説得しよう
サヤはここ数日間、パーティーの準備や後始末、諸々の連絡や指示出しなどをしていた。そのせいか疲れで判断力がかなり鈍ってきている。
「私が休んだとして、ニャイアルちゃんが代わりに無理をするでしょう?」
「……そりゃそだよ」
「なら休むわけには行きませんわ」
「うぐ……」
ニャイアルとサヤの仲はただの幼馴染と言うわけではない。それよりももっと特別な何かとなっていたのだ。
しかしニャイアルは最後の抵抗をする。
「…………休んでくれたら泊まりに行くよ」
「?!」
それを聞いた瞬間にサヤがかなり驚いた。まさかニャイアルからその話を出されるとは思わなかったのである。
今までサヤはお泊まり会をしようとニャイアルを誘っていたものの、毎回断っていたのだ。だが今はこうして自分から申し出ている。
今を逃せば二度とチャンスは無いかも知れない。サヤはついに折れたのだ。
「分かりましたわ、でも必ずしましょうね?」
「う、うん」
「絶対ですわよ?」
「は、はい……」
「では明日から当日までの間、休ませて頂きますわね」
「うん、ゆっくり休んでね?」
だがニャイアルも苦し紛れだったのでまさかこれで通るとは思っていなかった。だが背に腹は変えられないのでこうするしか無い。
「それと……」
「さ、サヤぁっ!?」
「会えないのでこれくらいは当然ですわ」
サヤはニャイアルをハグして頭を撫でていた。なおコッソリ見ているつもりのメイドたちとレインは鼻血を流したり小声で歓声をあげたり、混乱していた。
「では、辛くなったらいつでも言ってくださいね? それとレインちゃんの槍も渡しておきます」
「過保護……」
「過保護じゃないですわ、当然のことですわよ?」
「はいはい」
「それでは」
そう言ってサヤはログアウトしたのだ。そして後ろで見ていた彼女たちを見る。カナル以外は驚いたような表情をしていた。
「だからバレると言ったでしょうに……」
「ニャイアル様の聴力って……」
「二つ先の部屋で小声で会話してても聞こうと思えば聞けるレベルですよ? あんなに足音を立てていったら自分達からバレに行っているようなことでしょうね」
「にゃ、ニャイアルさん凄い……」
「まぁ別に良いよ、連絡の手間も省けるし」
「ニャイアル様は……いえ、これ以上はいけませんね」
「な、何?」
「何でもないですよ」
カナルは笑顔でそう言った。これ以上聞いても教えてくれそうにない。ニャイアルはレインの槍の性能を見ることにした。
見た目は真っ黒だが、禍々しい感じはしない。
黒鉄の槍
攻撃力:128
効果:認識阻害・小、軽量化。槍士装備不可
認識阻害は相手が槍を見づらくなると言う効果、軽量化は文字通り槍が軽くなる。どうやらこの素材もサヤが集めていたようだった。
「さてと……レベル上げ行くよ」
「「はい!」」
「は、はい!」
こうして第二の街の外に向かうのだった。
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