砂漠の洗礼
余りにも戦闘が不便なのでウルルも呼び出しつつ辺りを探索している。たまに坂になっている部分を滑りながら移動した方が速い時もあった。
「ここ隠れられそうじゃない?」
「私たちなら入れそうですわね」
「ワゥッ?」
砂丘に出来ている窪み、そこにニャイアルたちとウルルが潜伏出来そうなのだ。目印となるものはないため覚えているしかない。
早速そこに入り、辺りを見渡した。一見終わりがないように見えるが一つテント地帯のような場所を発見する。
「サヤ、あそこにテント地帯みたいなのが見える」
「本当ですわね、少ししたら行きましょうか?」
「そーしよっか」
「ワゥッ!」
ウルルは移動に関しては割とスムーズに出来ていた。高い敏捷値とスキルのおかげだろう。ニャイアルたちの命綱とも言える存在になっていた。
数分後、彼女たちは動き始める。だが背後から何か吹き上げられる音がした。振り返ってみると……。
「さっき言われてた砂嵐じゃん?!」
「想像以上に大きいですわね?!」
高さはビル十階建てに相当するほど大きい砂嵐がゆっくりとニャイアルたちに接近していた。これはここを通ったプレイヤーたちからは砂漠の洗礼と呼ばれているが彼女たちはそれを知らない。
それぞれ顔を合わせると全力で駆け出したのだ。目標は勿論テント地帯である。助かると言う保証はないが巻き込まれたが最後、どうなるかは分からない。
「邪魔!《ウェポンチェンジ》《ブリーズショット》」
サンドゴーレムが現れたが高威力の魔弾にやって瞬殺された。現在はウルルが先頭を切っているため安全確認は任せている。
サヤも移動系のスキルがあるのか遅れずに走っていた。珍しく焦った様な顔をしているので想像しているよりも大きかったと言うことだろう。
「追いつかれてしまいますわ!」
「もう少しだから!」
「ワゥッ!」
視界が少し砂で見え辛くなるくらい、砂嵐は少しづつニャイアルたちの背後へと近付いていた。だがテント地帯まで残り百メートルを切っている。
「サヤ、ウルルに捕まって!」
「ワゥッ!!」
「わ、分かりましたわ!」
このままではニャイアルとウルルはギリギリ間に合っても、サヤが巻き込まれる可能性がある。だからウルルの筋力を信じてそう言った。
飛び込む様にしてサヤはウルルの身体にしがみ付くと、多少重さで動きが鈍りつつもニャイアルと同じスピードで移動することに成功した。
「行ける!」
「危なかったですわ……」
そしてこのまま走り切り、無事にテント地帯に飛び込む様して砂嵐を避けることが出来たのだった。
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