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光が見えます

作者: かねこふみよ

 光が見えます。といきなりに聞こえてしまったのなら、さぞかし怪しげな文句をほざき始めたとお思いになられることでございましょう。「濁ったオーラが見えます」、「守護霊が泣いているのが見えます」などなどと友人が言い始めたのなら、わたくしも眉をしかめて「こいつは何を言い出したんだ」と心の中で思いながら愛想笑いをしたことでございましょう。

 ところが、でございます。わたくしが申し上げたいことはそうしたことではございません。あれは、5日ほど前でございます。もう床に就こうかと居間の戸を開けたとたんでございます。門灯のない、真っ暗なはずの玄関、それも外の方で排球くらいの白さにわずかなオレンジ色を含んだ光が点灯したのでございます。通り過ぎたとか、揺らめいたとかではございません。点灯をし、次の瞬間に消えたのでございます。家の建て具合からして、例えば自動二輪車が接近してということはございませんし、仮にそうだとしてライトを点けて消してそれっきりというのは嫌がらせにしてはお粗末でございます。そもそもエンジン音はございませんでした。

 一昨日のことでございます。自室を出た時のことでございます。入浴を終えて、麦焼酎のお湯割りのおかわりを作ろうかと台所へ向かおうとしていたのでございます。廊下を数歩進むと突き当りが再び光ったのでございます。酔っていた? まったく酔っていなかったと申し上げればそれこそ酔っぱらいの虚言になってしまいます。2杯飲み終えた、とだけ申し上げておきます。ただ、その夜の瞬間のことをはっきりとこうして申し上げているという点もお心にお止めいただきたい点でございます。その光はやはり排球ほどの白いようでオレンジ色がわずかに含まれているような色でございました。ただ、初見の時とは違いました。形でございます。四角い光だったのでございます。それがやはり点灯して消えたのでございます。

 それと今日。あなたがいらっしゃるということでクッキーでもと午前中から台所に立っている時のことでございます。すっかり型抜きまで終えて焼き始めたので、道具類を洗おうかとシンクの前に立って、ふとスポンジを見下げた時でございます。スポンジがほんのりと光ったのでございます。スポンジですから排球の大きさではございませんし、白い中にもオレンジ色が含まれている色でもございませんでした。点灯として消えたというよりも、蛍を見た時のようと申し上げた方がふさわしいような気が致します。いえ、あなたのお名前をもじったわけではございません。本当にそのように見えたのでございます。

 え? ああ、眼鏡ですか? それがですね、ここのところ眼鏡をかけなくても視界がはっきりとしているようなのでございます。お医者様に伺おうかと予約を致しました。ああ、そうです。おっしゃる通りですね。光が見えるようになってから、でございますね。目が良くなってきたのは。不思議なことと言うのはどこにでも誰の前にでも起こっている、と言うことでございましょうか。誰の後ろに起こっていたとしても見えませんが。悪い冗談はおよしなさいって? 失礼いたしました。でも、それくらいに不思議に思いましたもので。

 お茶のおかわりはいかがでしょうか? はい、では湯呑みを。

 え? ええ。滞りなく済みましたよ。これをお飲みになったらご覧になりますか? 一週間前にすっかり修繕した、庭の小さなお社を。


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