照準を合わせよう
パーティー分けはニャイアルとメイド五人、レインとメイド四人になった。とは言っても固まって動くので誤射にさえ気をつければ問題はない。
人数が多い分、ニャイアルが不意打ちを警戒しなければならないがそこは魔力探知と聴覚でカバーをするしかないのだ。
「懐かしいなぁ」
「す、凄い……」
ニャイアルはサヤと合流した時の記憶や、初めてPKに襲われた思い出が蘇る。メイドたちもやる気満々でレインはリアルな草原に驚いていた。
「あまり僕から離れないでね、レインちゃんの種族は……犬の獣人かな?」
「は、はい! 犬が好きなので!」
「そっちは……バラバラだね。レベルも低いしHPも無いから被弾は避けてね」
「絶対に離れません!」
「はい!」
ニャイアルの隣に居るのは、昨日紗夜に付きっきりだった黒髪ロングのメイドだ。ゲーム内ではカナルと名乗っている。どうやらカナルがメイドたちの纏め役だそうだ。
カナルの種族はエルフ、HPは低いが草魔法と言うスキルは最初から持っているみたいだ。他のメイドも特にニャイアルやサヤのような特別な種族では無かった。
ウルルはパーティー枠にはカウントされないが、今回は過剰戦力なので呼び出さない。そして早速スライムの群れが襲いかかってきた。
「素早くだけど焦らないで照準を合わしてね」
「わ、私たちの方も頑張ります!」
ちょうどレインパーティーの方も同様の群れに襲われていた。ここのスライムは動きは鈍くあくびが出るほどである。
だがしかし、ニャイアルにとって予想外のことが起こった。
「あれ……」
「きゃぁ?!」
「ニャイアル様申し訳ありません!」
「ニャイアル様これは……」
なんと五人中二人しか弾が当たらなかったのだ。成功した二人も、カナルは三発中二発は当たったがもう一人は三発中一発当たっただけなのだ。
構えも言わなかったせいか、ニャイアルからすれば変な構え方をしていた。
「レインちゃんの方は……」
「《パワーヒット》!」
レインパーティーの方も、ほとんどの敵をレインが倒していた。ニャイアルはどうすれば良いか迷った結果、実演することにした。
「見てて」
狙いは初期の頃によく経験値となっていたスピアニードル。その場に伏せて三十メートル先のそれを撃ち抜いた。
メイドたちは拍手をしており、メモ機能で何かを書き留めていた。
「基本は伏せて撃った方が当たりやすいよ、後はどれだけ慣れるかだし」
「「はい!」」
その後は覚えが良いのか全員一発は命中するようになった。とは言ってもまだまだなのでニャイアルが直接教えに行く。
「構え方は合ってるけどここはこうで……」
「分かりましたニャイアル様っ!」
何故かその時だけメイドたちのやる気が数十倍に跳ね上がっているがその理由はニャイアルには分からなかった。
(後五日……間に合うかなぁ)
最低でも第三の街までは到達しておきたいとニャイアルは考えていた。一抹の不安を抱えながらレインとメイドたちを見守るのだった。
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