シングル戦
ダブルスである程度勝ち星を上げた頃、サヤから一つ提案される。
「シングルでも戦ってみますか?」
「僕たち後衛だけど…….何とかなるか」
機動力とエイムや冷静さがあれば勝てないことはない。今まで多数を相手にしてきたので一対一でも問題なく戦えるだろう。
シングルを選び二人は一旦離れ離れになる。もしかするとサヤとも当たる可能性があるので油断はならない。
そして対戦相手が決まったのか闘技場へと転送される。広さはダブルスと変わっていないがバリケードの数は二つづつになっていた。
「(相手は魔法使いか)《ブリーズショット》」
「うぉっ?!」
天使の羽が模られた杖を持っている魔法使いだった。先制狙撃で頭を狙ったつもりだったが何かに弾かれる。
しかし確実にヒビが入った音が響き、男の悲鳴が聞こえる。
「バリアかな? 《ボムショット》」
「《シールド》《ホーリーバレット》」
「危なっ……」
割れる音と同時に再びシールドを貼り直される。反撃で高速で飛んでくる白い球が飛んできたが危なげなく躱した。
しかし相手の抵抗もここまでだった。MPが尽きかけているのか魔法を撃ってこない。バリケードの裏に隠れて体勢を立て直そうとしているのだろう。
しかしニャイアルはそれを許さない。全力で走り距離を詰める。
「《ウェポンチェンジ》《チャージショット》、一発でいけるかな?」
「嘘だr」
最大チャージで武器を変えた一発だ。相手はMP回復薬を飲み切った相手は地面に倒れポリゴンの欠片となった。
あまり手応えは感じていなかった。ただニャイアルの魔弾をある程度防げるシールドを貼れる魔法があると分かったのは収穫なのだ。
(貫通弾みたいなの欲しいなぁ、スキルで探せばありそうだけど)
ちなみにだがこのゲームにも弾を消費するタイプの銃もある。しかし威力は武器の性能と弾の質依存なので完全なるロマン武器である。
貫通弾もあるが一発数万Gはするので費用対効果が合っていないのだ。だが一定数の人気はあるので使っているプレイヤーも勿論存在する。
閑話休題。サヤからメールが来ていたのでそれを見ると、無事に勝ったと言う旨だった。火の障壁も使っていないと書いてあるので苦戦はしなかったのだろう。
そうしていると次の対戦相手が決まった。いつも通り闘技場へと転送される。しかし一つ驚いたことがあった。
「サヤ……?」
二十メートルは離れているので声は届かない。だが完全に姿はサヤなのだ。確かに当たる可能性はあったが、ニャイアルはこんなにも早く当たるとは思っていなかったのだ。
サヤの方もニャイアルに気づいたのが手を振っている。
「ふふ、ニャイアルちゃんと戦うのは初めてですわ。本気で戦わなければ負ける気がしますわね」
「とりあえず火の障壁使われる前に倒さなきゃこっちが不味い」
カウントは残り三秒だ。そこで偶然にも二人の声がシンクロする。
「「負けない(ですわ)」」
カウントは零になり、戦いが始まったのだった。
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