ボスを倒そう
レベル上げが終わったのはその日の五時のことだった。普段していないことを長時間やったせいかかなり疲れが溜まっている。
するとベッドの上で倒れている筑紫のスマホから着信音が聞こえてきた。画面を見ると紗夜がかけてきているようだ。
「もしもーし?」
『こんばんはですわ、調子の方はいかがでしょうか?』
「疲れた」
『それはお疲れ様ですわ、メイドたちも喜んでプレイ出来たと聞いておりますし。普段冷静なメイド長ですら顔が綻んでいましたわ』
「結構無茶させた気がするけど……楽しんでたらなら大丈夫か」
メイド長とはカナルのことである。どうやら狙撃練習と言う名のスキンシップが好評だったが、筑紫がそれを知る由はない。
『明日からですが、私も参加出来ますわ。パーティー枠はまだ空いているはずですし』
「空いてるよ、雨音ちゃんの方は途中PK穴だらけにしてたし」
初心者の群れと勘違いしたのか三人のPKが襲ってきたが、筑紫の狙撃と雨音の槍によって返り討ちに遭うと言う事故が起こった。
『ふふ、順調ですわね』
「ボス戦まで明日は行っちゃおうかと思うんだけど良い?」
『よろしくお願いしますわ、私も援護程度で留めておきますわね』
「はーい」
その後は細かいことを決めて通話は終了した。そして次の日、決めた時間にニャイアルたちは集合する。
「今日はボス倒すよ」
「「分かりましたニャイアル様!」」
「ひゃ、ひゃい!」
「これは驚きましたわ……」
側から見れば軍隊のようにも見えるのだ。横を通るプレイヤーからは変な目で見られるがそこは仕方ないとニャイアルは割り切っていた。
ステータス確認だけ済ませ、二時間ほどレベル上げをして昼休憩を取ってからボス戦エリアへと移動する。
メイドたちのレベルは三から五、レインは五だ。
エイム力も上がっており、四発中一発は最低でも当たるようになって来ているのだ。覚えが良いのとニャイアルの教え方が適切だったから、と紗夜は言っている。
そしてボス戦前の小屋へと辿り着き、ニャイアルは説明を始める。
「ビッグベアって言って最初は脅威じゃ無いけど、後半戦になったら木を回してくるから注意してね。手のひら撃ったら離すよ。質問は?」
「手のひらを狙うのは難しいですか?」
「んー……空中で撃ち抜いたから分かんない」
「精進します!」
「ニャイアルちゃんの狙撃術は真似しようにも出来ないので気をつけてくださいね」
「サヤ?」
「ふふ、事実ですわ」
ニャイアルの説明が終わると、ボタンを押して転送される。紗夜の方もボタンを押して転送される。特に待ち時間などは無いので同時並行で戦えるのだ。
「さて……頑張ってね?」
「行きますよ、貴女たちは散っていつでも撃てるようにしなさい」
ニャイアルも危険な時以外は手を出すつもりはない。カナルが中心となって指示を出していく。ヒットアンドアウェイを撤退させているおかげか目立った被弾はなく後半戦へと進めた。
「ガゥア!」
「きゃあっ?!」
「一旦離れなさい! 言われた通り手のひらを狙って撃って!」
カナルは早く弱点を撃って木を落とすことにした。そしてそれぞれ狙うがよくて腕で手のひらには当たっていない。
「一発だけ撃つね」
ニャイアルは構えて足を撃った。手のひらを撃つとメイドたちの練習にならないためである。ビッグベアはよろめき大きな隙が出来た。
「今なら……《チャージショット》」
「ガァッ?!」
メイドたちの中ではカナルのみビッグベアの正面に立っていた。そしてチャージショットで撃ち抜くことに成功したのだ。
その後は蜂の巣にされ無事にビッグベアの討伐に成功したのだった。
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