素敵なパーティー その1
パーティー前夜は少しだけ狩りをしてログアウトした。そして次の日の五時半過ぎ、筑紫は今から魔夜美邸へと行くところだった。
「バッチ持った?」
「うん、多分大丈夫」
「迷惑かけるんじゃないよー」
「分かってるって」
忘れ物確認を済ませ、家を出る。紗夜からはバッチとスマホ類以外は手ぶらで良いと言われている。魔夜美邸の近くまで着くと、筑紫はさらに緊張した。
「僕今からあの中に行くの……?」
高級そうな車が何台も止まり、中からは護衛に囲まれた様々な人が入って行く。足が止まるが高級チョコケーキの誘惑の方が勝ち、歩みを進めて行く。
筑紫が門の前に着くと当然辺りは騒がしくなる。理由は何故一般人の女子高校生がこんな所に、しかもバッチを付けているからだ。
「お待ちしておりました、筑紫癒猫様」
前まで行くと駆け寄って来たメイドに業務なのでと言われて軽くボディチェックをされる。少し手つきが怪しかったのは気のせいだろうと筑紫は思った。
「来てくださってありがとうございますわ」
「緊張するんだけど……」
「ふふ、会場に入場する時は私と一緒ですわよ?」
「マジ?」
「筑紫ちゃんは私の友人と言う枠ですわ、下手に言い寄ってくる男が減るように腕を組んで密着しながら入れと言われてますの」
「……分かったよ、紗夜がそう言う男の人に近付くのは僕もなんか嫌だし」
「それでは着替えましょうか、また時間はあるので急がずにメイクもしなければいけないですわね」
予め選んでいた服とメイクを持ったメイドと、明らかに一人の着替えを手伝うのには過剰な人数のメイドが入ってくる。
「何でそんなにメイドさんが」
「何かあった時の援助を」
「可愛いお姿を見たいから」
「触れたらダメですか?」
「……もうどうにでもなれ」
逃げれないことは最初から知っているのでその身をメイドたちと紗夜に任せる。数分後、髪が整えられて更に可愛くなった緑のドレスコードに着替えた筑紫の姿があった。
「入場はいつ? 僕作法とか分からないんだけど……」
「入場は十分後ですわ、細かいことは私たちに任せてください。作法は大丈夫ですわよ? むしろわざわざそこを注意してくるならまだしも。マウントを取るような方がいらっしゃったなら、その方は二度とこのパーティーに呼ばれることはないでしょう」
「怖っ……」
「それと筑紫ちゃんに頑張ってもらうイベントの準備も無事に終わっていますし、安心してくださいね」
「最後のそれだけ何も安心出来ないんだけど……ま、楽しむよ」
「その意気ですわ」
「お嬢様、筑紫様、お時間です」
時間になり二人はメイドから呼び出される。そして会場の扉を開けるのだった。
読んで頂きありがとうございます




