諦めず抗って その4
「ウルル、これをニャイアルちゃんに飲ませてください」
「障壁を使わざるおえないですわ……」
シルクロードは自身の持つ残り少ない回復薬をウルルに咥えさせ、サヤはニャイアルの前で庇うようにして火の障壁を貼った。
ロックバードはスピンバードを呼ぶことに成功してるが、ニャイアルのお陰かその数は先程よりは少なかった。
剣で切り伏せるシルクロードに対して、サヤは仁王立ちをして耐え切るしかない。火の障壁で防げなかった物は全てその身で受けている。
回復薬を器用に開けてそれを飲ませる。仰向けに気絶したため上から流し込むようにしていた。HPは回復したが、まだ動かずにいる。
サヤの障壁の残り時間が半分を切った頃にスピンバードの襲来が終わる。しかし一向に降りて来る気配はない。
シルクロードが焦り始めた時にサヤは一つの青い液体が入った瓶を取り出して、その中身を一気に飲み干したのだ。
「祈祷師らしく祈りますわ。《石獄の祈り》」
「届かないはずでは……いえ、援護します!」
シルクロードは一瞬不審がるが、何かあるのだろうと信じて援護へと入る。ロックバードの方は大きく翼を何回か振って羽を飛ばしてきたのだ。
「《マジックチャージスラッシュ》」
しかしそれは最大までチャージが間に合ったシルクロードによって弾かれ、サヤの溜め時間が終わる。それは丁度低空飛行になった時のことだった。
「魔法の射程延長、タイミング良く発動出来て良かったですわ」
足の拘束は通常の数倍以上に伸びてロックバードを捉える。しかし余り長くは持ちそうになかった。サヤは更に何かあるのか、黒煙が漂っている赤色の柔らかい球体が出される。
「これをロックバードに投げて当てれれば高確率でダウンしますわ」
「つまり自分が投げれば良いんですね、分かりました」
「えぇ、一つしかないのでお願いしますわ」
「……やってみます」
一瞬不安な顔になったが直ぐにいつもの表情へと戻る。そして球体を受け取って、慎重かつ急ぎながら狙いを定める。
「……ここ!」
シルクロードは全力で球体を投げる。それは綺麗な軌道を描いていき、右翼に直撃した。ボムショットの数倍の爆発が起きてロックバードは墜落した。
「お見事ですわ!」
「ふ〜……緊張しました」
二人はそれぞれ構えて削り切る勢いで攻撃を与える。しかし……。
「キィイ……!」
「飛んでしまいますわ?!」
「くっ……!」
ふらつきながらと空へと飛び去って行こうとする。サヤたちが少し諦めかけていたその時、それを止める手段が一つ復活していた。運良くロックバードの真後ろで気絶していたニャイアルが復帰する。
「飛ばせるものか! 《ブリーズショット》」
ロックバードの弱点は翼の付け根、後ろからしか狙えない位置なのだ。それを事前に説明されていたことを思い出して発射する。
ロックバードは悲鳴を上げ、ポリゴンの欠片となったのだ。サヤたちの方は安心したのか座り込んでしまった。
「あー疲れた……」
「ロックバードの討伐、完了ですわ!」
「本当に良かったです、ありがとうございます!」
コメント欄も大いに湧いていた。長丁場となった戦いはニャイアルたちの勝利で終わったのだった。
読んで頂きありがとうございます




