殲滅作戦 その2
「《ボムショット》、思ったより数が多い?!」
「恐らくまだまだ来ますわ! 《木槍の祈り》」
「「ぐふぅっ?!」」
四方八方から襲いかかって来るPK集団を見てニャイアルは悲鳴混じりな声を上げた。だがサヤは無慈悲にもそう返す。
一切休む暇もなく処理をしているが、まだまだ数は多い。カナルたちとレインも奮戦しているが勢いが減る様子はないのだ。
援護射撃自体は行われているが、後ろに居るPKが多いせいでニャイアルたちの姿が見えない。また逆も然りなのだ。
だがレインは近寄って来る存在からメイドたちを守る役割を担っている。弓矢や魔法も躱せているのでまだ問題はない。
「《ボムショット》」
「《恵の祈り》」
「「がふっ?!」」
「何だこれ?!」
「喰らえ《ナックルスタンプ》!」
「爆破で巻き込めるのは良いけどMPがヤバいかもって危なっ?! 《ブリーズショット》」
「ウルルはあまり離れすぎないでくれると助かりますわ!」
「ガゥッ!!」
振り下ろされる拳を間一髪で避けてブリーズショットで頭を撃つ。サヤはニャイアルの代わりに遠くに行きかけていたウルルに指示を出す。
予めサヤの命令も聞くように言っているためこう言うことが可能なのだ。そしてこの戦場で現在一番素早いのがウルルのためニャイアルたちの生命線でもある。
動きながら撃つことは慣れているためほぼ外さない。PK集団側の遠距離攻撃はカナルたちに倒されたり、自分達の仲間と言っても別パーティーのプレイヤーには当たってしまうためそこまで活発ではない。
サヤは兎も角ニャイアルは避けることを優先していた。その後の反撃も当たる確率が高いとき以外は距離を取っていた。
「やべ……そろそろMP三割切る」
「メイドたちの方向が数が少し減ってきているので包囲を突破して一旦隠れましょうか」
「だね、全力で走ったら追いつかないはずだし」
小声でそう話し、早速向かう。カナルたちは交代で撃っているのでまだMPが残っている。後方のPKたちの数も減らしているのでチャンスなのだ。
「ウルル、全力疾走で突進して!」
「ワゥッ! ワォーンッ!」
ウルルの足が黄色く光り、途轍もない即座で突っ込んで行った。助走を付けた突進はプレイヤーすら突き飛ばす。
今は武器も持っていてスキルも加わったのだ。何人かのプレイヤーが巻き込まれ、辺りはドミノ倒しのようになった。
「《ボムショット》《ブリーズショット》」
「《石獄の祈り》」
石獄の祈りは樹の祈りとは違い、複数の敵を拘束出来るのだ。その代わり消費MPは二割ほど持っていかれ、溜め時間も長いため連発は出来ない。
だが溜め時間はニャイアルが何とかして守っているため解決した。そして二人の魔弾と魔法により包囲を突破出来る穴が空いた。
「逃げられるぞ! 穴を埋めろ!」
「させません! 《チャージショット》」
「し、《刺突乱舞》!」
「ありがと!」
「貴方たちも一旦引いてください!」
即座に塞ごうとするがそれはレインとカナルたちによって阻まれる。サヤの言葉を聞き、カナルたちとレインも足止めしながら後ろへ引く。
「上手く走れねえ!」
「おい押すなよ!」
「ふ、踏むなぁ!」
「ボアの靴用意しないから……」
「敵に塩を送ってはいけないですわ」
「ば、バイバイ」
PK集団は一部しか砂漠での移動を楽にする装備やスキルを持っていなかったのだ。しかも敏捷値の違いで押し倒されたり転けたりしている。
「そこ、隠れられそうじゃない?」
「待ち伏せする形で行きましょうか」
そしてニャイアルたちは無事に潜伏することに成功したのだった。
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