第七話:テンションが高い先輩は好きですか? そうですか。
ダイエットに成功!
あ、それだけ言いたかったんです。
では、本編スタート!
寮を出た俺は困った。
陵聖学園への道がわからなかったからだ。
いまの時刻は八時五分。
入学式が始まるのが九時ちょうど。
最低でも十分前には着いていたかった。
なのに道がわからない。
柊さんに道案内を頼もうにも部屋にいなかった。
他の女生徒も実家に帰っているらしく、実家から直接学園へ向かうのだとマリンさんに聞いていた。
そのマリンさんは殺害現場から逃走して行方不明だし、モーガン・フリー○ンはお亡くなりになられたし。
うーん、困った。
「おーい!」
「困った・・・」
「おーい! そこの君ー!」
「うん?」
「君だよ! きーみー!」
手をブンブンと大きく振っている女の子。
「君ってもしかして俺?」
「もしかしなくても君のことだよー!」
ショートカットに赤い髪の少女が俺を呼んでいた。
綺麗な小麦色の肌をしている少女は桜色のシャツに紺のブレザー、縦にラインの入った赤と白のスカートを見事に着こなしていた。
そんな少女がにっこり笑って近づいてきた。
「君かな?」
俺を呼んでいた少女は中世的な顔立ちで桜子と雰囲気が少し似ていて妙に懐かしかった。
そんな俺には気づかず、赤い髪の少女は空のように青く綺麗な瞳で俺をじーっと見つめてくる。
「うーん、やっぱり君で間違いないね!」
美少女はプルンとした柔らかそうな唇でそう言った。
近づかれて気づいたが、少女は中世的な顔立ちをしているがかなりの美少女だ。
そんなところも桜子と似ていた。
「君が藤堂竜也くんでしょ?」
「どうして俺を知っているんですか?」
「ふっふっふー! 私にわからないことはないのだよ!」
「はあ・・・」
「あー! いまの冗談だから! だからそんな容疑者Xを見るような目で見てくれるなー! ちなみにこの制服どう思う? かわいいでしょ? かわいいよね? これが陵聖の女子の制服なのだよ!」
「はあ・・・」
ますます怪しい。
「えーと、本当はある人から事前に藤堂くんに関しての情報を提供していただいてたのよ! 君の特徴やセールスポイントをねっ!」
そう言って胸の前でVサインをする美少女。
俺のセールスポイント?
俺にそんなのあるのか?
「うん! まったく情報通りだったわ! ボサボサの黒髪にハイエナのように鋭い瞳。百七十センチという平均的男子高校生の身長。一見怖そうに見えるが総合的な印象は母性本能をくすぐるというこの矛盾! あ~! この矛盾が可愛くもありかっこよくもある! さすがは姐さんだわ! 見る目があるわね!」
誰からの情報なのかわかった気がした。
「あのー」
「おおっとそうだったわね! 自己紹介がまだだったか! 私は陵聖学園二年の美水すもも! つまり君の先輩なのよ! あー! せ・ん・ぱ・いって言葉に欲情しちゃいやよ~! ちなみに陵聖学園新聞部の部長をやってんだよっ! まっ、それはさておき、すもも、すーちゃん、すももっち! どれでも好きな呼び方を選びなぁ!」
「それじゃあ美水先輩」
「うっ・・・ぐすっ、藤堂くんは~、私のことが嫌いなの? だから名前で呼んでくれないの?」
「うっ・・・」
泣き落とし!?
こんなことで泣き落とし!?
「いや、あの、すもも・・・先輩」
「よしよし! 最初からそう呼んでくれればいいのに~! 素直じゃないなー! でもここまで情報通りだと逆におもしろいわね!」
すごいテンションの高いお人だ。
「あの、すもも先輩は俺になにか用事でもあるんですか?」
「・・・・・・」
「先輩?」
「うっ・・・ぐすっ・・・」
ええっ!?
何故このタイミングで泣かれますか!?
「私は・・・ぐすっ、なにか用事がないと藤堂くんとお話ししちゃいけないの?」
「いや、誰もそんなことは一言も・・・」
するとすもも先輩は泣きながら俺の胸にすがりついてきた。
「バカ~! どうしてわかってくれないのよぉ! バカバカバカ~!」
なんて理不尽な!
わかるわけないでしょう。
あなたのテンションにはついていけません。
「バカバカバカバカバカ~!! びえ~~~~~~~ん!」
「あー、すいません! どうして泣いてるのかわかりませんけどすみません!」
「びっ・・・」
おいおい、また泣くのかよ。
「びゃははははははっ!」
「え?」
なんだ?
もしや壊れてしまったのか?
「あー、笑った笑った! 藤堂くんはおもしろいね!」
なんだか馬鹿にされているような気がしてならない。
「さあ、じゃあ行こうか?」
笑い終えたと思ったら、今度は俺の手を引っ張ってそんなことを言い出した。
「ど、どこに行くんですか!?」
当然の疑問を俺が口にした途端、先輩の手が俺からそっと離された。
先輩は俺のほうに向き直ったかと思うと照れたように顔を地面に伏せる。
よく見ると先輩の顔は真っ赤だった。
軽く握られた右手は口元に置かれている。
余っている左手はスカートの前でギュッと握られていた。
先輩の体は緊張しているのか小刻みに震えている。
「そ、そんなの私に言わせないでよ・・・。ホントにバカ・・・なんだから」
言って、チラチラと窺うように俺を見てくる先輩。
「えーと・・・先輩?」
「私、初めてなの」
「はい?」
「でも! 相手が藤堂くんなら・・・いいよ」
それって・・・まさか・・・。
ほ、本当にいまからどこに行こうというのでしょうか?
「女の子にここまで言わせたんだから、ちゃんと責任とってよね・・・」
責任?
「は、早く行こう!」
再び俺の手を取り、走り出す先輩。
もしかして俺はこれから大人の階段を登ろうとしているのでしょうか?
ドキドキしてきました。
ちなみに私の元の体重は90オーバー。
でも今は・・・?
感想お待ちしておりま~す!