お泊まり会 その1
「夏休みの思い出ちゃんと作ってきなさいよ?」
「もう色々作った気がするけど……」
「学生は遊んでナンボよ」
「はいはい、じゃぁ行ってくるね」
そう言って筑紫は紗夜の屋敷へと向かう。手には着替えやVRゴーグルなどが入っている。VRゴーグルに関しては紗夜から持ち物として指定されていた。
入り口まで行くと既にメイドの一人が待機していた。そして筑紫の姿を見るや否や目を見開き手を振り始まる。
「筑紫様、お待ちしておりました」
「もしかしてカナルさん?」
「えぇ、現実での名前は華那です」
「少しの間よろしくね」
「此方こそよろしくお願いしますね、紗夜様がお待ちですので中に入りましょう。それか私に抱っこされながら」
「遠慮します」
華那も他のメイドと同じようにそう言うが、いつも通り筑紫は断った。ちなみにパーティーの日に雨音や晴翔に飲み物を入れていたのも彼女である。
紗夜の私室へと案内されると、二人分の椅子やお菓子など様々な物が用意されていた。そして紗夜も座っていていた。
「ふふ、筑紫ちゃんよく来てくれましたわね」
「ん、来たよ」
「メイドたちは下がっても良いですわ。荷物はそこに置いてくださいね」
「はーい」
「分かりました」
そう言ってメイドたちは部屋の外へと出る。部屋には紗夜と筑紫の二人だけになった。荷物をベッドの横へと置き、椅子に座って筑紫は一息つく。
「てかお泊まり会って言っても何するの?」
「折角なので先ずはトランプでババ抜きでもしてみようかと」
「そいやあまり学校とかでやったことなかったね」
彼女たちは遊ぶと言うよりは雑談したり甘やかす方が多いのだ。紗夜は器用にトランプをシャッフルし、カードを渡して行く。
(紗夜っていつも心読んでるのって言いたくなるような行動取ってくるしなぁってジョーカー来たし)
「では先行は譲りますわ」
「良いの?」
「はい」
紗夜は満面の笑みでそう言った。そこから数ターンは何もなくお互いカードが減っていき、しかし筑紫の手にジョーカーが残ったまま紗夜の手札が一枚になる。
「何でそんなに避けれるの?!」
「だって顔に出てますわよ?」
「え?」
「ふふ、ポーカーフェイスですわよ?」
「そ、それくらい出来るもん」
「ほら、こっち引きますわよ?」
「……」
「あ、また顔に出てますわ」
「何で?!」
そして最後の手札が引かれて筑紫は敗北した。それからはトランプを片づけてメイク道具を代わりに取り出した。
「前にシルクロードさんと私にメイクされたのは覚えていますでしょうか?」
「う、うん」
「少し練習台になって欲しいなですわ」
「……良いよ」
「ありがとうございますわ♪」
「お、お手柔らかに?」
「全力でしますわね!」
「ひっ……」
この後髪型を変えられたり色々なメイクを試され、着せ替え人形にされたと言う。
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