VSサヤ
ニャイアルはスナイパーライフルを即座に構えヘッドショットを狙う。
「《ブリーズショット》」
「予め伏せようとしておいて助かりましたわ」
だが予想していたのかサヤは飛び込むようにしてバリケードの裏に伏せる。魔法は対象を見ていないとあらぬ方向に発動してしまうので隙を窺っている。
ニャイアルの方も下手に接近した結果、拘束されるのは目に見えているので何も出来ない。溜め時間も少しずつ短くなってきていた。
なので全力疾走しても間に合うかどうかは分からないのだ。数秒の硬直時間の後、先に仕掛けたのはニャイアルだった。
「《ボムショット》」
バリケード付近に落とすように撃つ。バリケード横に隠れているのなら範囲攻撃で少しでもダメージを与えて、外に出せば良いのだ。
サヤもニャイアルの聴覚を誤魔化せないのでそれが正解なのだが、ダメージを負うことはなかった。理由は二つ、予めこのことも予見してバリケードの右端に居たこと。それと火の障壁を発動させていたからだ。
「何で分かるの……」
「ニャイアルちゃんの行動パターンは何となく分かりますわ、《恵の祈り》」
火の障壁ならある程度の攻撃は防げる。バリケードから出て一番溜め時間が短い魔法が選ばれた。いくら防御力が上がったとは言え、中身が豆腐では意味がない。
「まっず……」
咄嗟にバリケードに隠れたが、このままでは不味いことに気付く。何故かと言うと樹の祈りを唱える声も聞こえたからだ。
ニャイアルは知らない。このゲームの魔法は唱える時、対象を見ていないと変な方向か良くて大体の方向にしか飛ばないことを。
だから今のサヤはハッタリをしている。バレたら終わりだがニャイアルはそれにまんまと引っかかる。それに加えて更にサヤにとって幸運なことが起こった。
「おっとっ……?!」
逃げたニャイアルの目の前に樹の祈りで出てきた物が現れたのだ。躓きはしないものの大きく身体のバランスを崩す。
その隙を狙ってサヤはニャイアルを捕まえて……。
「あっやばっ」
「一本ですわ」
背負い投げしたのだ。サヤはリアルで黒帯を持っている。ゲームの中で更に身体能力に補正がかかっているのでこれくらい容易だった。
「うっ……」
「《恵の祈り》、チェックメイトですわ。多少賭けに出ましたが上手くいって本当に良かったですわね……」
ニャイアルは頭を強く打ち付けたせいで気絶状態になっている。だが油断しずに恵の祈りを使ってトドメを刺した。
サヤは魔法が明後日の方向に飛ばず、ニャイアルが自分を撃ち抜こうとして焦って出てくることを信じて接近した。
ニャイアルがあそこで躓かなくても、スライディングで距離を詰めて同じことをするつもりだったのだ。そこも魔弾が当たらないことを祈る必要があったのだが、そうする必要は無くなった。
一先ず初めてのニャイアルVSサヤは、サヤの勝利で終わったのだった。
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