。


それは、いままで魔法とは本当にこれっぽっちも無関係だった俺にとって不思議発見だった。


そんな俺が魔法世界に足を踏み込んでしまったのは忘れもしない三月十七日のこと。


この日は全国の受験に悩める中学三年生にとって自由を得るか、はたまた地獄行きの切符を問答無用に叩きつけられるかの運命の分かれ道。


そんな公立高校合格発表日だった。


俺が受験した高校は俺の住んでいる千代木市内にある天満南という学校だ。


南というからには他に北、東、西があるのかといえばそうではなく、ただ南にあるというだけだ。


天満南高校はどこにでもいる普通の教師がどこにでもいる普通の生徒にどこにでもある普通の教室で授業をする、普通すぎて欠伸が出そうな学校である。


そして俺は普通すぎて欠伸が出そうな学校から地獄行きの切符を渡されてしまった。

 

「・・・・・・・・・」


 言葉が出なかった。


いや、ショックだからじゃない。


合格発表の掲示板に自分の受験番号がなかったのなら、まだ諦めがついた。


自分の努力が足りなかったのだと。


しかし、俺は今回の受験に確かな手ごたえを感じていたし、自信もあった。


それなのに・・・。

 

「あっ! 君っ!」

 

合格発表を見に校門を渡ろうとした俺をバーコード頭の頼りなさそうな顔をした男が声をかけてきた。


年はすでに五十を過ぎているであろう小太りなその男は、バーコード頭にねちゃねちゃと嫌な音が聞こえてきそうになるほどの汗をかいていた。


よく見れば顔も青ざめていた。

 

「なんですか?」


 「ひっ!」


 厚意で声をかけてやったのにバーコード頭のおっさんは恐怖に顔を引きつらせ、数歩後ずさ

った。


これは俺の顔がヤクザも顔を背けてしまう怖い顔の持ち主だからではない。


と、思う。

 

「あの・・・」


 と、意を決したように男は言った。


 「はい?」


 「ひぃ~!」


 こめかみがひくついた。


 「あの・・・き、君は・・・」


 「はい?」


 用があるなら早く言えよ! 


こっちは合格してるかしてないかを早く確認したくてわざわざ慣れない早起きをしたんだぞ! 


本当は緊張して眠れなかっただけだが。


そんな考えを頭の中で叫ぶ俺に、男はごくりと喉を鳴らせて、


「き、君は、その、藤堂竜也くん・・・かな?」

 

「はい、そうですけど・・・俺がなにか?」


 何故このおっさんは俺の名前を知っている? 


それに何故鼻息が荒くなってるんだ。


マジでキモイです。

 

「本当に君は藤堂竜也くん本人で間違いないんだね?」


 「そうですよ」


 「そ、そうか・・・」


 おっさんはそれきり黙ってしまった。


俺の進行方向を遮ったまま。

 

「あの・・・」


 「うん?」


 「俺、合格発表を見に行きたいんでそこ退いてもらえますか?」


 「駄目だ!」


 おっさんは大声で、しかも短い腕を精一杯横に伸ばして俺の行く手を阻んだ。


なに? 


これはなにかの試練なのか?

 

「アンタさっきからなに言ってるんだ? つーかなんでそんなことするんだよ? 受験生が合格発表を見に行くのは当然だろ?」


 いい加減我慢の限界だったので思いっきりまくしたてててやった。


 「それは・・・そうだが・・・」


 「それならそこ退いてくれよ」


 「だ、駄目だ!」


 「はあ? だからどうして駄目なんだよ」


 「そ、それは・・・」


 俺とおっさんは周囲の注目の的だった。


当然だろう。


さっきからのやりとりを周囲の皆様は何事かと見ていたからだ。

 

「それは?」


 俺はおっさんに聞き返した。


 「それは・・・私がこの学校の校長だからだ!」


 校長?


 「君は・・・残念ながら不合格だ!」

 

「・・・・・・・・・」


 頭が真っ白になった。


次いで目の前が真っ暗になった。


なんだって?



不合格?


俺が?


はははっ!


馬鹿言っちゃいけないよ!


そんな・・・まさか! 


じゃあ今までの俺の努力は意味がなかったってことか?


そんなの冗談じゃねー!


今まで一年間遊ぶのも我慢して必死で勉強してきたんだぞ?


しかも確実に合格するためにわざわざ学校のレベルを二つも下げたってのに! 


担任の先生も俺だったら絶対余裕だって言ってたじゃねーか!


つーかやべーよ! 


俺はここしか受験してねーよ!



俺の家は貧乏だ! 


貧乏の中の貧乏の中の貧乏! 


キングオブ貧乏だ!


私立なんてとてもじゃないけど受験できませんでした☆ 


どこかのテレビ番組では一ヶ月一万円生活なんてのをやってるみたいだけど、俺の家は一ヶ月三千円生活だ! 

 

「おーい竜也!」

 

と、今後の人生お先真っ暗ルート突入決定な俺を呼ぶ声がした。


校門からは手を大きく振り小走りに俺の下へ走ってくる親友の山中桜子の姿があった。

 

桜子とは中学三年のときに知り合ったのだが、すぐに気が合い仲良くなった。


中性的アンド美形フェイスの桜子はボーイッシュな感じのショートヘアーに陸上で鍛えられた無駄のない体をしている。


しかし、鍛えられているとは言ってもそこは女の子であるからして、柔らかそうな肌である。


スタイルも抜群だ。


桜子はいつも笑顔を絶やさない元気の塊のような女の子で男女とも分け隔てなく人気がある。

だが、若干、女の子の人気が強かった。


そんな桜子とどうして親友にまでなったのかというと、こいつは最近の若い者(俺も一応最近の若い者だ)には珍しい倹約家なのだ。


しかし、ただの倹約家というわけではなく、桜子の家は金持ちなのだ。


それも大がつく金持ちだ。


そんな桜子は俺の長年の節約術の極意とも言える技の数々をどこからか聞きつけて俺を師と崇めるようになった。


もちろん最初は疑ったさ。


大金持ちのお嬢様が何故に? 


ってな。


でも、すぐに桜子が俺をからかっているのではないとわかった。


そして、俺は長年の節約生活で編み出した奥義を桜子に伝授した。


と、まあこれが俺と桜子の親友ヒストリーだ。

 

「ねえ竜也!」


 はっ!


 あまりのショックに楽しかった中学の日々を思い出していた。


そう、それは走馬灯のように。


まあ楽しかったのは学校だけで、家に帰れば勉強、勉強、また勉強だったけどな。

 

「竜也! 聞いてるの?」


 「あ、ああ・・・」


 「どうかした?」



 「いや、別に・・・」


 はい、どうかしまくりました。


たった今、目の前にいる校長と名乗る不審人物に俺は不合格だと告げられました。


って! そんなこと言えるかー! 

 

「そう? ならいいけど。あっ! それより合格発表見てきたよ! 合格おめでとう!

それにしても竜也はすごいね! トップの成績で合格だって!」


 「ふぇっ?」


 なんだって?


 「本当か!」


 「え? ああ、うん」


 ママ、天使様が僕の目の前にいるよ。


 あら本当ね。


 うん!


 ふふっ、きっと竜ちゃんがとってもいい子だから天使様が竜ちゃんにプレゼントを運んでき

てくれたのね。


 ぷれぜんとぉー?


 ええ、そうよ。


 「天使様!」


 俺は思わず桜子を抱きしめていた。


 「!」


 桜子は体をびくっ! とさせて驚いていた。


が、俺はそんな桜子には構いもせず、桜子の手をとり何度も礼を述べ、そしておっさんを睨みつけた。


今の俺はメドゥーサだって睨み殺せそうだ。


実際には無理だろうけど、それだけドスの効いた睨みってことだ。

 

「おっさん。冗談にしては本当に一ミリも笑えなかったよ。それにしてもどうして嘘なんて吐いたのかな~? 俺、知りたいな~」


 「い、いや、その、それは・・・」


 俺の怒りのボルテージがマックスになり、おっさんを抹殺するための必殺技入力コマンドが残り○ボタンだけとなったちょうどそのとき、大して広くもない校門前に黒塗りの大きなリムジンが甲高い音を立てて止まった。


周囲の皆様もざわめいている。

 

身長二メートル近くありそうな男が降りてきた。


男は後部座席のドアを丁寧に開く。


開かれたドアの中から降りて姿を現したのは薄いピンク色をしたロングヘアーが印象的な超絶美女だった。


紅い瞳の超絶美女は背も高く、優しそうな微笑を浮かべている。

 


「お騒がせして申し訳ありません」


 超絶美女は完璧な日本語で深々と頭を下げている。


周囲からは甘いため息が聞こえてきた。


もちろん俺からも。

 

超絶美女は誰かを探しているのか、キョロキョロと辺りを見回し、やがて俺と目が合った。


ニコッ。


太陽の輝きを思わせる微笑みを向けられた。

 

「さ、桜子・・・」


 「え?」


 「スナイパーの野郎、純真無垢なキューピッドちゃんに化けてやがった。くそぅ・・・俺はもう駄目だ! うぅ、た、頼む! 俺の代わりに、か、代わりに・・・・・・無念」


 チーン。


 藤堂竜也享年十五歳。


 「ちょ、ちょっと! 竜也?」


 そんなコントを繰り広げていると、超絶美女は優雅な足取りですぐ近くまで来ていた。


 やっぱり俺と目が合った。


 「藤堂竜也くん?」



 透き通るように綺麗な声がマイネームをコールした。何故所々英語なのかというと、超絶美女が異国の地の方だったからだ。


「イ、イエス! マイネーム イズ リュウヤトウドウ!」


「ふふっ」

 

わ、笑われた!


 「大丈夫。ちゃんと日本語を話せるから。それにさっきもいまも日本語だったでしょ?」


 あー! 


馬鹿か俺は! 


さっき自分で完璧な日本語だって感心してたじゃないか! 


恥ずかしさで段々顔が火照ってきた。

 

「ふふっ、か~わいい~」


 キャー! ホント恥ずかしい!


 「さっ、行きましょうか?」


 「あっ、はい!」


 そう言うと超絶美女は校長に向き直り、


「急な申し入れを聞き届けていただき本当にありがとうございました。それでは失礼致します」


言ってペコリとお辞儀をした。


 校長はこくこくと頷いているだけだった。


 「さあ~、お姉さんと一緒に行きまちょうね~」


 はーい! 


って、どこに!?


やばい!


さっきはわけもわからず返事をしてしまったけど、この人は一体俺をどこに連れて行くつもりなんだ?

 

「ちょっと待てっ! 行くってどこにだよ!」


 あまりの強引さについ乱暴な口調になってしまった。


 すると・・・。


 「ぐすっ・・・竜ちゃんは~、お姉さんのことが嫌い~?」


 と、泣かれてしまった。これじゃ俺が悪者みたいじゃねーかよ!


 「お姉さんが・・・嫌い?」


 泣きながらそんなことを言われれば嫌いだなんて言えない。


むしろ好きです!

 

「いいえ~! とんでもない!」


 「よかった~! それじゃあ行きましょうか~!」



 って、嘘鳴きかよっ!


読んでいただきました皆さまならばご理解いただけると思うのですが、こんな内容のお話ですので、作者である私の、前書きあとがきも今後はもう少し軽い感じでいこうと思います。


あっ、感想お待ちしております!

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