お泊まり会 その2
「初めてこんなにお洒落したかも」
「頑張った甲斐がありますわ」
大きめの鏡の前でパーティーの日よりも豪華なドレスを着た、美少女が立っていた。最初は嫌がっていたものの途中からは受け入れた。
途中からメイドも加わり、三時間近くかかった。そしてお洒落をしたことがない筑紫にとってカルチャーショックを受けるほどだった。
「そのドレス差し上げますわよ? 私より筑紫ちゃんの方が似合いそうですし」
「えぇ……? 流石に貰えないよ」
「遠慮は良いですわよ? タンスの肥やしになるよりは似合う人に渡した方が良いですわ」
「んー……じゃぁ貰うね」
「ふふ、分かりましたわ」
時間は既に夕方になっている。紗夜は筑紫を呼ぶとキッチンへと案内した。
「どしたの?」
「お泊まり会ですので私たちだけで夕ご飯を作りますわ、食材は用意してあるので問題無いですわ」
「何作るの?」
「ピザを二枚ですわ、コーンとベーコンで良いでしょうか?」
「おー、良いね」
そして二人は早速生地を作る。紗夜は慣れた手つきでしているが筑紫は何故か恐る恐る、不安気に行動していた。
その理由は単純に筑紫が料理をしたことがないからだ。段取りが悪かったりレシピが書かれた紙を見ても上手く出来ていない。
「大丈夫でしょうか……?」
「う、うん」
「これは……今度お料理の勉強会が必要ですわね」
「こ、これで合ってるよね?」
「それはまだですわ?!」
「え?!」
まさかこの段階で躓くとは思っていなかった紗夜は悲鳴をあげながら手伝い、何とか生地を作ることに成功したのだ。
発酵の途中で、紗夜が筑紫にベーコンを切ることをお願いして包丁を取り出す。そして包丁を筑紫が明らかに危ない持ち方で持ったのだ。
「ダメですわ?! つ、筑紫ちゃん? お料理はしたことはあるでしょうか……?」
「小中の実習でならあるよ?」
「……私が教えますわね」
「え?」
紗夜は筑紫の後ろに立って筑紫の手を取り、身体を密着させる。
「ひ、一人で出来るから!」
「その前に指を切り落としてしまいますわ。ほら、猫の手にしてくださいね」
「えーと……これか」
「それをここに置いて上から下ではなく引いて押すようにしてくださいね」
「わ、分かったから離して?」
「危険すぎますわね、これからはしばらく包丁を持つ時は私と一緒ですわ」
「僕だってこれく」
「何か言いましたでしょうか?」
「ひっ……な、何でもないよ」
背筋が凍えるような視線を向けられて筑紫は大人しくなる。そこからベーコンを切り終わったのは発酵が終わった頃だった。
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