『旅行とパンツとカメラバカ』
どうか読んでだ去ると幸いです。
修学旅行。
それは、日本の学校行事の中でも、指折りの思い出づくりの場である。
小・中・高のいづれでも、学生たちの一生の思い出となり、カップルが誕生する可能性も秘めた、正しく青春!!と言える場でもある。
「そう!彼女作るならやっぱり、修学旅行中だろ!と、俺思うんだけど、柳きいてる?」
電車に揺られながら、クラス一の変態(前科あり)の大城 大和は、隣で外の景色を無言で撮り続ける男に、問いかける。
問いかけられた本人は、まるで聞こえていないようで、黙々と撮りる続ける。
カシャ。カシャ。カシャ。カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ。
「―――いやお前撮りすぎだろ!!そんないい景色か!?ここ!」
あまりの没頭に、さすがの大城も大声でツッコんだ。流石に聞こえたのか、カメラを携えた青年―――柳 善賢は、鬱陶しそうに大城を見た。
「なんだよ大城。せっかくいいところだったのに。っていうか、電車内で大声はやめろって。周りの人に迷惑だろ」
「いや、誰のせいだよ!誰の!つーか、お前のカメラの音の方が何倍も周りに迷惑かけてるわ!!」
流石に我慢できなかったのか、大城は立ち上がり、そのまま柳の突っかかろうとする。
―――が。
「あいったー!?」
どうやら列車は、目的地に到着したようで、急停車し始めたことにより、何にも捕まっていなかった大城は、その反動で、倒れてしまった。そんな様子の大城を見て、柳は、呆れたようにため息をつき、そのまま電車を降りる準備をする。
さすがの関心のなさに大城は、柳に怒鳴る。
「おいっ!さすがに、この状況で無視はよくないんじゃないか!?少なくとも、クラスメイトで、小学校からの付き合いの俺を!?つーか、こっちぐらい向け―――」
「おい……」
大城の言葉は、知らぬ女性の声に、さえぎられた。
そこで、大城は、今の自分の置かれた状況に気づいた。今の大城は、転んだことで電車の床に寝転がっている。それは、はたから見れば、通学中の女子高生のスカートをのぞこうとしている変態であった。
「……」
ちょうど、大城の近くにいた女子高生は、まるで汚物をみるような眼で睨んでいた。
そんな彼をおいて、柳はスタスタと電車を降りて行った。
一人残された大城は、しばし考え込み、
「やっぱり白って、良い色だよね!」
顔面に靴の裏をねじ込ませるのだった。
* * * * * *
「言い訳があるなら聞こうじゃないか、柳……」
顔の原型をどうにか保っている大城は、自分を置いて行った柳に詰め寄っている。そんな様子を見て、問い詰められている柳本人は、そんなのお構いなしというように、周りの風景の写真を撮り続けている。
ブチッ!!
その態度で、大城の堪忍袋の緒が切れた。
「てめぇぇぇぇ!?こんな状況でも写真撮るのに夢中なのとかどうなの!?少なくとも、俺は、通学中の女子高生のおパンツ様が見れてラッキーであり、不幸だったんだぞ?なのに、お前ときたら……」
グッとこぶしを握り締め、柳に怒鳴る。
柳は、そんな大城を心底めんどくさそうに見た。
「今だからこそだ!この一瞬の光景と出会えある最高の時間を無駄になんてできようか!!」
いつもの数倍のテンションで、柳は叫んだ。
一期一会の写真