素敵なパーティー その4
周りは背が高い草が生い茂っており、隠密は出来そうな様子だった。魔力探知が使えない以上、聴力だけが敵を探す頼りなのだ。
マップは草原だが三つのゾーンに区切られている。筑紫が居る場所は高い背丈の草が生い茂るゾーンに木が多く生えているゾーンや開けているゾーンだ。
筑紫は近寄られたら詰みに近い武器構成なので隠れられる所にスポーン出来て助かったのだ。慎重に敵を探すこと五分、視界の端に一つのメッセージが表示される。
『ロネが名倉に倒されました』
誰が誰なのか筑紫は把握してないが、ファーストキルが発生したのだ。ちなみにだがパーティー会場に居る人たちには勿論見えている。
「ええと……後一人倒されたら収縮ね。コンパス機能あって良かったぁ」
筑紫は二人倒されるごとに戦える場所が狭くなることを思い出す。幸い常に視界には北の方向は分かる機能が付いているので迷うことはなかった。
そしてついに筑紫は一つの足音を捉える。方角は前だが十メートルほど離れていることが分かった。だがまだ正確な位置が分からない以上発射はしない。
(ん、草が一瞬動いた)
その場にじっとしていると不意に足音が聞こえた方向の草が動いたのを見た。スナイパーライフルを構えて集中する。
「ここら辺だと思ったんだが……」
(みっけ)
先に尻尾を出したのは相手だった。足音だけでなく声まで出してしまったなら、筑紫の前では自殺行為になってしまう。
(ヘッドショットはまだ狙えないけどこれだけ分かれば十分)
素早く照準を合わせて発射した。そして急ぎつつも慎重に場所を変える。
「ぐはっ……そこか!」
命中したがまだHPは残っている。斧を持った男が筑紫の居た場所に向かうが、その隙に筑紫は相手の背後を取った。草の隙間から男の頭が見える。
「バイバイ」
「何でそこn」
相手は頭のど真ん中を撃ち抜かれてポリゴンの欠片となった。筑紫の聴力と正確なエイム力が無ければ出来ない技なのだ。
しっかりとキルログも流れていた。来た道の方を見ると紫色の如何にも毒ガスのような煙が迫っていたのだった。
「急がなくちゃね」
筑紫は中央に行くために走り始める。だがその数秒後に二つのキルログが流れた。どうやら相討ちだったようだ。
これで残りは四人、筑紫も急いではいるが既に中央付近に待ち伏せされている可能性は十分にある。いつも以上に聴力を研ぎ澄ませて向かった。
だが運が良いのか悪いのか、中央付近に着くギリギリで襲撃を喰らう。
「あっぶなぁ?!」
「は、外しちゃった……」
足音は聞こえなかった。間一髪で槍が突き出される音を聞き取った筑紫は急ブレーキで回避し後ろに下がって、転がるようにして開けたゾーンに出た。
「お、お姉さん死んでくださいっ!」
「やだよ!」
姿は小学生位のおどおどとした少女が物騒な槍を持って襲いかかってきた。動きは何らかの武術なのかキレがある。
「えとえと、雨音って言いますから死んじゃぇっ!」
「自己紹介どーも?!」
筑紫はビッグボアからの突進やロックバードの攻撃、PKたちとの戦闘によって多少の攻撃は避けられるようになっていた。
だが雨音には隙と言う隙が筑紫には分からなかった。一旦スナイパーライフルを背負い込み、雨音を睨むのだった。
読んで頂きありがとうございます




