第九話:遅刻してしまう! そして俺は死んでしまう!
ふう~、連続投稿って疲れますね。
今後もこんなペースで続きを書けたらいいな~・・・。
あっ、すいません。
では本編スタート!
ただいまの時刻は八時十八分。
九時まで残り四十二分。
やばい。
激しくやばい。
絶対間に合わないって!
ミッションインポッシブルだって!
とにかく全力疾走で行けるとこまでいかないと!
そのとき少々混乱気味な俺の上空をなにかが通り過ぎた。
それは人だった。
「おーい! ちょっと待ってくれ!」
俺は自分の声の限界を超えた声で上空の人物に向かって叫んだ。
俺の声が聞こえたのか、その人物は怪訝な顔で俺の前に降り立った。
「君かい? この僕を呼び止めたのは」
その人物は男だった。
しかもかなり美形な男だ。
身長も俺より高く、百八十はありそうだった。
男にしては長い髪にすらりとしたモデル体系。
俺は同じ男としてちょっとショックだった。
所詮俺の体系は中肉中背ですよ。
「品性のかけらもない声だったから、てっきり野生の熊かと思ったよ」
その言い方は俺にも野生の熊にも失礼だ!
妙に癇に障るやつだな。
「うん? 僕は君をどこかで見たことがあるぞ? どこだったかな・・・」
「あの、悪いんだけどあの遥か先の城まで一緒に連れて行ってくれないかな?」
「嫌だね」
即答で断られた。
「どうしてこの僕が・・・ああ、そうか。どこかで見たことがあると思えば君はあの有名な藤堂竜也くんではありませんか。どうして君のような落ちこぼれがここにいるのかは知らないけれど、自分で魔法を使って飛んでいけばいいじゃないか」
こいつ・・・俺だって魔法が使えればお前みたいなやつに頼むわけないっての!
「フライ」
呪文を唱えると目の前のむかつく野郎は宙に浮かんで文字通り俺を見下ろしてきた。
ふん、と鼻で笑いやがった。
「さあ、早く君も飛びなよ。時間がないよ?」
「ぐっ・・・」
「ああそうか! 君は魔法が使えないんだったっけ? これは失礼」
そいつは仰々しい態度で言うと、自分の長い髪を両手でかきあげて言う。
「それでは僕はこれで失礼させてもらうよ? 入学式早々遅刻なんてしたくないからね。君は・・・まあ頑張って走るといいさ」
言って、男が走り去ろうとしたそのときだった。
ゴアアアッ!
大気を切り裂くとてつもなく大きな獣の咆哮が聞こえてきた。
ズシンと地を這う大きな音が響く。
最近どこかで聞いたことがあるようなないような・・・。
その足音は一歩ずつ近づいてくる。
近づいてくるたびに地響きは激しさを増していく。
俺にもむかつく野郎にも戦慄が駆け巡る。
「なに!? これなに!?」
「ぼ、僕が知りたいよ!?」
最初はこの近づいてくる謎の地響きの正体がなんなのかわからなかった。
だが、すぐにその謎の正体は判明した。
俺の目の前に黒い大木のようななにかが現れた。
先端には鋭く尖り、鈍く輝くものが光を発している。
黒い大木が腕で、鈍い光を発しているものが爪であるとわかるまでにそれほどの時間はかからなかった。
「ド、ドラゴン!?」
むかつく野郎の声に合わせるかの如く、俺たちの前に姿を現したのは黒いドラゴンだった。
全長が見えないほど大きなその黒竜の瞳はルビーのようにどこまでも美しく輝いていた。
黒竜の牙と爪はこの世のありとあらゆるものを破壊することができそうだ。
巨大な体躯に生えた翼は、自分が大空を支配するものであると誇っているようだった。
グルルッ!
そんな唸り声を上げた黒竜の口が大きく開かれた。
「な、なあ」
「な、なんだい?」
「なんかさ、周囲がやたらと熱いのは俺の気のせいかな? 気のせいだったらいいんだけどさ」
「ははは・・・残念ながら気のせいじゃないよ。僕もさっきから熱気を感じていてね」
「あのドラゴンはどうして口を開けてるんだろうな」
「さ、さあ・・・?」
嫌な予感がした。
俺の経験上、嫌な予感というものは何故か的中するもので。
今回も例外ではなかった。
開け放たれたドラゴンの口から巨大な炎の塊が放たれた。
炎は俺たちの目の前の地を焼き尽くした。
その場所にはなにも残らず巨大なクレーターがあっという間に出来上がった。
「ど、どうしてドラゴンが・・・」
とか言いながら逃げようとするそいつにしがみつく俺。
そのまま空に浮かんでいく男二人。
なんともシュールな絵の出来上がりだ。
「は、放せ!」
「嫌だ! 放したら喰われちまうよ!」
上空でそんなやりとりをしていると、そいつは俺に、にやりと不吉な笑みを見せて言った。
「誰かが囮になってアレに食べられる。その隙に一人は助かる。この場合・・・」
「お、おい、ちょっと待てよ・・・まさか・・・」
「囮は君だぁ!」
信じらんねぇ。
こいつ・・・。
「あっ・・・」
俺はあっけなく蹴り落とされた。
「はははっ! 僕はこんなところで死ぬわけにはいかないんだよ! 君みたいな落ちこぼれがこの僕の囮になれるんだから光栄に思いたまえ!」
六階建てマンション並の高さから俺は落とされ死を覚悟した。
駄目だ、死ぬ。
まだ正式に高校生にもなってないのに死ぬなんて。
やっぱり俺みたいな落ちこぼれが陵聖学園に入ろうってのが間違いだったんだ。
母さん、父さん、マイシスターズ、桜子、俺はここで死んでしまいます。
マリンさん、せっかく期待してもらってたのに裏切ってしまいすいません。
すもも先輩、応援むなしく俺はここで散ります。
モーガン・フリー○ン・・・・・・特に思い浮かぶことがなくてすいません。
柊さん・・・ごめんなさい。
こんな俺が柊さんを悲しませたなんて・・・。
最後の瞬間を迎えるために静かに目を閉じた。
ああ~、堕ちていく~。ルルル~堕ちていく~。
ここで一句。
「落ちていく、俺の人生、散々だ」
「竜也、季語が入ってないぞ?」
「季語?」
「俳句は季語がなければ俳句とは言えんぞ?」
「いいの、いいの。そんなこと気にしなくても。どうせ俺は死ぬんだし」
「ふむ、そうなのか?」
「そうだよ。この高さだぞ? 助かるほうがおかしいよ」
「この程度の高度に竜也は恐怖を感じるのか?」
「この程度ってあんたの神経どうなって・・・って!?」
「どうした?」
俺はさっきから誰と話してるんだ?
痛みもない。
落ちた気配もない。
「とりあえず下に降りるとしよう」
声がそう言うと、俺の体はふわふわと宙に浮いたような不思議な感覚に襲われた。
目を開けてびっくり。
俺は漆黒のドラゴンの背に座っていた。
ズシンッ!
轟音が鳴り響き、木々で小休止していた鳥たちは驚いて空に逃げていった。
呆然とその光景を眺めている俺に巨大すぎる尻尾が滑らかな動きで俺の体を包み込んだ。
こんな大きな尻尾に巻かれたら圧迫死・・・・・・はしなかった。
尻尾は俺の体を優しく包んでくれていた。
俺は漆黒のドラゴンの目の前に降ろされる。
「竜也」
「ひゃいっ!」
「お前が私を恐れることはない」
「わかりました怖がりませんすいませんだから食べないでください!」
俺は必死に土下座を連発した。
「食べないと言っている。人間なぞちっぽけな存在を喰ったところで私の腹は満たされない」
「そ、そう・・・ですか」
よかった~!!
「だが・・・お前は別だ。藤堂竜也」
「うぞづぎ~!」
「えっ!? ちょっと待て、どうして泣くんだ?」
「さっき食べないって言ったばかりじゃないッスかー!」
「あ、ああ、そうか。いまのは私が悪かった」
「へ?」
「違うというのはお前が他の人間たちとは格が違うという意味で言ったのだ」
「・・・それじゃあ食べない?」
「食べないと言っているだろう? むう、なかなか話が先に進まないな。そんなに私の姿が恐ろしいか?」
その問いに俺は人間の首の運動の限界を完全に無視した勢いで首を激しく上下に振った。
「そうか・・・」
心なしか、しゅんとした様子の黒竜。
「わかった」
そう言うとドラゴンは美しいルビーの瞳をすっと閉じた。
するとドラゴンの巨躯がみるみる縮小されていった。
「これでいいか?」
姿かたちはそのままに体だけが縮小されたミニマムサイズのドラゴンが首をかしげて言う。
なんだかかわいかった。
「大丈夫です。そのサイズなら怖くないです」
「そうか、なら話を続けるぞ?」
「お願いします」
「竜也、お前は魔力がなくて魔法が使えないのではない」
「え?」
いきなりな話に戸惑う俺。
「もともとお前には魔法の素養がないだけなのだ。だからお前は魔法が使えない」
「どういうことですか?」
「順を追って説明しよう」
ドラゴンはいろいろ教えてくれた。
世界には二種類の神秘があるということを。
一つはいまや世界中の人間が当然のように使っている魔法という神秘。
そしてもう一つの神秘、それは・・・。
どうでしたか?
皆さまに楽しんで頂けたら、本当に幸いです。
感想などお待ちしております。
ではでは~。