第十三話:愛ゆえに・・・。え? でも、それって犯罪だよね?
前回までのあらすじ。
回想終わったよ~!
では、本編をどうぞ!
「まあそういうわけです!」
「はぁ・・・」
「ち、違うわよ! いまの話は嘘よ! もうホント真っ赤な嘘だから!」
柊さんは頭と両手をブンブンと猛スピードで振り回し否定する。
「え~、本当だよ~! お姉さん嘘つかないよ~!」
「うっ・・・」
マリンさんの思わぬ反撃に声を詰まらせた柊さんがちらっと俺を見た。
え?
それじゃあ愛しの彼ってやっぱり俺のこと?
マジかよ?
ははは、こいつは困ったなー。
はい、自惚れですよ。
「美紀さん!」
「えっ!?」
突然名前を呼ばれてびっくりな様子の柊さん。
声の主は五十嵐だった。
五十嵐は自信たっぷりなご様子。
ビバ俺! とかいまにも言い出しそうな雰囲気だった。
「僕に会いにきてくれたんですね!」
「違う」
言って、柊さんは汚物を見るような視線で五十嵐を見る。
その視線は冷たいとかそういう次元ではなく、もう人として五十嵐を認めていないと視線が物語っていた。
つーかこいつ、いまの話聞いてたのか?
そんな柊さんの即答に「えっ?」と固まる五十嵐。
「そもそもお前は誰だ? 馴れ馴れしく私の名前を呼ぶな」
うわぁー、なんだか五十嵐かわいそう。
ああそうか、こういうところが女王と名づけられた由縁なのか。
まあ女王は女王でも女王『様』だよな?
「冗談でしょう? 冗談ですよね? だって、二年前に美紀さんは僕の告白に「うれしい、ありがとう」って言ってくれたじゃないですか!?」
「は? 私が?」
「ん・・・? ねえ美紀、二年前って言えば美紀がストーカーに悩んでいたころじゃないかに
ゃ?」
口元に軽く握った拳を当てたすもも先輩が思案顔で言った。
「あっ、そう言えばそんなこともあったような・・・」
自然と全員の視線が五十嵐へと向けられた。
「そ、そんな! 僕はストーカーなんかじゃないぞ!」
「じゃあ君は美紀とどんな感じで接してたのかな?」
と、すもも先輩の質問に五十嵐は堂々と答えた。
「直接会うのは恥ずかしかったので遠くの方から美紀さんを見守っていました!」
「というと?」
「はい・・・」
遠くから見守る。
↓
もう少し身近なところで見守る。
↓
心配なので思い切って学園生活を見守る。
↓
ああ心配だ。こうなったら美紀さんが家に帰るまで見守ろう!
↓
近くにいないと僕の大切な美紀さんを守れない!
↓
恥ずかしいけど思い切って告白だ!
↓
思いが実った!!
「ふーん、それで実際は?」
言って柊さんに向き直るすもも先輩。
「えーと・・・」
遠くから気持ち悪い息遣いの男が私を見ている。
↓
日に日に距離を縮める怪しい男。
↓
学校にまでついてきた変質者。
↓
遂に家までついてきた。この頃にすももに相談。
↓
気持ちの悪いことに、荒い息を吐きながら手を振り自分の存在をアピールしてきた。
↓
無言電話が一日五十件、送り主不明の小包が一日三箱送られてきた。
↓
すもものアドバイスにより無言電話に「うれしい、ありがとう」と答える。それで鬱陶しいストーカーは私の前から姿を消した。
「こんな感じだったような・・・」
典型的なストーカーじゃねーか!
「そんな・・・」
がっくりとうなだれる五十嵐。
そんな五十嵐に優しくそっと手を差し伸べる人物がいた。
「五十嵐くん」
朝比奈さんだった。
優しそうな女の子だとは思っていたけど、こんなストーカー野郎にまで優しいとはこの人は聖人か?
「朝比奈さん・・・」
言って、五十嵐が差し出された手を握り返そうとした瞬間、朝比奈さんはその手をぱしっと叩いて言った。
「この妄想野郎」
「えっ?」
「お前みたいな妄想ストーカー野郎はこの世に生きてる必要なし。このクズが」
笑顔でにっこりと言った朝比奈さん。
意外な人物にとどめをさされた五十嵐は完全に燃え尽きていた。
「いくら気に入らん言ーてもこんな姿見たらさすがに気の毒やと思うわ」
引きつった笑みで言った虎之助に、俺は黙って頷いて答えた。
「虎之助くん? 虎之助くんだよね? 君もこのクラスだったんだ?」
五十嵐のときとはあからさまに態度が違う柊さん。
好き嫌いはっきりしてるなー。
「久しぶりやな、美紀姉ちゃんにすもも姉ちゃん!」
「本当に久しぶりだね! 元気にしてた?」
「虎ちゃんはいつも元気だよね!」
「まあそれだけが俺の取り柄みたいなもんやからな!」
後に聞かされた話だが、実は柊さんの柊家とすもも先輩の美水家も四大貴族だという。
矢吹家は昔から柊・美水の両家と仲がよく、小さい頃は柊さんたちと一緒に遊んでいたとか。
「せや、紹介したいやつおんねん! まあ紹介せんでも知ってるやろうけど一応紹介しとくわ! 今日から俺の親友に決定した藤堂竜也!」
言って、俺の首をがっちりホールドする虎之助。
「よろしくね~!」
と、白々しく言うすもも先輩。
「それでそこの黒髪美少女が朝比奈きぬちゃんで、金髪美少女が黒崎マリアちゃんでいいんだね?」
「私のこと知ってくださってたんですか!? 感激です!!」
「・・・・・・初めまして」
「っんー! かわいいね~! よし、二人とも私たちと一緒に来なさい! あっ、嫌だって言っても連行するから。もっちろん、藤堂くんと虎ちゃんもだぞー!」
「喜んで!」
「・・・・・・お手柔らかに」
「しゃーないな」
「はあ・・・」
やっぱりすもも先輩のテンションは最高に高かった。
「それじゃあ約束通りこの四人を食堂に連れてきますねー! マリンの姐さんも絶対後から来よ!」
「うん! 絶対行くよ~! すぐ行くよ~!」
すぐ行くってこのクラスはこのまま放置しておくのか?
それはあまりにも治外法権だ。
「めんどくさいけど~、このクラスの担任を引き継ぐまで~、ちょーっと時間がかかりそうだから~、竜ちゃんとみーちゃんの出会いのエピソードでもみんなに聞かせてあげててくれるかな~?」
「了解しました!」
びしっと敬礼して答えるすもも先輩。
つーか、面倒くさいってなんだよ。
あなた仮にも教師でしょうが。
案の定クラスの連中は沈んでいた。
どうでしたでしょうか?
感想などがございましたら、お待ちしております!
ではでは~!